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海賊退治
PHASE-90【悦に入る】
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「炎は出さないんだな」
思っていた事を口にすれば、
「万が一にも、宿に当てるわけにはいかないからな」
なるほど。別段、相手が弱いからってことじゃないのか。
「そうだ、この愚か者たちには、宿のドアだけでなく、この町の修繕を全てさせよう」
海賊たちに嘲笑を向けながら継ぐベル。
嘲笑で理解できた。やはり、相手が取るに足らないからってのも、炎を出さない理由に含まれているようだ。
「それはいい。まずはここと王都のラインを確立して、ギルドメンバーを駐留させよう。で、こいつらを人足にすれば、金がかからなくていい。言うことを聞かないなら、メンバーに制裁をって言っとけばいいだろう」
「素晴らしいぞトール」
すでに勝った気でいる俺とベルが話を交わせば、やり取りが耳朶に届いた海賊たちの顔は、茹で蛸みたいに真っ赤かである。
それを気にも留めない俺は、
「あ、そうそう。間違っても宿は焼くなよ」
「や、や、焼きませんよ! なんですか、そのベルさんとのあつかいの違いは!」
「信頼関係の差だよ」
開幕前にいきなり魔法を相手の顔面に打ち込む奴と比べるのは失礼だろう。
しかも俺が指摘した時の慌てっぷり。宿にまだ敵がいるかもと考慮して、宿ごと燃やそうと考えていたに違いない。
恐ろしい十三歳だ。
「――――フッ」
小気味のいい呼気を吐きつつの蹴撃。
長い足から打ち込まれるそれが、大男の首に直撃すれば、他愛なく撃沈。
モデルも驚くすらりと伸びた脚の動きには、こちらまで見とれてしまって、相手に攻撃できなかった。
そんなアホな童貞な俺の隙を突いて、
「ふんが!」
原始人かよ! と、ツッコミを入れたいかけ声と共に、先端にトゲトゲの付いた刀剣サイズの棍棒を振り上げる海賊。
あの棍棒、確かレイダークラブとかいうやつだな。
などと、分析していないで行動しろ俺! 自分を心底で叱咤しながら、先端部分に触れないように、鉄棒部分に鎬をぶつけて受け止め、捌き、バランスを崩す。
狙ってくれと言わんばかりに延髄が露わになったので、峰を打ち込む。
やはりベルのように、ワンコンタクトで戦闘不能には出来ないな。
どうしても、躱したり捌くのが動作に入るが、まあ、俺としては上等だな。
「野郎!」
背後から別のが俺に迫るも、パシュンと音がすれば、力なく崩れ落ちる。
「ありがとうございます」
麻酔銃を構えたゲッコーさんは笑みで返してきた。
俺がポカしても完璧なフォローがあるから、大胆に立ち回れる。
「――――あれ、もう半分は倒したんじゃないか?」
余裕だな。
「なめるなよ!」
正面から筋肉隆々の禿頭で、顔下半分を隠す髭の持ち主が、戦槌を大きく振りかざしている。
こういう得物を持っているのと戦うのも経験済みだ。
振り下ろされる前に、瞬時に懐には入ってからの胴打ち。
「が!?」
苦痛の声を上げるのが耳に届く。
戦いって、やはり覚悟だな。ビビって仰け反ったり動けなくなれば、戦槌が頭上に落ちてきてたんだろうが、対応できる自信があれば、体が恐れることなく、考えと同時に動いてくれる。
「くそ!」
あら?
浅かったようだ。ギロリと目玉が俺を捕捉する。掴まれそうになったところで、
「最後まで気を抜くな」
注意をしつつ、禿頭の顔面に長い足からの蹴りが入れば、それでダウンだ。
「次ぎに活かす」
「ならばいい。だが、生きていなければ、活かせないぞ」
「了解です中佐」
「馬鹿にしてるのか?」
「してないよ」
中佐だから中佐って言っただけだろうに。
まだまだ冗談を言い合うような仲には進展していないな。
――……しっかし、まだ出てくるのか。結構いるじゃないか。
明らかに二十人以上はいる。
少数から得る情報は、やはり信憑性に欠けるな。
多方向から情報を得て、そこから答えを出さないといけないね。
これも今後に活かそう。
「まどろっこしいですね。わらわらと!」
ちびっ子がポージングをしながら口を開く。
大勢相手に有利に事が運んでいるのと、自分が先制を仕掛けたことでテンションが上がっているようだ。
――……というより、自分に陶酔しているな……。
「一気にいかせてもらいますよ!」
悦に入るコクリコは、ワンドを手放す。
不思議とコクリコの胸の高さでワンドが宙に浮く。
そこにマナを込めているのか、ファイヤーボールが胸の位置に顕現。
いままでのより大きめなスイカサイズ。
将来はそのくらいの胸を持ちたいという願望なのかな? と、口から漏れそうになった。
球体に炎がほとばしる様は、太陽のプロミネンスみたいだ。
「実戦でこれが使えるとは、集中に時間をかけてしまうので、一人だと隙が生じますが、今回、実戦初披露です!」
昂奮した声音に、先ほど以上に琥珀色の瞳を輝かせ――――、
「さあ、恐れ戦き、体に刻むがいい! ランページボール」
発動すると、スイカサイズの火球が相手の前まで飛んでいく。
速度はファイヤーボールに比べると遅い。躱すのは容易いだろう。
が、火球は海賊たちの指呼の間でピタリと留まり――――、
「うわぁぁぁぁっぁ!?」や、「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」って声が上がる。
そして――――、
「ひぃぃぃぃぃぃ1?」
と、俺も声を上げる。
ランページボールなる火球の魔法は、留まったかと思えば、その場で高速回転を始め、四方八方に炎をまき散らしていく。
スイカサイズの火球から、イチゴサイズの火球が激しく飛び散る。
触れればボンと爆発し、それによって海賊たちは地に伏す。
当たらなかった奴らも大混乱だ。
ついでに俺も大混乱だ。
だって、俺にも飛んできてるからね!
思っていた事を口にすれば、
「万が一にも、宿に当てるわけにはいかないからな」
なるほど。別段、相手が弱いからってことじゃないのか。
「そうだ、この愚か者たちには、宿のドアだけでなく、この町の修繕を全てさせよう」
海賊たちに嘲笑を向けながら継ぐベル。
嘲笑で理解できた。やはり、相手が取るに足らないからってのも、炎を出さない理由に含まれているようだ。
「それはいい。まずはここと王都のラインを確立して、ギルドメンバーを駐留させよう。で、こいつらを人足にすれば、金がかからなくていい。言うことを聞かないなら、メンバーに制裁をって言っとけばいいだろう」
「素晴らしいぞトール」
すでに勝った気でいる俺とベルが話を交わせば、やり取りが耳朶に届いた海賊たちの顔は、茹で蛸みたいに真っ赤かである。
それを気にも留めない俺は、
「あ、そうそう。間違っても宿は焼くなよ」
「や、や、焼きませんよ! なんですか、そのベルさんとのあつかいの違いは!」
「信頼関係の差だよ」
開幕前にいきなり魔法を相手の顔面に打ち込む奴と比べるのは失礼だろう。
しかも俺が指摘した時の慌てっぷり。宿にまだ敵がいるかもと考慮して、宿ごと燃やそうと考えていたに違いない。
恐ろしい十三歳だ。
「――――フッ」
小気味のいい呼気を吐きつつの蹴撃。
長い足から打ち込まれるそれが、大男の首に直撃すれば、他愛なく撃沈。
モデルも驚くすらりと伸びた脚の動きには、こちらまで見とれてしまって、相手に攻撃できなかった。
そんなアホな童貞な俺の隙を突いて、
「ふんが!」
原始人かよ! と、ツッコミを入れたいかけ声と共に、先端にトゲトゲの付いた刀剣サイズの棍棒を振り上げる海賊。
あの棍棒、確かレイダークラブとかいうやつだな。
などと、分析していないで行動しろ俺! 自分を心底で叱咤しながら、先端部分に触れないように、鉄棒部分に鎬をぶつけて受け止め、捌き、バランスを崩す。
狙ってくれと言わんばかりに延髄が露わになったので、峰を打ち込む。
やはりベルのように、ワンコンタクトで戦闘不能には出来ないな。
どうしても、躱したり捌くのが動作に入るが、まあ、俺としては上等だな。
「野郎!」
背後から別のが俺に迫るも、パシュンと音がすれば、力なく崩れ落ちる。
「ありがとうございます」
麻酔銃を構えたゲッコーさんは笑みで返してきた。
俺がポカしても完璧なフォローがあるから、大胆に立ち回れる。
「――――あれ、もう半分は倒したんじゃないか?」
余裕だな。
「なめるなよ!」
正面から筋肉隆々の禿頭で、顔下半分を隠す髭の持ち主が、戦槌を大きく振りかざしている。
こういう得物を持っているのと戦うのも経験済みだ。
振り下ろされる前に、瞬時に懐には入ってからの胴打ち。
「が!?」
苦痛の声を上げるのが耳に届く。
戦いって、やはり覚悟だな。ビビって仰け反ったり動けなくなれば、戦槌が頭上に落ちてきてたんだろうが、対応できる自信があれば、体が恐れることなく、考えと同時に動いてくれる。
「くそ!」
あら?
浅かったようだ。ギロリと目玉が俺を捕捉する。掴まれそうになったところで、
「最後まで気を抜くな」
注意をしつつ、禿頭の顔面に長い足からの蹴りが入れば、それでダウンだ。
「次ぎに活かす」
「ならばいい。だが、生きていなければ、活かせないぞ」
「了解です中佐」
「馬鹿にしてるのか?」
「してないよ」
中佐だから中佐って言っただけだろうに。
まだまだ冗談を言い合うような仲には進展していないな。
――……しっかし、まだ出てくるのか。結構いるじゃないか。
明らかに二十人以上はいる。
少数から得る情報は、やはり信憑性に欠けるな。
多方向から情報を得て、そこから答えを出さないといけないね。
これも今後に活かそう。
「まどろっこしいですね。わらわらと!」
ちびっ子がポージングをしながら口を開く。
大勢相手に有利に事が運んでいるのと、自分が先制を仕掛けたことでテンションが上がっているようだ。
――……というより、自分に陶酔しているな……。
「一気にいかせてもらいますよ!」
悦に入るコクリコは、ワンドを手放す。
不思議とコクリコの胸の高さでワンドが宙に浮く。
そこにマナを込めているのか、ファイヤーボールが胸の位置に顕現。
いままでのより大きめなスイカサイズ。
将来はそのくらいの胸を持ちたいという願望なのかな? と、口から漏れそうになった。
球体に炎がほとばしる様は、太陽のプロミネンスみたいだ。
「実戦でこれが使えるとは、集中に時間をかけてしまうので、一人だと隙が生じますが、今回、実戦初披露です!」
昂奮した声音に、先ほど以上に琥珀色の瞳を輝かせ――――、
「さあ、恐れ戦き、体に刻むがいい! ランページボール」
発動すると、スイカサイズの火球が相手の前まで飛んでいく。
速度はファイヤーボールに比べると遅い。躱すのは容易いだろう。
が、火球は海賊たちの指呼の間でピタリと留まり――――、
「うわぁぁぁぁっぁ!?」や、「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」って声が上がる。
そして――――、
「ひぃぃぃぃぃぃ1?」
と、俺も声を上げる。
ランページボールなる火球の魔法は、留まったかと思えば、その場で高速回転を始め、四方八方に炎をまき散らしていく。
スイカサイズの火球から、イチゴサイズの火球が激しく飛び散る。
触れればボンと爆発し、それによって海賊たちは地に伏す。
当たらなかった奴らも大混乱だ。
ついでに俺も大混乱だ。
だって、俺にも飛んできてるからね!
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