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王都防衛戦
PHASE-64【やる気が出てきた王様】
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「トール」
「わぁぁお!?」
「何をそんなに驚く必要がある」
音も無く近づくのは、ゲッコーさんの専売特許だぞベル。
驚かされたが、なんだろうな、以前と違って、俺に対してくだけてきた表情だ。
嬉しい限りではある。
こんなところで二人っきりとか、中佐のいけないご褒美があるのだろうか。
邪な思いを巡らせてしまう。
「何をにやついている。早くしろ。王がお呼びだぞ」
――――で、なんで城なの?
さっきまで市井で皆で騒いでたってのに、王様から正式に褒美でももらえるのかな?
出せるだけの褒美がこの国にあるとは思えないが……。
「待っていたぞトール殿」
謁見の間の扉が開かれれば、俺の姿が見えた途端に、王様は玉座より飛び跳ねて駆け寄ってくる。
初老に抱きつかても困るので、バロルド戦の応用で、俺を抱きしめようと両腕を大きく開いたところで、後ろに下がれば、王様は見事な空振りを見せてくれる。
「コ、コホン」
あ、咳払いで誤魔化した。
しかし、元気になったな。初対面の時はよぼよぼな足取りで骨張ってたのに。十歳は若返ったんじゃないかと思えるくらいに、はつらつとしている。
臭くないし、ちゃんと清潔にしているようだ。
整った髪型でもそれは分かる。
「トール殿がこの地に降り立ってからと言うもの、勝利という言葉ばかりが耳に届いてくる。食糧難は未だに続いておるが、民も増え、戦いに秀でた者たちも集まってきた。今を耐え、荀彧殿が唱える屯田制を実行し、少しでも民が潤ってくれることが私の望みだ」
先生が紀伝体で得た情報だと、息子が戦いによって亡くなってから、ふさぎ込んだって話だったな。
後、娘は安全な地に避難させたって話も聞いた。
以前は名君と呼ばれる王だったらしいし。民の側にいても恨みが表面化しなかったのは、以前の功があったからだろう。
ともあれ、臆病になっていた王様が、以前のように名君に立ち戻ろうとしているようだ。
家臣団の中には、今の発言に得心がいかない者もいるんじゃないだろうか。
戦いに秀でた者たちってのは、俺たちのギルドに集まってるのであって、王様の配下って訳じゃないからな。
その辺りは面白くないと思っている奴らもいるだろうな。
最初は泣きながら俺の足に縋っても来たけど、少しでも余裕が出れば、権力の保身に走るのも出て来るだろう。
まあそこは、先生が黙らせるだろうから、心配はしていないけども。
俺の知らないところで、屯田制の話まで出てるし。
「我々も負けておられん! 兵士の練度を更に高めねば! その為にも、我々、家臣団も励まなければな!」
家臣団の一部の雰囲気をかき消すような、ナブル将軍の大音声。
「その通りだ! これより我らも民のために身を粉にして励もう! そして、六花の外套を託したトール殿をこれからも救国の士として、敬慕の念を忘れぬよう」
続く王様の発言には、家臣団も快活良く返答するしかなかった。
民を盾代わりにしていた苦肉の策を実行していた王様は、今はいなくなっている。
きっと、自分の失態も、歴史書には記入していくタイプなんだろうな。
先生曰く、自分の人生の清濁をはっきりと明記させる王は名君との事だ。
――――やはりというべきか、褒美は賞賛だけだった。
いや、この国の情勢から考えると、形に残る褒美は無いのは分かってるけどさ、なんか残念な気持ちもあったりする。
実を言うと、隠し持ってたりしてんじゃねえかと、疑ってはいるけどね――――。
「ふぃ~」
「お疲れ様でした」
いつもの小屋で椅子に座り一息。
先生から水の入ったグラスをもらい、それを一気飲みだ。
ミルトンの件で、先生は揺さぶりをかけてくれているようで、家臣団の一部が俺に対して強く出られないようにしてくれているのは助かる。
それに関しては、王様やナブル将軍も俺と一緒の思いだろう。
今は人間同士で足を引っ張り合う時じゃないからな。
横槍なんて入れられて、ギルドとの関係に亀裂が生じるのは避けたいだろうし。
王様の最後に付け加えた発言が正にそれだしな。
「もっともっとギルドを大きくしていきましょう」
バロルドを倒したことで、人々が希望を抱くようになってきた。生きる為には活力は必要だからな。
復興にかかわるのが先生にとっての活力なのか、目が輝いてる。
「その為には、ギルドの会頭が力をつけないとな」
言いつつベルがやってくる。
会頭って誰だ? と、巡らせたが、俺だったな。そうか、代表だもんな。俺。
ギルド、ギルドと言ってはいるが、正式に結成しました! って、宣言を未だにしていないからな。近いうちにやらないとな。
考えていると、ベルはおもむろに、俺に向けて木刀をヒョイと投げてくる。
掴むと、立木に打ち込む、刀に似せた重さの物ではなく、一般的な木刀だ。
久しぶりに手にすれば、驚くほど軽い。
筋力がついてきてる証拠だな。
流石はレベル24の俺。
RPGだと、中盤に挑んでもいいくらいのレベルだ。
「わぁぁお!?」
「何をそんなに驚く必要がある」
音も無く近づくのは、ゲッコーさんの専売特許だぞベル。
驚かされたが、なんだろうな、以前と違って、俺に対してくだけてきた表情だ。
嬉しい限りではある。
こんなところで二人っきりとか、中佐のいけないご褒美があるのだろうか。
邪な思いを巡らせてしまう。
「何をにやついている。早くしろ。王がお呼びだぞ」
――――で、なんで城なの?
さっきまで市井で皆で騒いでたってのに、王様から正式に褒美でももらえるのかな?
出せるだけの褒美がこの国にあるとは思えないが……。
「待っていたぞトール殿」
謁見の間の扉が開かれれば、俺の姿が見えた途端に、王様は玉座より飛び跳ねて駆け寄ってくる。
初老に抱きつかても困るので、バロルド戦の応用で、俺を抱きしめようと両腕を大きく開いたところで、後ろに下がれば、王様は見事な空振りを見せてくれる。
「コ、コホン」
あ、咳払いで誤魔化した。
しかし、元気になったな。初対面の時はよぼよぼな足取りで骨張ってたのに。十歳は若返ったんじゃないかと思えるくらいに、はつらつとしている。
臭くないし、ちゃんと清潔にしているようだ。
整った髪型でもそれは分かる。
「トール殿がこの地に降り立ってからと言うもの、勝利という言葉ばかりが耳に届いてくる。食糧難は未だに続いておるが、民も増え、戦いに秀でた者たちも集まってきた。今を耐え、荀彧殿が唱える屯田制を実行し、少しでも民が潤ってくれることが私の望みだ」
先生が紀伝体で得た情報だと、息子が戦いによって亡くなってから、ふさぎ込んだって話だったな。
後、娘は安全な地に避難させたって話も聞いた。
以前は名君と呼ばれる王だったらしいし。民の側にいても恨みが表面化しなかったのは、以前の功があったからだろう。
ともあれ、臆病になっていた王様が、以前のように名君に立ち戻ろうとしているようだ。
家臣団の中には、今の発言に得心がいかない者もいるんじゃないだろうか。
戦いに秀でた者たちってのは、俺たちのギルドに集まってるのであって、王様の配下って訳じゃないからな。
その辺りは面白くないと思っている奴らもいるだろうな。
最初は泣きながら俺の足に縋っても来たけど、少しでも余裕が出れば、権力の保身に走るのも出て来るだろう。
まあそこは、先生が黙らせるだろうから、心配はしていないけども。
俺の知らないところで、屯田制の話まで出てるし。
「我々も負けておられん! 兵士の練度を更に高めねば! その為にも、我々、家臣団も励まなければな!」
家臣団の一部の雰囲気をかき消すような、ナブル将軍の大音声。
「その通りだ! これより我らも民のために身を粉にして励もう! そして、六花の外套を託したトール殿をこれからも救国の士として、敬慕の念を忘れぬよう」
続く王様の発言には、家臣団も快活良く返答するしかなかった。
民を盾代わりにしていた苦肉の策を実行していた王様は、今はいなくなっている。
きっと、自分の失態も、歴史書には記入していくタイプなんだろうな。
先生曰く、自分の人生の清濁をはっきりと明記させる王は名君との事だ。
――――やはりというべきか、褒美は賞賛だけだった。
いや、この国の情勢から考えると、形に残る褒美は無いのは分かってるけどさ、なんか残念な気持ちもあったりする。
実を言うと、隠し持ってたりしてんじゃねえかと、疑ってはいるけどね――――。
「ふぃ~」
「お疲れ様でした」
いつもの小屋で椅子に座り一息。
先生から水の入ったグラスをもらい、それを一気飲みだ。
ミルトンの件で、先生は揺さぶりをかけてくれているようで、家臣団の一部が俺に対して強く出られないようにしてくれているのは助かる。
それに関しては、王様やナブル将軍も俺と一緒の思いだろう。
今は人間同士で足を引っ張り合う時じゃないからな。
横槍なんて入れられて、ギルドとの関係に亀裂が生じるのは避けたいだろうし。
王様の最後に付け加えた発言が正にそれだしな。
「もっともっとギルドを大きくしていきましょう」
バロルドを倒したことで、人々が希望を抱くようになってきた。生きる為には活力は必要だからな。
復興にかかわるのが先生にとっての活力なのか、目が輝いてる。
「その為には、ギルドの会頭が力をつけないとな」
言いつつベルがやってくる。
会頭って誰だ? と、巡らせたが、俺だったな。そうか、代表だもんな。俺。
ギルド、ギルドと言ってはいるが、正式に結成しました! って、宣言を未だにしていないからな。近いうちにやらないとな。
考えていると、ベルはおもむろに、俺に向けて木刀をヒョイと投げてくる。
掴むと、立木に打ち込む、刀に似せた重さの物ではなく、一般的な木刀だ。
久しぶりに手にすれば、驚くほど軽い。
筋力がついてきてる証拠だな。
流石はレベル24の俺。
RPGだと、中盤に挑んでもいいくらいのレベルだ。
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