異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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PHASE-1849【関係性築いてた】

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「くそっ! よくもテルギットを!」
 悔しそうに声を上げるところで、

「フゥゥゥゥゥウ!」
 テンションが上がっているミルモンによる体当たりが、悔しい声を上げたもう一人のメンバーであるミロの背中へと直撃。

「がぁ⁉」
 背中への一撃で呼吸が止まった衝撃に襲われるミロがドーチェとカイルに激突。

「ナイス巻き込み」
 ベストタイミングで体当たりを見舞ってくれたミルモンを褒めつつ、まずは――、

「当然お前だよね!」

「そうですか!」
 邪魔になる二人をどかすように丸太のような腕で振り払えば、それだけで軽々と二人が地面に転がされる。
 無駄な動作を一つ作らせることはカイルという強者を相手にするためには重要なこと。
 無駄な動作は隙を生み出すことと同義だからな。

「もらい!」
 滑り込むように懐へと入り込み、疾駆からの全体重を乗せた拳をボディに叩き込む。

「お、おおぅ……」
 ドーチェのメンバーであるテルギットを吹っ飛ばすことが可能な膂力を得ても、やはりカイルを相手にするとなればピリアなしのボディだけでは両膝をつかせるのは至難。
 それでもその一撃で動きを止めることは出来た。
 ピリアの使用禁止は俺だけでなく見舞った方も同様だからな。
 打たれ強いカイルであっても身体能力向上系のピリアを使用していないと呼吸を整えるために動きは止まる。

「強烈な一撃……ですね」

「有り難う!」
 苦しいであろう中でも深い吸気を行ってから体を起こそうとするが、そこを見逃してあげるほど俺はお人好しじゃない。

「ミルモン」

「イィィィィィィイハアァァァァァァァァア!!」
 本当……テンション高いな。
 ここで難敵となるカイルを一気に仕留める。
 背後から迫る両こぶしを前へと突き出して突撃してくるミルモンに合わせてからの、

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」と「てやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
 掛け声は合わなかったが、威勢ある声から打ち込む前後からの同時攻撃はドンピシャリ。
 左上腕二頭筋に力を込めてからカイルの首にアックス・ボンバーを見舞う俺。
 同時にミルモンが俺の狙いを即理解してからの延髄部分に体当たり。
 完にして璧である超人タッグを真似てのクロス・ボンバー的な攻撃が見事に炸裂。

「かぁぁあぁぁぁ……」
 弱々しい声を漏らすカイルが両膝をついて前のめりで倒れるのを確認したところで、

「十三人だ! サクサク行こうぜ!」

「もちろんさ!」
 カイルを倒したことでこれ以降の展開はかなり楽になる。
 指示担当のドッセン。武におけるカイル。
 大木で例えるなら根を引っこ抜き、幹を切り倒したようなもの。

 後は――、

「枝だけだな」
 完全に切り落としてやろうじゃないか。

「調子に乗らないことっすね」
 ドーチェと咳き込みから回復したミロが構える。
 だがもう遅いのだ。

「残りは二十二人。この短時間に十三人をダウンさせたわけだけども、俺はまったくもって調子には乗っていないよドーチェ」
 言い返せば悔しそうに口端を歪ませる。口角を上げずに下げるのは精神面が弱っている証拠。

「俺はね――転ばないように杖を持つし、その杖で石橋を叩きながら渡るタイプの男なのだよ」

「なに言ってんだか」

「すんごく用心深いってことよ! なので調子に乗らないし、油断など断じてせん!」

「ショラァッ!」
 見事な風切り音からなる拳打ではあるけども十分に見切れる。
 いなしてから拳を叩き込み――たかったけども、

「流石はパーティーだな」
 ドーチェに合わせて俺の左からミロが攻める。
 足を止めたかったようで見舞ってきたのはローキック。
 ベルのローキックで大腿四頭筋周辺は鍛えられているから無視してドーチェを仕留めたいけども、用心深いと言った手前ダメージを受けながら倒すのは言動に齟齬が生じるのでバックステップで二人の攻撃圏から脱しつつ、

「いけるか?」

「当然!」
 技の連続使用はまだまだ問題ないと元気よく返してくれるミルモンが左側へと仕掛ける。
 これで一人がミルモンへとかかずらうことで俺はドーチェを相手にすればよし!
 ――と、ここで冒険者の某が助力として一人ドーチェの側に立つ。
 互いに首肯でやり取り。付け焼き刃でも連携は問題ないと判断しよう。
 なので念には念を入れて、

「まずはお宅!」
 ドーチェの実力を考えれば一対一にもちこんで戦いたい。助力担当はさっさと倒してしまうのがセオリーってなもんよ。

「くっ……そが……」
 前蹴りを腹部へと入れてやればそれだけで終了。

「容易く攻略してきますね」

「どうしても一人にしたいから必死に繰り出した一撃だったよ」

「いやいや、まだこっちには二十人以上いますよ」

「連携が出来ていない時点でね~。高圧的にならずにもっと周囲の面々には好意的に接するべきだった。そうしたら助力してくれるのは一人じゃなかっただろうに」

「その欠点はあんたに勝ってから直しますよ」

「勝ってから――じゃなく、いま直ぐにでも声を上げて連携を促すべきだったな!」
 そんなことも出来ないから今から俺にしばき倒されるってことですよ。

「きついのぶち込んでやろう!」
 勢いよく足を踏み出す。

「どうだか」

「ぬ!?」 
 歪んでいた口端が不敵な笑みでつり上がる。
 ――……からの、

「はんっ⁉」
 踏み出したところでガクンと視点が下へとずれる。
 勢いよく後ろへと足を引っ張られたことが原因。
 誰に⁉
 肩越しに見れば、

「カイル!? 生きとったんかワレッ!」

「生きてましたよ。いかに会頭と使い魔殿の攻撃が強力であっても、あの程度で倒れると思われるのは心外ですね。いつものように残心をする暇はなかったようで」
 倒れながらも掴んでくる握力よ……。
 振り払おうとしても絶対に放すつもりはないという意思が伝わってくる。

「いいぞデカいの! 計画通りだな」
 計画通り……だと?
 ――しまった⁉ なんてこった! コイツ等……。
 ――……してやられた! 序盤のやり取りの段階ですでに芝居を打ってやがったな!
 まんまと小芝居にはまっちまった!
 仲違いしてたのは俺を油断させるためかよ。
 なんだよ! きっちり少年漫画のド定番みたいな協力関係を築いてやがったのかよ!
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