異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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火龍

PHASE-130【ポイントじゃねえ。経験だ】

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「ふざけおって。舌の回りは秀逸だな。よほど良い油をさしているようだ」
 小洒落た返しが出来るじゃないか。
 
 刀を構えると、挨拶とばかりに氷の矢が飛んでくる。
 岩を盾にして対処。
 盾が欲しいな。
 
 刀は両手持ちだから、盾を使用するなら、腕にくくりつけるのがいいんだろうが、そうなると今度は振りの妨げになるか。
 ――てな事を考える暇はない。
 
 チラリと覗き見れば、

「ひょ!?」
 狙ったかのように氷の矢が飛んでくる。
 あぶなかった。
 
 だが、さっきから氷の矢だ。
 電柱並みのやつや、頭上から降り注ぐのは使ってこない。
 
 今までは部下を使って時間を稼いでいたから、使用が可能だったんだろう。
 コクリコよりは詠唱は早いけども、一対一だと、リキャストタイムでやはり隙が生じるようだな。
  
 そこを突くべきだが、コクリコとの戦いで、接近戦で痛い目にあったからな……。
 
 とはいえ、相手は自尊心の塊。
 魔法に絶対の自信を持っているから、実際の所、接近戦は苦手と考えるべきか。
 
 だが、仮定で行動は出来ない。なんたって命がかかってるからな。
 ゲッコーさんのように、確実に行動しなければ――――、
 
 目を地面に落とす。
 手頃な石が有るのを確認。
 
 刀を一度、鞘に納刀。
 マテバを取り出してズドンと撃ってみる。

「ええい!」
 目で捕捉するのが難しい弾丸は、氷の盾を目の前に作って対処。
 次ぎに先ほど見つけた手頃な石を拾い上げて、マレンティ目がけて投げる。

「なんだそれは」
 とか言ってるが、躱す姿にぎこちなさが窺えた。
 間違いない。こいつは接近戦は弱い。

「一気に行くぞ」
 堂々と宣言しつつ、マテバからもう一発。
 弾丸に警戒してもらっているところで前進。
 
 イメージとしては、ベルのように地面を滑空するかのような疾駆だ。

「鬱陶しい!」
 手を前に出す動作が見えれば、足を止めて銃を構えてみせる。
 攻撃魔法を中断して、盾の魔法に切り替えるマレンティ。
 そこを狙って再び足を進める。
 
 これを繰り返せば――――、

「よう」
 指呼の距離まで到達。

 鞘から刀を走らせて、上段から振り下ろす。

「なめるなよ!」
 トライデントの柄で受け止められた。
 こちらは腕二本。相手は腕三本でトライデントを持っている。
 だから、単純に膂力では勝てない。
 
 打ち込みが防がれれば、咄嗟に後方に移動。
 瞬間、俺の腹部に拳圧が伝わってくる。
 残り一本での拳打。

 魔道師が接近戦は苦手という固定観念は、コクリコの時で打ち砕かれたからな。
 
 いかにこいつが接近戦が苦手でも、腕は俺の倍あるんだからな、俺が経験した事のない攻撃パターンも豊富なはずだ。
 
 だが――――、

「遅いな」
 小馬鹿にしてやる。
 実際、コクリコに比べれば、徒手空拳の動きはお粗末だ。

「シュ!」
 顔真っ赤になりながらも、怒号を発する事はなく、俺に穂先を向けてくる。
 普通の槍に比べたらリーチは短い。
 
 三本の穂先からなるトライデントは、普通の槍より重量があるだろうからな。
 柄が長いと、得物に振り回される事になる。

 なので、間合いの取り方は槍よりは容易い。
 一歩入り込めば、すぐに刀の間合いになるからな。

 つかず離れずで、相手に魔法だけは使わせないようにする。
 
 ハハ――――、こうやってスキルって身につけていくんだな。
 ポイント振り制ではなく、経験で積み重ねていくことで、真に強くなれるってもんだ。

「なにがおかしい!」

「近道なんて無いって思ったんだよ」

「訳が分からん」

「訳が分からなくて結構。さっきも言ったけど、意味が無いからな。今から命を散らす存在には」

「ガァァァァァァッ!」
 おお、本日一番の顔真っ赤を更新だ。
 
 さっきは冷静を装って、シュっとか突きのかけ声を発していたが、流石に下等種族と思っている存在に馬鹿にされ続ければ、我慢は臨界点を突破だ。
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