異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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王都防衛戦

PHASE-65【きょういのアバカン!】

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「――ふんふん」
 振れば、竹刀を持っているかのように軽い。

「いい風切り音だ」
 ここ最近、俺に対して柔らかな応対をするベルが、ここでも褒めてくれる。
 もっと頑張れば、素敵な関係になれそうな予感。
 ベルと、仲むつまじい関係になれるとか。最高かよ!

「よし、こい」
 ん? 恋?

「来い」
 来いか。って、いやいや、なぜに構える。

「見てやろう。指揮官を討ち取った実力を」
 おいおい、周りがざわついてきたぞ。
 俺としては小屋に戻って、王城から運んでもらったソファーで、横になる予定だったんだけどな。
 どんどんとギャラリーが増えてくる。「神の使いである勇者と、その従者の戦い」って誰かが言えば、「「「「おお!」」」」と、興奮した声が上がる。
 期待の声が方々から大きくなる。さながら7.1サラウンドだな。臨場感があるぜ。

「はぁ……」
 面倒くさいけども、ここで少しでも善戦すれば、ベルの好感度も上がるかもしれないな。
 バロルドの攻撃を躱して、反撃し、勝利したんだ。自信だってついてきてる。
 それに――――、ベルは体に纏った炎を使用して、とんでも威力を発揮しているが、実際の剣の腕前はどうなんだ?
 設定集にも秀でてると書かれていたし、カイルを容易く倒したのも目にしたが、もしかしたら剣だけの戦いとなると、俺にもワンチャンあるんじゃなかろうか。

「よしやるか!」
 勝ったらあれだ。俺に対して尊敬の念を抱く可能性もある。
 いいとこ見せて、惚れさてやる!

「いい気迫だな」
 レイピアみたく、片手で木剣を持って、俺へとヒュンと風を切って向ければ――――。へへ、自慢のロケットおっぱいがぷるんと揺れたぜ。
 ぱっつぱつな軍服だから余計にエロいってばよ。

「ほう」
 エロいこと考えてたのに、感心された。

「余裕があるな。無駄に力も入っていない。私の目を見ず、全体を見ている。基本はいい」
 全体ってのは誤りだ。俺が凝視してるのは94㎝のおっぱいだけだ。
 白いタイトな軍服に包まれたおっぱいだけだぜ!
 正直、その胸ポケットって意味あるの? と、言いたいね。そんなぱつぱつじゃあ、物なんて入らないだろうに。
 94㎝め! アサルトライフルAN-94こと、アバカンを今後は隠語として使用させてもらおう。
 来いよ! その脅威きょういならぬ、胸囲きょういの二点バーストを俺に見舞ってくれよ! バイ~ンとさ!

「お前は……」
 あ、やばい……。完全に気取られたよ。
 全体じゃなくて、アバカン見てるのがバレバレだよ。
 怒ってるよ……。

「ひゃ!?」
 何という移動速度! 何という振り下ろし! 俺の鼻先すれすれを木剣が通過していった。

「少しはやる気が出たか。破廉恥!」
 破廉恥なのは認めよう。むしろその口から破廉恥という単語が出たことに、俺は興奮と感動を覚える。
 しっかし、牽制でこれだからな。
 バロルドの振り下ろしなんて、ベルに比べたら止まってるようなもんだ。
 あいつのレベルって40くらいだろ。高い方だろう。
 手を抜いてるベルの方が圧倒的に早いってなんだよ。
 そもそも、ベルってレベルで評価するとどのくらいあるんだろう。
 パラメーターはこの世界でのものだとすると、武力は100のカンストオーバーだったよな。
 ――……あれ? もしかしてベルって、魔王より強いんじゃないの?
 もしそうだとすると、俺は今、魔王以上の存在と戦ってるってことかい?

「そら」

「ひぃ!」
 手は抜いてくれているようだが、にしても鋭い突きである。木剣の切っ先だって、丸みはあるけども、刺さる可能性だってあるぞ。

「今のを躱すか。ならば」
 もういいよ! 徐々に力を上げなくていいから。
 本当にごめんなさい。調子にのりました。剣の腕前だけならもしかしたら。なんて、阿呆な考え持ってすみませんでした!

「単調だぞ」

「いっ」
 たい! 語末は心の中で叫ぶぜ。
 いかんせん兵士やギルドの面々まで見てるんだ。会頭として、恥ずかしいところは見せられないというプライドもある。
 ひゃ!? だの。ひぃ! だのと叫んでしまったが、大丈夫。周囲はテンション上がってるから気にしてない。それどころか、どっちが勝利するのかと、賭まで始めた。
 なんて馬鹿な賭をしてるんだ。ベル一択だろ。なんで俺の名前まで挙がってるんだ? 大損したい奴らがいるようだな。
 万馬券なんて、この戦いには存在しないぞ。
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