異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ギルドを立ち上げてみよう

PHASE-36【バレンシアの火祭りもビックリ】

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 ――――この奇跡の御業に、壁上にいる兵士だけでなく、逃げていた住人からも感嘆の吐息が漏れている。
 なるほど、宗教ってこうやって権力を得ていったんだな。
 口には出さないけどさ。敬虔な信者なんかを敵に回すと怖いからな。

「――――ふん、ふん!」
 言われるがままに続ければ、爆発におびえるオークと、今まで目にしたことのない、子供くらいの小柄な身長で、肌の色が緑色。尖った耳に鷲鼻が特徴的な亜人が、破城槌の内部から転げ出てきた。
 多分だけどゴブリンだな。破城槌で突入して、そこから飛び出して襲いかかるって作戦だったんだろう。
 慌てふためき後ろに下がる敵と違って、壁上に立つ兵士たちは、俺の奇跡の御業という名のマッチポンプに興奮して、崇めるように跪いている。
 視線が恥ずかしいけども、俺が刀を振れば、振られた方向に目が向くのが救いである。
 怖いもの見たさなのか、兵士だけでなく、住人も壁上へと次々に上がってくると、爆発を目にして興奮の声が上がり、次第にその声に厚みが増していく。それだけ人が多くなってきている証拠だ。

「よい時宜かな」
 先生が口角を上げつつ呟き、

「これぞ奇跡。そして、その奇跡の御業の使い手である主に、付き従う両名の実力も知るといい!」
 先生の発言にベルは舌打ち。
 帝国軍中佐は、未だに覚悟がない、俺なんかの従者ってポジションにご立腹のようだ……。
 先生の「芝居ですから」という発言にて、自身に言い聞かせているように頷いていた。
 それを目にする俺の心は寂しい……。まあ、俺がヘタレなのが悪いんだけど……。

「ここに住まう、力なき人々のためだ」
 対戦車ロケット弾である、M72 LAWをいつの間にか構えるゲッコーさん。
 発射時のバックブラストが危険だからと、ゲッコーさんは厳しい声にて、後方には絶対に立つなと周囲にお達し。
 投石機へと狙いを定めて、発射。
 自力で飛翔し――――、直撃。
 爆発によって、投石機は容易く破壊された。
 今までの爆発は、刀を振れば途端に爆発。爆発に繋がる軌跡が目に見えない恐怖だったが、ロケット弾が撃たれ、火を吹く巨大な矢が当たれば、大きな爆発を起こすという、視覚的な恐怖が植え付けられた。
 オークたちの混乱は今まで以上のものになっている。
 現状、俺とゲッコーさんの行動だけで、敵が大混乱に陥っている事に、人々が久しく忘れていたであろう勝利の二文字が、先生の発言どおりに、頭の中に刻み込まれているようで、力が漲ってきているのか、強く握った拳が興奮で振るえていた。

「――行くか」
 駄目出しとばかりに、ベルが壁上から飛び降りる。
 十五メートルを超えるところから飛び降りれば、普通は無事では済まないが、そこはチートキャラである。受け身なんて取ることもなく、両足で綺麗に着地。どんな骨格をしているのだろうか?
 一人、悠々と佇み、混乱している二千の軍勢に向かってゆっくりと足を進める。
 単身で迫ってくる赤髪の美女。その姿に流石の亜人たちも何かあるとふんで、収拾のつかない状況下の中でも、距離をとって矢を放つ。
 矢はベルだけでなく、こちらにも向かってきたが、壁上までは届かず、その前の堀へと落ちていった。
 先生はそれも計算に入れて爆発を起こさせ、敵を後方に下がらせていたようだ。

「これなら住人にも被害はでないか」 
 壁上に脅威はないと、矢を躱しつつ、ベルは自らの双眸で確かめれば、眼前の敵へと炯眼を向け、紅蓮の炎を体に纏わせる。
 ベルへと迫る矢は、砦の時のように、炎に触れれば炭へと変わっていった。
 お返しとばかりの上段の構えから、一振り。
 ベルが立つ位置より、炎が伸びていけば、直線上に立つ亜人たちが燃え尽きていく。
 断末魔さえ上がらない、瞬時に消滅するから、慈悲の一撃でもある。
 ベルに続いてゲッコーさんが、M72 LAWから二発目を撃ち出す。
 撃っては発射機をその場に捨てて、再び現出させ、更に発射。
 発射機の形状は、野球部の同級生が背負っていたバットケースに似ている。
 筒後部を引き延ばし、肩に担いで狙いを定め、撃っていく。
 ベルの炎に、ゲッコーさんの容赦のないロケット弾。
 軽便なことから、壁上を走り回り、投石機、破城槌を容赦なく破壊していく。
 一帯は炎と爆発が共演し、爆炎となって、紅蓮に染め上げていく。
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