異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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海賊退治

PHASE-93【不意打ち】

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 ――――攻撃ポイントまで移動する。
 先ほどまでいた防波堤の反対側。ゲッコーさんは防波堤に待機し、銃を撃つ。
 音に対してそちらに目を向けたところで、俺たちが攻めるというものだ。
 警戒を緩めない海賊たちは耳を澄ませているようで、感づかれないように、俺たちも息を殺し攻撃に備える。
 港に寄せる波の音が、緊張感の中でも妙に心地いい。

『よし、やるぞ』
 耳に直接ゲッコーさんの声が届けば、コクリコの体がビクリと震える。
 だがすぐに、イヤホンマイクの便利さに感動していた。

「どうぞ」
 と、俺が返せば、即座に乾いた音が一発。
 ――バタリと、海賊の一人が倒れた。

「なんだ!?」
 急に倒れた仲間に慌てふためきながらも、音の発生源である防波堤へと目を向ける海賊たち。

「いまだ!」
 小声でありつつ強い語気で俺が言えば、二人は首肯で返し、三人で駆け出す。
 俺が最初に駆け出したのに、二人の背中を眺めるっていうね……。

「ファイヤーボール!」
 現地っ子の強い足腰は、魔法を唱えると共に、跳躍して蹴りを顔面に見舞う。
 それで二人がダウン。

「やるな。私が出遅れるとは」
 感心するベルも、柄頭で振り向く海賊の顎先を正確に狙えば膝から崩れ落ち、鞘からレイピアを抜き、装飾の素晴らしい護拳でストレートを一撃。
 間髪入れずに長い足での蹴撃。
 あれよあれよと数人が倒れていく光景。

「なんだ!」

「もうそれ聞き飽きた」
 遅れて俺も参戦。峰で胴打ち。一人ダウン。
 次の標的には、出小手を見舞って斧を叩き落とし、首にズンと打ち込む。
 突然の襲撃に大混乱だ。
 しかもベルが瞬く間に大勢を倒すから、海賊たちは俺たちが思いの外、大人数で攻めてきていると勘違いして、更に混乱に拍車がかかり、駄目出しとばかりに乾いた音が響く。

「なんだんだお前ら! いったいど……」
 最後まで言わせることなく、コクリコの唱えたファイヤーボールが後頭部に直撃して前のめり。

『数人なら逃がしていいからな』
 ここで一網打尽でいいとも思うが、ゲッコーさんは数人は船に乗って帰らせろと言う。
 だが現状の人数は逃がすなって事だ。
 少数なら逃げを選択するが、多くが船に戻れば、船で反撃してくる。陸地の敵より面倒になる。
 それに、ゲッコーさんは逃がすことが目的でもあるみたいだ。
 俺としては全員を捕縛したいんだけども、俺なんかより戦場を熟知している人物の言を信じるべきだと判断する。
 指示に対して、暴れたいコクリコは嫌がっているが、ここは従ってもらう。
 とはいえ、相手が戦意を喪失しないといけないから、まだその時じゃないんだろうが――、

「と」
 振り下ろされた鉈を捌いていなす。
 迫る刃物に対しても、ビビることがなくなった。
 心に余裕があるから、太刀筋をちゃんと目で追える。
 バランスを崩したところに、これまた胴打ち。
 ベルやコクリコみたいに無手でも戦える打撃も学ばないとな。

「いや、本当に! お前らなん――――」

「黙れゲス」
 ちゃんと言わせてあげないのな……。
 跳び蹴りが顔面にめり込む。
 ヒールでその蹴りだ。見てるこっちも痛くなってくる。

「女だ捕まえろ」
 なんて常套句。しかもそんな発言したら火に油だ。
 ベルへと一斉に群がるが、お怒りの中佐は体に炎を纏う。

「ひぃ!?」
 怯えた声が上がった。

「コイツはなんだ! 魔女か!?」

「魔女じゃねえよ。中佐だよ」
 ベルが注視される中で、背後から一撃を入れてダウンさせる。
 卑怯とは言うなよ。これは戦いだ。
 隙が出来てる海賊たちにガッツンガッツンと、流れ作業のように、峰で叩き伏せていく。

「ぎゃ!」
 ボンと激しい音。ファイヤーボールを放つコクリコはご機嫌斜めで、いつの間にか、海賊たちの船に乗り、船端に立てば、

「魔女というなら私のことでしょう。偉大なるロードウィザードであるこの私」
 惜しむらくは、コイツがショートパンツじゃなければ良かったなと――。
 普通にスカートだったら、パンツを拝めていた角度だ。
 まあ、十三歳のパンツなんて興味ないですけども。
 いや、別にやせ我慢とかじゃないし。
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