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王都防衛戦
PHASE-63【暇神】
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勝利を喜ぶその側では、ギルドの現在の報酬ということで、冒険者は戦いを早々に切り上げて、うち捨てられた敵の装備を我先に回収している。
さっきまでは格好良く指示していたカイルもそこは冒険者とばかりに、ヒャッハー! と、叫びながら、剣やら斧を両手で抱えるように持っている。
バロニアのハルバートや装備なんて奪い合いだ……。
「冒険者じゃなくて、野盗じゃねえか!」
「ま、あれがあるから戦ってくれるし、頼りにもなるわけだ」
勝利の余韻を煙草で楽しむゲッコーさん。
とにかく勝ったわけだ。
冒険者も兵士も、矢を放ち、最後は一斉に打って出るという活躍をした。
が、やはり。俺の側に立つベルの強さよ……。
この美人が一人で敵陣を大混乱に陥れる事が出来たから、勝てたようなもんだ。
先生のこの戦いが始まるまでの算段に、ゲッコーさんの火器とサポート。
俺がバロニアに勝てたのも、皆の支えがあったからこそだ。
――――そう、皆あっての勝利だった。だから俺をそんなキラキラした汚れなき眼で見ないでほしい、基本は女子とろくに口もきけない内気な男なんだから、そういうのは慣れてないんだ。
三爪痕、蹂躙王の配下を倒したことは、人間サイドが侵攻を受けてから初の大勝利だったようで、現在、王都では盛大に勝利の宴が開かれていた。
王様も大喜びで、俺達を待つために市井で待っていたっていうね。
あれだけ城の中に籠もっていたのに、それが城から出て、民と一緒に待っているっていうね。
俺がずっと王城に呼ばれても行かなかったのが原因かもしれないな。
民を犠牲にしてたってのもあるから、刺されるんじゃないかとも思っていたが、備蓄庫の扉を開いて、人々と共に宴の準備をしていた。
自分たちだけ安全な所に籠もっていたわりには、住民は王様に対してあんまり不服そうな顔を見せていなかったっていう不思議。
とにかく、お偉いさんから末端までが、俺とお近づきになりたいようで、相手をするのが疲れたので、現在は一人隠れて食事を楽しむ。
といっても、パンとスープだけだが。
普段から口にしてる甘いレーションに比べれば、こっちが美味しく思えてくる。
「む?」
――……スープをすくう手が震えだす。
緊張がとけたのか、急に怖くなってきたのか、震えだしてきた。
「まったく、こんな所は勇者として見せられないな」
独白しつつ周囲を警戒。誰もいないことに安堵だ。
しっかし、俺みたいな低レベルな存在がよく勝てたもんだ。
ベルやゲッコーさんのサポートがあったからってのもあるが、対峙したのは俺本人だからな。
足も震えることなく戦えたのは、サポートによる圧倒的な安心感のおかげだ。
冷静に相手の行動を見て取れたのは、命のやり取りってのはないけども、剣道で培ってきた経験も活きたんだろう。
やはり、ひたむきに高校でもやってりゃよかったと、死んでから後悔する。
こんな経験は普通ないけども。
テッテレー♪
「おっふ!?」
人気の無いところで考え事をしている時の急な音はビクッとなるね。情けない声も出してしまったし。
「この音は」
以前も耳にした音。ディスプレイを見れば、
{レベル24}
って表記だ。
一気に上がったな……。アバウトすぎるが、バロニアってホブゴブリンを倒したことでの評価か。
そうだな、これはレベルっていうか、評価だよな。
{おい、セラ}
{なに?}
――……返しが本当に早いな……。
こいつ以前もだったが、暇人ならぬ暇神だな。
ゲームも好きそうだし、年中引きこもってゲームしてそうだな。態度はアレだし、やはりボッチプレイヤーか?
{俺のレベルが上がったぞ}
{それは重畳}
{いくらボスクラス倒したからって、急激に上がりすぎじゃないか? 22もアップしたぞ}
{あのさ、これは指標だから。君の現状の努力を数値化した結果だから。大きな活躍をすればそれだけ強くなったと判断される。現実でも商談が上手くいけば出世も近づくもんでしょ}
語末の例えは学生の俺には響かないぜ。だが、思った通り、レベルというより単純に評価だな。
{いい、社会に出るとね、大きな企業なんかだと、社員の実力は全てが数値化されて、それこそゲームのパラメータみたいに、レーダーチャートで表記されるんだからね。機械的なしょっぱくて寒い時代よ}
続けて送ってくるけども、しかも社会のことが続いてるし。
{それは天界での、お前の評価で使用されてんじゃないの? さぞ低いんだろうな}
{は! 見る目が無いわね~}
見る目あると思うぞ、理由としては、メールの返しがくい気味の速度なんだよ。どんだけ打ち込むの早いんだよ。暇神め!
{まあいいや。この数値は信頼出来るんだろ?}
{出来るわよ。バロルドの実力からして、レベルで評価するなら40はあったはずだからね。レベルの差分で上がったって考えていいんじゃないの}
{あいつで40もあんのか}
振り下ろす基本がなってないから、もっと低いと思ってた。
{相性が良かったんじゃないの?}
確かに、あいつって力任せのごり押しタイプなんだよね。攻略が分かれば簡単に対応は出来る。
逆に、俺と似たタイプの技巧派が相手になると苦戦しそうだな……。
{特別にアプリ入れて上げたから}
{アプリ?}
{ゲームのカメラ機能を使って、相対する敵を映せば、レベルなんかが分かるようにしてあげたよ。使い勝手のレビューもしてくれると、とっても助かるんだけど。そんじゃ、また連絡してもいいからね}
レビューって……。やはり天界では、林檎のマークの実業家によるイノベーションが進んでいるようだ。
古い体制が淘汰されれば、そこにいた奴らは、付いていくだけで息切れしてそうだな。
メールの内容からして、きっとセラは古い体制側の立ち位置だったんだろう。と、勝手に推測。
「まあ、このアプリはありがたいけど」
ポツリと独白。
相手の情報を知ることが出来れば、相手と俺のレベル差で、どう対処すべきか選択が簡単になるからな。
情報を制した者が全てを制す。
無理っぽいのは素直にベル達に任せるのが、真の勝利者の戦い方よ。
きっと今の俺は、悪役フェイスで笑っているだろうな。
でもって、セラの最後の文面はスルーしてやろう。返信しないと、きっとあいつは不安に陥るだろう。
既読スルーなら尚更だな。
高慢ちきな死神ならぬ暇神の精神世界を攻撃したい。
このことで、俺の笑みは更に悪いものになっているはずだ。
さっきまでは格好良く指示していたカイルもそこは冒険者とばかりに、ヒャッハー! と、叫びながら、剣やら斧を両手で抱えるように持っている。
バロニアのハルバートや装備なんて奪い合いだ……。
「冒険者じゃなくて、野盗じゃねえか!」
「ま、あれがあるから戦ってくれるし、頼りにもなるわけだ」
勝利の余韻を煙草で楽しむゲッコーさん。
とにかく勝ったわけだ。
冒険者も兵士も、矢を放ち、最後は一斉に打って出るという活躍をした。
が、やはり。俺の側に立つベルの強さよ……。
この美人が一人で敵陣を大混乱に陥れる事が出来たから、勝てたようなもんだ。
先生のこの戦いが始まるまでの算段に、ゲッコーさんの火器とサポート。
俺がバロニアに勝てたのも、皆の支えがあったからこそだ。
――――そう、皆あっての勝利だった。だから俺をそんなキラキラした汚れなき眼で見ないでほしい、基本は女子とろくに口もきけない内気な男なんだから、そういうのは慣れてないんだ。
三爪痕、蹂躙王の配下を倒したことは、人間サイドが侵攻を受けてから初の大勝利だったようで、現在、王都では盛大に勝利の宴が開かれていた。
王様も大喜びで、俺達を待つために市井で待っていたっていうね。
あれだけ城の中に籠もっていたのに、それが城から出て、民と一緒に待っているっていうね。
俺がずっと王城に呼ばれても行かなかったのが原因かもしれないな。
民を犠牲にしてたってのもあるから、刺されるんじゃないかとも思っていたが、備蓄庫の扉を開いて、人々と共に宴の準備をしていた。
自分たちだけ安全な所に籠もっていたわりには、住民は王様に対してあんまり不服そうな顔を見せていなかったっていう不思議。
とにかく、お偉いさんから末端までが、俺とお近づきになりたいようで、相手をするのが疲れたので、現在は一人隠れて食事を楽しむ。
といっても、パンとスープだけだが。
普段から口にしてる甘いレーションに比べれば、こっちが美味しく思えてくる。
「む?」
――……スープをすくう手が震えだす。
緊張がとけたのか、急に怖くなってきたのか、震えだしてきた。
「まったく、こんな所は勇者として見せられないな」
独白しつつ周囲を警戒。誰もいないことに安堵だ。
しっかし、俺みたいな低レベルな存在がよく勝てたもんだ。
ベルやゲッコーさんのサポートがあったからってのもあるが、対峙したのは俺本人だからな。
足も震えることなく戦えたのは、サポートによる圧倒的な安心感のおかげだ。
冷静に相手の行動を見て取れたのは、命のやり取りってのはないけども、剣道で培ってきた経験も活きたんだろう。
やはり、ひたむきに高校でもやってりゃよかったと、死んでから後悔する。
こんな経験は普通ないけども。
テッテレー♪
「おっふ!?」
人気の無いところで考え事をしている時の急な音はビクッとなるね。情けない声も出してしまったし。
「この音は」
以前も耳にした音。ディスプレイを見れば、
{レベル24}
って表記だ。
一気に上がったな……。アバウトすぎるが、バロニアってホブゴブリンを倒したことでの評価か。
そうだな、これはレベルっていうか、評価だよな。
{おい、セラ}
{なに?}
――……返しが本当に早いな……。
こいつ以前もだったが、暇人ならぬ暇神だな。
ゲームも好きそうだし、年中引きこもってゲームしてそうだな。態度はアレだし、やはりボッチプレイヤーか?
{俺のレベルが上がったぞ}
{それは重畳}
{いくらボスクラス倒したからって、急激に上がりすぎじゃないか? 22もアップしたぞ}
{あのさ、これは指標だから。君の現状の努力を数値化した結果だから。大きな活躍をすればそれだけ強くなったと判断される。現実でも商談が上手くいけば出世も近づくもんでしょ}
語末の例えは学生の俺には響かないぜ。だが、思った通り、レベルというより単純に評価だな。
{いい、社会に出るとね、大きな企業なんかだと、社員の実力は全てが数値化されて、それこそゲームのパラメータみたいに、レーダーチャートで表記されるんだからね。機械的なしょっぱくて寒い時代よ}
続けて送ってくるけども、しかも社会のことが続いてるし。
{それは天界での、お前の評価で使用されてんじゃないの? さぞ低いんだろうな}
{は! 見る目が無いわね~}
見る目あると思うぞ、理由としては、メールの返しがくい気味の速度なんだよ。どんだけ打ち込むの早いんだよ。暇神め!
{まあいいや。この数値は信頼出来るんだろ?}
{出来るわよ。バロルドの実力からして、レベルで評価するなら40はあったはずだからね。レベルの差分で上がったって考えていいんじゃないの}
{あいつで40もあんのか}
振り下ろす基本がなってないから、もっと低いと思ってた。
{相性が良かったんじゃないの?}
確かに、あいつって力任せのごり押しタイプなんだよね。攻略が分かれば簡単に対応は出来る。
逆に、俺と似たタイプの技巧派が相手になると苦戦しそうだな……。
{特別にアプリ入れて上げたから}
{アプリ?}
{ゲームのカメラ機能を使って、相対する敵を映せば、レベルなんかが分かるようにしてあげたよ。使い勝手のレビューもしてくれると、とっても助かるんだけど。そんじゃ、また連絡してもいいからね}
レビューって……。やはり天界では、林檎のマークの実業家によるイノベーションが進んでいるようだ。
古い体制が淘汰されれば、そこにいた奴らは、付いていくだけで息切れしてそうだな。
メールの内容からして、きっとセラは古い体制側の立ち位置だったんだろう。と、勝手に推測。
「まあ、このアプリはありがたいけど」
ポツリと独白。
相手の情報を知ることが出来れば、相手と俺のレベル差で、どう対処すべきか選択が簡単になるからな。
情報を制した者が全てを制す。
無理っぽいのは素直にベル達に任せるのが、真の勝利者の戦い方よ。
きっと今の俺は、悪役フェイスで笑っているだろうな。
でもって、セラの最後の文面はスルーしてやろう。返信しないと、きっとあいつは不安に陥るだろう。
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