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出立
PHASE-78【意外! それは敗北……。俺のリキャストタイムは、まだまだ続く……】
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「悪よ、我が一撃をくらうがいい。ファイヤーボール!」
不法侵入しての無銭飲食が言ってくれる。
盗っ人猛々しいとは正にこの事だよ。お嬢ちゃん。
ワンドの先端にソフトボールサイズの火の玉が顕現。
想像通りの速度で迫ってくる。
距離は十五メートルほど。森の地形で足場は悪いが、身を低くすれば回避は成功。
普段から凄い炎を見てるからか、鯱張らず、ゆとりを持って回避できた。
「いくぜ」
男前ボイスになるこの余裕。
俺がいい声を出せば、背後では笑いが漏れている。ここも聞こえないふりで対処さ……。
一気に走って、リキャストタイムによる間隙を縫い、次を唱えようとしたところで――、
「ほ~ら捕まえた。おいたが過ぎたな。さあ! お尻ペンぺぇぇぇぇぇええぇぇえ゛!?」
決まったと思ったが、言葉ともども決まらなかった……。
目から火花が飛び散るとかってレベルじゃねえぞ……。
目玉自体が飛び出しそうなんですけど…………。
「か……、ふ、へぇ~……」
馬鹿な……、正拳突きだ……と……。
しかも、こ、こ、股間に躊躇なく……。
なんということだ……。
俺を見下す少女。
俺は丸まって倒れ込む。土が冷たくて気持ちいい……。
「私がハイウィザードだからと、魔法だけと思ったようですね。魔法を使用すれば隙が生じるなど、使い手が一番理解してますよ。そんな弱点を克服しないで、今の世を生きていけるわけないでしょう!」
言は正しいな……。
だが、ファイヤーボールって、普通は初期魔法だろう。それでハイウィザードとはよく言ったもんだ。今すぐに頭のハイを取れ!
「さあ、トドメです。熱いのを見舞って上げましょう」
ちょっと待って! 俺の股間のリキャストタイムはまだだから。
そっちは上から火の玉を俺へと落とすだけの簡単なお仕事だろうけど。俺の玉々はまだ落ちてこないから。お願いだから、背中をトントンしてくれい。
「まったく」
呆れる声はいらないよベル……。これ以上、肉体的にも精神的にも傷つけないで……。
「なんですか!?」
倒れ込む俺にも分かるくらいに、辺りが煌々としている。ベルが炎を纏ったようだ。
炎を纏った姿を見ただけで驚くとは、ハイウィザードが名前負けしてるぜ。フードッ子。
「拳でのよい一撃であった。修練をつんでいるようだな。悪いようにはしない」
直ぐさま炎を消した。
力の差を知らしめようとしたようだ。
目の前の相手が、自分では歯が立たないと理解したようで、逃げることも出来ないと思ったのか、
「分かりました」
と、素直になった――――。
「……ひゅぅぅ~ひゅぅぅぅ~」
「呼吸がおかしいぞ。大丈夫なのか?」
今はゲッコーさんの、腰トントンが何よりもありがたい。
「しかし、先ほどの炎」
何か思い当たることでもあるのか、フードッ子がベルに興味を持ったようで、全体をまじまじと見る。
「な、なんだ」
見られるのは嫌なようで、ベルはたじろいでいる。珍しい光景だな。
「もしや、王都から来たのですか?」
「そうだが」
「やはり! では貴女が魔王軍を容易く倒しているという美姫」
「び、美姫!?」
どうやら、先生の流した言葉は素晴らしく大陸を駆け巡っているようだ。ベルの美しく強いという情報もよく広がっている。
美しいと言われればそこは女性だ。照れている。こういうちょっとした乙女を見せるところが可愛いよね。
――――呼吸が整い、側にある木に体重を預けながら、生まれたての子馬のような足で何とか立ち上がる。
「こんな美しい方が勇者だったとは」
昂奮しつつフードを取れば、ラセットブラウンのセミロングが現れる。
暗がりだけども、ゲッコーさんの灯りで全体はよく窺えた。
美少女に分類される女の子だ。
大きな瞳は琥珀色。
全体が黄色で、縁が黒いローブとフード。そこからちらりと見える赤色のショートパンツ。
軽快に動けるような服装だ。武道が得意なのも得心がいく。
だが、何か勘違いしてるな。
「私は勇者ではないぞ」
その通りだベル。
「そうでしたね。炎を操る美姫は従者でしたね。強い力を感じたので、つい勇者かと思ってしまいました。では、あの男らしい方が――」
「いや、俺でもない」
勇者は三人行動と広がっている。
ベルでもゲッコーさんでもなければ、残るは――――、って事ですよ。
「では、どちらに?」
――……あれかな? 股間に拳を入れられるような男は、勇者という可能性から完全に除外されているのかな。
というか、俺に視線を向けてこないんですけど。
これは、うすうす感づいてはいるが、俺を勇者とは認めたくないという事なのかな?
「あそこで木に体を預けているのが勇者だ」
「いやいや、美姫は冗談がお下手ですね」
むかつく! こいつ明らかに俺より年下だよな。
――……年下の女の子にワンパンでやられたってなると、凄く恥ずかしいけども……。
不法侵入しての無銭飲食が言ってくれる。
盗っ人猛々しいとは正にこの事だよ。お嬢ちゃん。
ワンドの先端にソフトボールサイズの火の玉が顕現。
想像通りの速度で迫ってくる。
距離は十五メートルほど。森の地形で足場は悪いが、身を低くすれば回避は成功。
普段から凄い炎を見てるからか、鯱張らず、ゆとりを持って回避できた。
「いくぜ」
男前ボイスになるこの余裕。
俺がいい声を出せば、背後では笑いが漏れている。ここも聞こえないふりで対処さ……。
一気に走って、リキャストタイムによる間隙を縫い、次を唱えようとしたところで――、
「ほ~ら捕まえた。おいたが過ぎたな。さあ! お尻ペンぺぇぇぇぇぇええぇぇえ゛!?」
決まったと思ったが、言葉ともども決まらなかった……。
目から火花が飛び散るとかってレベルじゃねえぞ……。
目玉自体が飛び出しそうなんですけど…………。
「か……、ふ、へぇ~……」
馬鹿な……、正拳突きだ……と……。
しかも、こ、こ、股間に躊躇なく……。
なんということだ……。
俺を見下す少女。
俺は丸まって倒れ込む。土が冷たくて気持ちいい……。
「私がハイウィザードだからと、魔法だけと思ったようですね。魔法を使用すれば隙が生じるなど、使い手が一番理解してますよ。そんな弱点を克服しないで、今の世を生きていけるわけないでしょう!」
言は正しいな……。
だが、ファイヤーボールって、普通は初期魔法だろう。それでハイウィザードとはよく言ったもんだ。今すぐに頭のハイを取れ!
「さあ、トドメです。熱いのを見舞って上げましょう」
ちょっと待って! 俺の股間のリキャストタイムはまだだから。
そっちは上から火の玉を俺へと落とすだけの簡単なお仕事だろうけど。俺の玉々はまだ落ちてこないから。お願いだから、背中をトントンしてくれい。
「まったく」
呆れる声はいらないよベル……。これ以上、肉体的にも精神的にも傷つけないで……。
「なんですか!?」
倒れ込む俺にも分かるくらいに、辺りが煌々としている。ベルが炎を纏ったようだ。
炎を纏った姿を見ただけで驚くとは、ハイウィザードが名前負けしてるぜ。フードッ子。
「拳でのよい一撃であった。修練をつんでいるようだな。悪いようにはしない」
直ぐさま炎を消した。
力の差を知らしめようとしたようだ。
目の前の相手が、自分では歯が立たないと理解したようで、逃げることも出来ないと思ったのか、
「分かりました」
と、素直になった――――。
「……ひゅぅぅ~ひゅぅぅぅ~」
「呼吸がおかしいぞ。大丈夫なのか?」
今はゲッコーさんの、腰トントンが何よりもありがたい。
「しかし、先ほどの炎」
何か思い当たることでもあるのか、フードッ子がベルに興味を持ったようで、全体をまじまじと見る。
「な、なんだ」
見られるのは嫌なようで、ベルはたじろいでいる。珍しい光景だな。
「もしや、王都から来たのですか?」
「そうだが」
「やはり! では貴女が魔王軍を容易く倒しているという美姫」
「び、美姫!?」
どうやら、先生の流した言葉は素晴らしく大陸を駆け巡っているようだ。ベルの美しく強いという情報もよく広がっている。
美しいと言われればそこは女性だ。照れている。こういうちょっとした乙女を見せるところが可愛いよね。
――――呼吸が整い、側にある木に体重を預けながら、生まれたての子馬のような足で何とか立ち上がる。
「こんな美しい方が勇者だったとは」
昂奮しつつフードを取れば、ラセットブラウンのセミロングが現れる。
暗がりだけども、ゲッコーさんの灯りで全体はよく窺えた。
美少女に分類される女の子だ。
大きな瞳は琥珀色。
全体が黄色で、縁が黒いローブとフード。そこからちらりと見える赤色のショートパンツ。
軽快に動けるような服装だ。武道が得意なのも得心がいく。
だが、何か勘違いしてるな。
「私は勇者ではないぞ」
その通りだベル。
「そうでしたね。炎を操る美姫は従者でしたね。強い力を感じたので、つい勇者かと思ってしまいました。では、あの男らしい方が――」
「いや、俺でもない」
勇者は三人行動と広がっている。
ベルでもゲッコーさんでもなければ、残るは――――、って事ですよ。
「では、どちらに?」
――……あれかな? 股間に拳を入れられるような男は、勇者という可能性から完全に除外されているのかな。
というか、俺に視線を向けてこないんですけど。
これは、うすうす感づいてはいるが、俺を勇者とは認めたくないという事なのかな?
「あそこで木に体を預けているのが勇者だ」
「いやいや、美姫は冗談がお下手ですね」
むかつく! こいつ明らかに俺より年下だよな。
――……年下の女の子にワンパンでやられたってなると、凄く恥ずかしいけども……。
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