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視線は南へ
PHASE-1857【まずは西から】
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「王よ、姫の婚姻うんぬんなどは全てを終えてからするように」
「お、おう……」
コクリコに気圧される王様よ……。
ま、そうだな。
「この戦いが終われば俺――結婚するんだ。ってのに近い内容は死亡フラグだからな。足が地につかないような話はコクリコが言うように全てが終わってからですね」
「そのようだな」
うむ。やんわりと話を流すことも出来たからコクリコには感謝しないとな。
チラリと見れば、
「どうした?」
「いや、絶対に勝たないとな!」
「無論だ」
いつも通り、ぶれることのないベルの返事は安心する。
負けるという思考が消し飛ぶからね。
で――だ。
「先生。俺たちはどっちを攻めるんです? エンドリュー候の竜騎兵とハダン伯の騎鳥隊という豪華な先触れはここから南に拠点をおくラダイゴロスにですか?」
「そうです。が、ガガドムサから攻めます」
浅慮で懐疑心の強い方から攻めるか。
「先触れは行いますが、行うことでラダイゴロスの矜持を挑発したいというのもあります」
「挑発ですか?」
――攻めると言っておいて実際は自分たちを無視して西側へと向かう。
ラダイゴロスよりもガガドムサのほうが驚異だと思わせることで相手の自尊心を傷つける。
「こちらの動きに気づき、馬鹿にされたと怒りのままに背後から攻めて来てくれるなら、それはそれで喜ばしいですね」
と、なんとも不穏な事を言ってくる先生。
誘い出すのは三方ヶ原の戦いに似た展開だけども、挟撃されるのは避けたいよね。
そこを心配すれば問題ないと自信を持って先生は返してくれる。
とにかく相手側の心を攻めることに初手は注力するそうだ。
「ですが相手もバカばかりじゃないですからね」
「「然り」」
二人仲良くヒッポグリフに騎乗している先生と筍攸さんが声を揃える。
当然ながら懸念となる存在はいる。
ミルトンのおっさんとのやり取りを通信機から耳にすれば、ガガドムサには甘言が効果的だったが、腹心でありお目付役でもある四天王ギギンはおっさんのことを信じていない。
ギギンってドラゴニュートだけでなく、あのメンツの中にも頭の切れるのはいるだろう。
ガガドムサの目に留まらなくてもギギンの目に留まる存在は必ずいる。
そんなのがミルトンのおっさんの監視役をやっていることもあり得るから行動に制限もかかるだろう。
――おっさん、監視されまくりだな。多方からの視線でストレスが爆発しなければいいけど。
「その辺りは更なる要素を加えることで内部崩壊へと繋げるつもりですので安心してください」
「叔父上の言うとおりです。有能な者達を入り込ませることも可能なこちらの軍に我々の策を加えることで相手側の土台は崩れに崩れるでしょう」
「頼りにしてます」
「もちろん、我々の計略を完璧なものへとするためにも――」
「先生たちが安心して策を発動できるように俺たちが前で励みます」
「お願いします」
――フレイヤより南。アイトガムと呼ばれる地。
この地へと潜入しているコールサイン・ハリエットからの報告ではラダイゴロスの根城の名はイラム。
こちらからしたら一番近い地となるアイトガムだがあえてスルーし、アイトガムから西に位置するネグーサという風光明媚な土地へと足を進める。
ネグーサに陣取るガガドムサの要塞の名はタインク。
タインクを守る砦への到着予定は二日後。
まずはタインク攻略となるけども――、
「ラダイゴロス側にまだ動きはないようですけど、自分たちを相手にしなかったことに気づいて勢いよく攻撃を仕掛けてくるでしょうね。本当に大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。いいんです」
いいんだ……。
「混乱を起こしたいので」
「――ああ、なるほど」
なにがしたいのかは理解できた。
前回のような混戦にしてやりたいということでもあるんだろう。
疑心に囚われてしまっている兄弟。
その兄弟が挟撃で連携など考えられないということだ。
ラダイゴロスがこちらの動きを察して背後を狙ってきたとしても、それがガガドムサの統治するネグーサへと許可なく入ってくれば俺たちと一緒になって侵攻してきたという考えになる。
先生はそこを狙っているようだ。
ミルトンのおっさんにはガガドムサに讒言を吐き続けてもらい、ラダイゴロスに対する憎悪をもっともっと大きなものへと育ててもらわないとな。
「ところでさ、心を攻めるにしても今から攻めるところにはどのくらいの兵数がいるの?」
と、さっきまで変な声を上げていたミルモンからの質問。
「ガガドムサが居座る要塞タインクと周囲の砦の兵力――併せて二十万です」
「二十万もいるの!? 第一陣のオイラ達の兵力と変わらないじゃないか。それってアイトガムだっけ? そこのは含まれてないんでしょ?」
「そちらの兵力は十三万ほどらしいので、兄弟が手を取り合えば三十三万となりますね」
「多いね」
「蹂躙王の総兵力が三百万ですからね。その十分の一ほどが相手だと考えれば楽でしょう」
気にもしていないといった声音の先生。
むしろここで十分の一である三十万を倒せるとなればこの後が楽になるとまで言ってくれる。
この余裕ある発言と姿。頼りがいがありすぎるし、間違いなく今回の戦いで三十万を超える軍勢を壊滅させるつもりでもあるようだ。
この自信ある知者様のお言葉に、俺だけでなくお偉方も目を輝かせていた。
「お、おう……」
コクリコに気圧される王様よ……。
ま、そうだな。
「この戦いが終われば俺――結婚するんだ。ってのに近い内容は死亡フラグだからな。足が地につかないような話はコクリコが言うように全てが終わってからですね」
「そのようだな」
うむ。やんわりと話を流すことも出来たからコクリコには感謝しないとな。
チラリと見れば、
「どうした?」
「いや、絶対に勝たないとな!」
「無論だ」
いつも通り、ぶれることのないベルの返事は安心する。
負けるという思考が消し飛ぶからね。
で――だ。
「先生。俺たちはどっちを攻めるんです? エンドリュー候の竜騎兵とハダン伯の騎鳥隊という豪華な先触れはここから南に拠点をおくラダイゴロスにですか?」
「そうです。が、ガガドムサから攻めます」
浅慮で懐疑心の強い方から攻めるか。
「先触れは行いますが、行うことでラダイゴロスの矜持を挑発したいというのもあります」
「挑発ですか?」
――攻めると言っておいて実際は自分たちを無視して西側へと向かう。
ラダイゴロスよりもガガドムサのほうが驚異だと思わせることで相手の自尊心を傷つける。
「こちらの動きに気づき、馬鹿にされたと怒りのままに背後から攻めて来てくれるなら、それはそれで喜ばしいですね」
と、なんとも不穏な事を言ってくる先生。
誘い出すのは三方ヶ原の戦いに似た展開だけども、挟撃されるのは避けたいよね。
そこを心配すれば問題ないと自信を持って先生は返してくれる。
とにかく相手側の心を攻めることに初手は注力するそうだ。
「ですが相手もバカばかりじゃないですからね」
「「然り」」
二人仲良くヒッポグリフに騎乗している先生と筍攸さんが声を揃える。
当然ながら懸念となる存在はいる。
ミルトンのおっさんとのやり取りを通信機から耳にすれば、ガガドムサには甘言が効果的だったが、腹心でありお目付役でもある四天王ギギンはおっさんのことを信じていない。
ギギンってドラゴニュートだけでなく、あのメンツの中にも頭の切れるのはいるだろう。
ガガドムサの目に留まらなくてもギギンの目に留まる存在は必ずいる。
そんなのがミルトンのおっさんの監視役をやっていることもあり得るから行動に制限もかかるだろう。
――おっさん、監視されまくりだな。多方からの視線でストレスが爆発しなければいいけど。
「その辺りは更なる要素を加えることで内部崩壊へと繋げるつもりですので安心してください」
「叔父上の言うとおりです。有能な者達を入り込ませることも可能なこちらの軍に我々の策を加えることで相手側の土台は崩れに崩れるでしょう」
「頼りにしてます」
「もちろん、我々の計略を完璧なものへとするためにも――」
「先生たちが安心して策を発動できるように俺たちが前で励みます」
「お願いします」
――フレイヤより南。アイトガムと呼ばれる地。
この地へと潜入しているコールサイン・ハリエットからの報告ではラダイゴロスの根城の名はイラム。
こちらからしたら一番近い地となるアイトガムだがあえてスルーし、アイトガムから西に位置するネグーサという風光明媚な土地へと足を進める。
ネグーサに陣取るガガドムサの要塞の名はタインク。
タインクを守る砦への到着予定は二日後。
まずはタインク攻略となるけども――、
「ラダイゴロス側にまだ動きはないようですけど、自分たちを相手にしなかったことに気づいて勢いよく攻撃を仕掛けてくるでしょうね。本当に大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。いいんです」
いいんだ……。
「混乱を起こしたいので」
「――ああ、なるほど」
なにがしたいのかは理解できた。
前回のような混戦にしてやりたいということでもあるんだろう。
疑心に囚われてしまっている兄弟。
その兄弟が挟撃で連携など考えられないということだ。
ラダイゴロスがこちらの動きを察して背後を狙ってきたとしても、それがガガドムサの統治するネグーサへと許可なく入ってくれば俺たちと一緒になって侵攻してきたという考えになる。
先生はそこを狙っているようだ。
ミルトンのおっさんにはガガドムサに讒言を吐き続けてもらい、ラダイゴロスに対する憎悪をもっともっと大きなものへと育ててもらわないとな。
「ところでさ、心を攻めるにしても今から攻めるところにはどのくらいの兵数がいるの?」
と、さっきまで変な声を上げていたミルモンからの質問。
「ガガドムサが居座る要塞タインクと周囲の砦の兵力――併せて二十万です」
「二十万もいるの!? 第一陣のオイラ達の兵力と変わらないじゃないか。それってアイトガムだっけ? そこのは含まれてないんでしょ?」
「そちらの兵力は十三万ほどらしいので、兄弟が手を取り合えば三十三万となりますね」
「多いね」
「蹂躙王の総兵力が三百万ですからね。その十分の一ほどが相手だと考えれば楽でしょう」
気にもしていないといった声音の先生。
むしろここで十分の一である三十万を倒せるとなればこの後が楽になるとまで言ってくれる。
この余裕ある発言と姿。頼りがいがありすぎるし、間違いなく今回の戦いで三十万を超える軍勢を壊滅させるつもりでもあるようだ。
この自信ある知者様のお言葉に、俺だけでなくお偉方も目を輝かせていた。
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