異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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出立

PHASE-75【ベッドで一揉み】

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 ――――にしても美味かった。
 主人公が使用するベッドで大の字になり、食事の余韻を楽しんでいる。
 大の字。なんて素敵な言葉。まったく、シングルベッドなのに大の字になれるとは、ゆったりサイズのシングルだな主人公。
 でもって――――、これがPC版だとこのベッドで――――。
 へへ――、ベルがいきなりこの部屋に入ってくるってイベントはないんでしょうかね。
 最近は俺に対して冷たくないし、風呂場で鉢合わせになっても、本気では怒ってなかったよな。
 もしかしていい感じなんじゃないのか。
 さっそくブレイギアを取り出してパラメーターを見れば――――、
 おお! 凄い! まったくぶれることのない忠誠心ゼロだ。
 なんだよ。少しは上がっててもいいじゃねえかよ……。
 まじでこれ、忠誠心じゃなくて親密度に変えてくれないかな。セラに頼むのもいいが、これで、忠誠心と同様の数値なら、ギヤマンハートが粉々になるからな……。
 踏み出せない俺……。
 変えてもらえる勇気も無い勇者な俺は、走り回り、風呂に入り、たらふく食ったから眠りますよ。

「…………」

「……お……い――――お――い」
 んあ? なんか体が揺れているような。

「おい」
 しっかりと聞こえた声に目を開ける。
 薄暗い部屋の中、うっすらと人の輪郭があるのを寝惚け眼で捕捉する。
 長い髪とシャンプーの香り。ベルだな……。
 暗がりでも分かる赤い髪。紛う方なきベルだ。
 ――……ん? ベルだと!?
 目がバッチリと覚める。
 見開けばやはりベルだ!
 キタコレ! 夜這いですよ。美人中佐のいけない夜這いですよ。薄い本に有りそうなタイトルと状況ですよ。
 ギャルゲーで女の子が、主人公の部屋に入ってくるやつの上位のやつですわ。
 服装はワンピース。ネグリジェっていうのかな? 下着が透けてないのが残念だが、そこはベルが清純であると喜ぶべきだな。
 しかし巨乳の服装は、胸から下がそのまま裾まで下がるから、寸胴に見えるのが嫌で、服選びに苦労するというのが、巨乳の方々のご意見らしいが、ゲームのキャラはそんな事がないというね。
 ネグリジェはぴったりと体に沿ってるからね。メリハリがとんでもなくエロい。

「どうしたんだ、こんな夜中に」
 寝起きだけども、ベルの姿に覚醒した俺は、人生で一等の男前な声を出せたと自信を持てる。

(実は私、トールの事が……)
 ――とか来るのかなこれ!
 でも実際、こっからどうやってベルをベッドに誘えばいいんだ? 混じりっけ無しの童貞である俺に、そんなスキルは皆無だ。

「何を気持ちの悪い声を出している?」
 ほっほう。人生で一番かっこいいと自負した声を気持ち悪いと言うとは。
 ――そんなものは望んでいないぞ! 普通に紅潮して、照れていれば可愛げもあろうに。
 というか、コレは夢か? 風呂場でもそうだったし、ギャルゲーハウスが見せる夢なのだろうか?
 夢だな。
 夢でなくとも冒険するのが勇者だ。
 なので――――、

「ていっ」
 伸ばした俺の手。
 掌から伝わる感触は、ムニュ――――。
 おお! なんたる弾力! 柔らかさの中に、掴むと押し返そうとするこの弾力。
 流石は重力に逆らったものであるな。
 掴めば一定の所まで指が沈み、一定のところで押し返してくる弾力。素晴らしい、この胸は神の胸である。

「神乳様と名付け、拝みたい」

「まったく、お前は……」

「ん?」
 おやおや、ベルよお顔が真っ赤ではないか。そうだよ。そういう恥じらった紅潮が……、いや、これは――――怒り?

「馬鹿者が!」

「くりゅ!?」
 やだ痛い! ビンタされたぞ。またも頬にビンタだ。以前のに比べればそこまでじゃないけど、痛いものは痛い!
 ジンジンするよ……。

「寝惚けていたら何でもしていいと思っているのか」

「ご、ごめんなふぁい」
 夢じゃなかったのか。いや、分かってたけども。
 夢というのを言い訳に、おっぱいを触りたかっただけなんだよ。

「で、なんで俺の部屋に?」
 別に、俺の部屋ではないけども。

「一階で気配がする」
 気配? なにそれ。俺がそんなことを言われても分かるわけ――――、ガチャンと音がしたな。
 気配を感じ取れなくても、音はしっかりと聞き取れたぞ。
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