異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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お久しぶりの王都

PHASE-160【アセットバリューがパネェ】

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「トールよ、装備の刀はどうした? 先日も気にはしていたのだが」
 王様と家臣団がギルドハウスにおこしだ。
 
 俺は昨日の打撃で痛む箇所と、三種の神器を失った虚無感でやる気がないというのに、元気な笑顔でございますね。
 王様の側に立つ、心の友ダンブル子爵には、素敵な装備を活かすことが出来なくて申し訳ねえです。

「あれ、言ってませんでしたかね。火龍を救い出す時に、終の秘剣もどきで折れちゃったんですよ」

「終の秘剣? よく分からんが、勇者の一撃なのだから、相当の威力なのだろうな。となれば、新たに刀を用意させようか?」

「結構です。火龍から鱗をもらってるので」

「「「「なんと!?」」」」
 王様と取り巻きに加えて、ギルドメンバーもシンクロする。
 
 火龍の鱗と聞いてこのリアクション。どおやら相当のお宝のようだ。

 ――なかなかにざわつきが収まらない。

 家臣団の面子で信頼出来るナブル将軍と、俺の心の友であるダンブル子爵に問うてみる。
 
 二人は顔を見合わせると、代表して将軍が口を開いてくれた。

「四龍の鱗を手に入れる事が出来るのは、力を認められた者のみ。つまりは、この世界を調律する存在に認められるということ。こんな事はあり得ないのです。そもそも出会う事が出来ない存在なのですから。いくら囚われていたからと言っても、それを救い出す事も本来は不可能。可能にする存在だからこそ得られたのでしょうな」
 鱗の存在に、興奮気味の将軍。喋々と発する言葉は熱を帯びている。
 
 一息いれるところで、交代するかのように、心の友が続く。

「伝説の存在でもある四龍の鱗。鱗一枚で国が買えますぞ」

「マジで……」
 おいおい、畳一畳分の鱗で国が買えるって……。
 一平方メートル、ウン千万の銀座の地価がしょぼく見えるぜ。

「邪な事は考えるなよ」

「分かってるよ」

「本当か?」

「本当ですとも」
 小声にてベルに釘を刺される。
 まったく、俺の目が$マークにでもなっていたのだろうか。
 
 というか、現状この世界、貨幣に価値もなければ、国を買えてもどん詰まりだがら意味が無いんだけどな。
 装備にするのが現実的だ。

 なので――、

「さっそくだけど、鱗を武具に加工できる職人を紹介してほしんすけど。もちろん装備が装備なんで、国一番とかにお願いしたいですね」
 見合った存在に頼みたいよな。

「う、む……」
 むむむ? どうした王様? 表情が芳しくないぞ。

「国一番を呼びたいのは山々だが……」
 ――……ああ……、このパターンね。

 RPGでも、伝説の素材が手には入ったら、今度は作り手を探せってやつね。

「でも、この王都には、いまではドワーフだっていますよ。問題ないでしょう」

「いや、いくらドワーフでも難しいかもしれない。加工するための場所はいままで閉鎖していたが、荀彧殿の助力に、王都を訪れているドワーフ達の活躍もあって、工場こうばの稼働は再開したんだがな」

「いい事ですね」

「有りがたい事だ。だが、鱗加工の技術者は、ドワーフより人間の方が秀でているのだ」
 ――――ドワーフは主に地下で鉱物を使用した加工技術に秀でている。
 ミスリルなんかが代表的だ。
 
 エルフもミスリルなどの鉱物加工に秀でているが、それ以上に、植物などを利用する事に秀でた存在らしい。

 人間は、両種族には及ばないが、鉱物、植物の加工技術に秀でている。
 だがそれ以上に、生き物の外皮や骨を加工するという技術に置いては、両種族よりも高いそうだ。

 ドワーフはともかく、エルフは気位が高いからか、生き物の死骸などから武具を加工するという発想もなければ、嫌悪の感情もあるようだ。

「では人間の職人を紹介してください」

「うむ。ここより北西に、クレトスという小さな村がある。そこの職人ならやってくれるだろう」

「魔王軍に襲われてないんですかね?」
 優秀な職人がいると知れば、強力な武具を作らせないために、魔王軍が侵攻してそうなんだけど。

「その村は代々、王族専用の湯治場でな。村の存在を知る者は少ない」
 湯治場――、温泉のことか。

「だが、村は瘴気によって汚染されてしまっているだろう。火龍の力によって、一帯の瘴気は浄化されてはいるが……」
 今ごろは、凶暴化した人間が跋扈しているわけか。

 じゃあ、行っても意味が無いのか?

 ――――否! 断じて否である!!

「この目で確認する事は大事だ! 希望は手ずから手繰り寄せるもんだ!」

「言うようになったな。感心したぞ」
 だろ、ベル。

「不快な目だ」
 おっと、美人中佐の頭から足先までなめるように見てしまったよ。
 だって、湯治場、つまりは温泉。
 温泉って聞けば――、ね~。
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