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王都防衛戦
PHASE-53【憤怨】
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「名乗られよ」
と、先生の誰何。
「我が名はバロルド・マハーロ・ドゥモネイス。この軍の指揮官である。生意気に謀りおって! 籠城とはな。無駄な時間だけを使ってしまった。だが、我は寛大でもある。降伏するならば、奴隷として生かしてやろう」
大層な名前だな。計略にかかっても上から目線だし。上から目線は、ベルだけで間に合ってんだよ。
「ほう、言いますね。あの者、勝つつもりですよ」
この先生の余裕さよ。
それだけでこっちも強気になれるよ。
だいたい、奴隷で生きていくなんて、死んだも同然だろ。砦での女性たちのあつかいを思い出せば、絶望しかない。
戦いは避けられないからと、先生は好きなように言ってくださいと、俺に託してくる。
基本あがり症だから、こんな場を与えられると恥ずかしいけども、言うだけ言うか。
「お断りだ。そもそも降伏しろとか恰好の悪い発言だな。攻城兵器を準備してないからそう言ってんだろ」
「なんだと?」
声が低くなった。多分だけど、正鵠を射られたってことだろう。
「お前の主は蹂躙王なんだろ。蹂躙してなんぼな軍が、降伏勧告なんてしてんじゃねえよ。こっちは端からお前等なんて眼中にねえんだよ。全滅させてやるから、装備品だけ残して召されろ!」
「小僧!」
お怒りじゃないか……。
周囲は俺に対して拍手だけども、相手は兜から若干のぞかせているこめかみの部分の血管が、生き物がいるみたいに蠢いてる。
「よく言ったぞ」
戦う姿勢を見せる者には優しい笑みを見せてくれる美人様が、俺を賞賛してくれる。これで少しは忠誠心も上がっただろうか。
後で確認してみよう。
――ん?
旗を持つ一体のゴブリンが、急ぎ足でバロルドなんちゃらの元へと駆けて、耳打ちしている。
身長差があるから、バイコーンに飛び乗るのも大変そうだった。
「――――!? なんだと!!」
急な怒号。そして、なぜかバロルドなるホブゴブリンは、俺に対して怨嗟の籠もった視線を向けてきた。
怖いよ……。
「そうか、貴様か……。奴隷は無しだ。この王都にいる者達は全て殺せ。女は好きにしていい」
この号令に、後方に陣取る兵達から、盛った動物みたいな喜びの雄叫びが上がる。
「不快な連中だ。私が全て消し去ってやろう」
本当にそれが出来ちゃうんだろうな。ありがたい美人様だ。
でも、俺も覚悟を決めないといけない。いつまでも頼っていたら前にも進めない。
本当はこんな事は言いたくないが、
「あの大将の首級は俺が!」
「言ったな。期待するぞ。やってみせよ」
「おう!」
――……たまにだけど、主のポジションが、ベルに移るよね。
完全に今の俺、ベルの配下になってるやりとりだったな。敬語を使用しなくていいのが救いだ。
「主も気炎万丈なご様子。双璧にも期待しています」
先生の視線に対して、
「任せてくれ。この地での邂逅、折角だからいいものにしたい」
と、ゲッコーさん。
「別にトールのためではないが、守らねばならぬ人々が背にいる以上、帝国軍人としての矜持を全うさせていただく」
ベルってやっぱりツンデレ入ってるよな。【別に】の件はポイント高いよ。
「では、我々を敵に回したことを後悔させて、冥土の土を踏んでいただきましょう」
マドロスがボラードに足を置くようなポーズで、壁上から見下ろす先生の顔は、自信に満ちあふれている。
完全なる勝利を得ようとしているようだ。
「――――さて、戦うにしても、荀彧殿はどうするつもりだろうな」
待機している全体に指示を出す為に駆け出す先生の背中を見つつ、MASADAにマガジンを入れて、チャージングハンドルを引きながらゲッコーさんが口を開く。
「正面から打って出て、削っていけばいいでしょう」
先生に代わって、横から美人さんが無茶を言う……。
実際、ベルだけで解決しそうだからな。消し去ってやるって発言を今にも有言実行させそうに、闘気が満ちあふれている。
「攻城兵器もないし、籠城じゃないの?」
俺がそう言うと、
「籠城は外からの援軍を期待しての戦術だ。助けが来ないのでは意味がない」
だからといって、皆が皆、ベルみたいなら問題ないんだろうが、四百程度で万には勝てないよ。
「籠城でよいのです。まずは兵と冒険者の混成軍の練度を上げることですから、安全な所からの攻撃で自信をつけさせるのが今回の戦いの目的でもあるので」
指示をすませた先生が、肩で息をしつつ、これからの流れを伝えてくれる。
変化が見られた時は、門を開くとまで言った。
実際に戦えるのは四百ほどなのに、門を開いて打って出るつもりなのだろうか……。
と、先生の誰何。
「我が名はバロルド・マハーロ・ドゥモネイス。この軍の指揮官である。生意気に謀りおって! 籠城とはな。無駄な時間だけを使ってしまった。だが、我は寛大でもある。降伏するならば、奴隷として生かしてやろう」
大層な名前だな。計略にかかっても上から目線だし。上から目線は、ベルだけで間に合ってんだよ。
「ほう、言いますね。あの者、勝つつもりですよ」
この先生の余裕さよ。
それだけでこっちも強気になれるよ。
だいたい、奴隷で生きていくなんて、死んだも同然だろ。砦での女性たちのあつかいを思い出せば、絶望しかない。
戦いは避けられないからと、先生は好きなように言ってくださいと、俺に託してくる。
基本あがり症だから、こんな場を与えられると恥ずかしいけども、言うだけ言うか。
「お断りだ。そもそも降伏しろとか恰好の悪い発言だな。攻城兵器を準備してないからそう言ってんだろ」
「なんだと?」
声が低くなった。多分だけど、正鵠を射られたってことだろう。
「お前の主は蹂躙王なんだろ。蹂躙してなんぼな軍が、降伏勧告なんてしてんじゃねえよ。こっちは端からお前等なんて眼中にねえんだよ。全滅させてやるから、装備品だけ残して召されろ!」
「小僧!」
お怒りじゃないか……。
周囲は俺に対して拍手だけども、相手は兜から若干のぞかせているこめかみの部分の血管が、生き物がいるみたいに蠢いてる。
「よく言ったぞ」
戦う姿勢を見せる者には優しい笑みを見せてくれる美人様が、俺を賞賛してくれる。これで少しは忠誠心も上がっただろうか。
後で確認してみよう。
――ん?
旗を持つ一体のゴブリンが、急ぎ足でバロルドなんちゃらの元へと駆けて、耳打ちしている。
身長差があるから、バイコーンに飛び乗るのも大変そうだった。
「――――!? なんだと!!」
急な怒号。そして、なぜかバロルドなるホブゴブリンは、俺に対して怨嗟の籠もった視線を向けてきた。
怖いよ……。
「そうか、貴様か……。奴隷は無しだ。この王都にいる者達は全て殺せ。女は好きにしていい」
この号令に、後方に陣取る兵達から、盛った動物みたいな喜びの雄叫びが上がる。
「不快な連中だ。私が全て消し去ってやろう」
本当にそれが出来ちゃうんだろうな。ありがたい美人様だ。
でも、俺も覚悟を決めないといけない。いつまでも頼っていたら前にも進めない。
本当はこんな事は言いたくないが、
「あの大将の首級は俺が!」
「言ったな。期待するぞ。やってみせよ」
「おう!」
――……たまにだけど、主のポジションが、ベルに移るよね。
完全に今の俺、ベルの配下になってるやりとりだったな。敬語を使用しなくていいのが救いだ。
「主も気炎万丈なご様子。双璧にも期待しています」
先生の視線に対して、
「任せてくれ。この地での邂逅、折角だからいいものにしたい」
と、ゲッコーさん。
「別にトールのためではないが、守らねばならぬ人々が背にいる以上、帝国軍人としての矜持を全うさせていただく」
ベルってやっぱりツンデレ入ってるよな。【別に】の件はポイント高いよ。
「では、我々を敵に回したことを後悔させて、冥土の土を踏んでいただきましょう」
マドロスがボラードに足を置くようなポーズで、壁上から見下ろす先生の顔は、自信に満ちあふれている。
完全なる勝利を得ようとしているようだ。
「――――さて、戦うにしても、荀彧殿はどうするつもりだろうな」
待機している全体に指示を出す為に駆け出す先生の背中を見つつ、MASADAにマガジンを入れて、チャージングハンドルを引きながらゲッコーさんが口を開く。
「正面から打って出て、削っていけばいいでしょう」
先生に代わって、横から美人さんが無茶を言う……。
実際、ベルだけで解決しそうだからな。消し去ってやるって発言を今にも有言実行させそうに、闘気が満ちあふれている。
「攻城兵器もないし、籠城じゃないの?」
俺がそう言うと、
「籠城は外からの援軍を期待しての戦術だ。助けが来ないのでは意味がない」
だからといって、皆が皆、ベルみたいなら問題ないんだろうが、四百程度で万には勝てないよ。
「籠城でよいのです。まずは兵と冒険者の混成軍の練度を上げることですから、安全な所からの攻撃で自信をつけさせるのが今回の戦いの目的でもあるので」
指示をすませた先生が、肩で息をしつつ、これからの流れを伝えてくれる。
変化が見られた時は、門を開くとまで言った。
実際に戦えるのは四百ほどなのに、門を開いて打って出るつもりなのだろうか……。
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