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王族の湯治場クレトス
PHASE-170【クレトス村】
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――――自分がこのパーティーの中心と勘違いしてしまっている、小生意気ななんちゃらウィザードの後に続いて登っていけば――――。
「ふぃ~ついた」
大きく息を一つ。
流石に疲れたね。
眼界に入ってくるのは、二メートルほどの石垣の壁が左右に続いている光景。
俯瞰から見れば、村を囲むように出来ていると考えられる。
石垣の前には堀があり、逆茂木も備わっている。
環濠集落と言えば正解なのだろうか。
流石は王族の湯治場ってだけあって、村自体が攻めにくいつくりになっていた。
ちょっとした軍事施設のようでもある。
「硫黄の匂いがする」
鼻をスンスンとさせれば、温泉地独特のにおいが鼻孔に届く。
石垣の向こう側からは白い湯気も上がっている。
あの湯気が瘴気からこの村を救ったんだな。
堀からも湯気があがっているから、わき出てくる温泉を堀に流して、敵の進軍速度を落とすためにも利用している抜かりのなさだ。
手を突っ込んでみたいが、温泉兼生活排水だったらどうしようという考えがめぐり、堀のお湯に触れることの出来ない現代っ子が俺です。
「シャルナだ!」
石垣向こうに築かれた物見櫓の立哨がそう言えば、俺たちの進路にある木製の門が開かれる。
シャルナといるからか、すんなりと門をくぐれた。
――門を通り、村へと足を踏み入れると、親近感の湧く和テイストの民家が建ち並んでいる。
ここを拠点にしたいくらいだ。
木造建築は日本の住居、とくに田舎の家屋に似たデザイン。
全体が葦で出来た、弥生時代の竪穴式住居のような家屋に、茅葺き屋根に土壁と、ばあちゃんの家を思い出す家屋もある。
「自然の物をうまく利用した家屋が多いな。コンクリートで囲まれている帝都とは違い、風情があり、和む」
話だけ聞くと、ゲーム内の帝都って、無骨で味気なさそうだな。
こういうのどかな風景をベルも気に入ったようだ。
「ちょっと前まで危機に瀕していたとは思えないな」
「アレのおかげだよ」
独白のつもりだったが、シャルナが言葉を拾う。
指差されたアレ。
内側から見て初めて存在に気付いた。
竹が立っている。
加工された竹の長さは石垣よりちょい長い程度。
外側からはただ湯気が出ているように見えていたが、内から見れば、竹製の煙突が壁に沿って等間隔で立っている。
「あの竹から出る温泉の湯気が、村全体を覆ってくれるんだ」
地面に埋めた竹を配管代わりにして、浄化効果がある温泉の湯気を通し、煙突役の竹まで伝わらせる。
中央には弱まった水龍の加護を増幅する魔導具が備わっているそうだ。
この工事を短時間で行ったのが、ワック・ワックさん。
「で、そのワック・ワックさんはどこにいるんだ? 俺としては大至急で会いたいんだけど」
「いまはいないよ」
「は?」
もういいよそのRPG要素。
会いに来たらいない。会うために新たなイベントが発生するとか、俺は欲していないよ。
お手軽に火龍の鱗から装備を作ってほしいだけなのに。
「どこにいるんだ?」
こうなった以上はイベントを進めないといけないからな。
こういう発言しか出てこない。
「ゴロ太がいなくなったんだ。つい先日の事なんだけどね。着の身着のままで村を飛び出したからね。皆、心配しててさ。警邏しつつゴロ太も探してたんだけど、ワックも居ても立っても居られないって、村を飛び出したんだよ」
「大丈夫なのかよ」
「一応、村の手練れも随伴してるから大事にはならないとは思うんだけど」
本当かよ。
「この山には山賊もいるんだろ? 油断しすぎじゃないか」
ゲッコーさんの言うとおりだ。
楽観視しすぎだろ。
自分たちがちょっと強いからって過信してんじゃないの?
加えて瘴気が晴れた開放感から、気が大きくなっているという悪循環の気がする。
「大変だ!」
本当に大変だよ……。
このご都合主義もさ……。
こっちに懸命にモブの方が走ってくるよ。
俺がいるのは異世界じゃなくて、ゲームの世界なんじゃないかと疑いたくなるくらいに、タイミングが良すぎるんだよ。
「ふぃ~ついた」
大きく息を一つ。
流石に疲れたね。
眼界に入ってくるのは、二メートルほどの石垣の壁が左右に続いている光景。
俯瞰から見れば、村を囲むように出来ていると考えられる。
石垣の前には堀があり、逆茂木も備わっている。
環濠集落と言えば正解なのだろうか。
流石は王族の湯治場ってだけあって、村自体が攻めにくいつくりになっていた。
ちょっとした軍事施設のようでもある。
「硫黄の匂いがする」
鼻をスンスンとさせれば、温泉地独特のにおいが鼻孔に届く。
石垣の向こう側からは白い湯気も上がっている。
あの湯気が瘴気からこの村を救ったんだな。
堀からも湯気があがっているから、わき出てくる温泉を堀に流して、敵の進軍速度を落とすためにも利用している抜かりのなさだ。
手を突っ込んでみたいが、温泉兼生活排水だったらどうしようという考えがめぐり、堀のお湯に触れることの出来ない現代っ子が俺です。
「シャルナだ!」
石垣向こうに築かれた物見櫓の立哨がそう言えば、俺たちの進路にある木製の門が開かれる。
シャルナといるからか、すんなりと門をくぐれた。
――門を通り、村へと足を踏み入れると、親近感の湧く和テイストの民家が建ち並んでいる。
ここを拠点にしたいくらいだ。
木造建築は日本の住居、とくに田舎の家屋に似たデザイン。
全体が葦で出来た、弥生時代の竪穴式住居のような家屋に、茅葺き屋根に土壁と、ばあちゃんの家を思い出す家屋もある。
「自然の物をうまく利用した家屋が多いな。コンクリートで囲まれている帝都とは違い、風情があり、和む」
話だけ聞くと、ゲーム内の帝都って、無骨で味気なさそうだな。
こういうのどかな風景をベルも気に入ったようだ。
「ちょっと前まで危機に瀕していたとは思えないな」
「アレのおかげだよ」
独白のつもりだったが、シャルナが言葉を拾う。
指差されたアレ。
内側から見て初めて存在に気付いた。
竹が立っている。
加工された竹の長さは石垣よりちょい長い程度。
外側からはただ湯気が出ているように見えていたが、内から見れば、竹製の煙突が壁に沿って等間隔で立っている。
「あの竹から出る温泉の湯気が、村全体を覆ってくれるんだ」
地面に埋めた竹を配管代わりにして、浄化効果がある温泉の湯気を通し、煙突役の竹まで伝わらせる。
中央には弱まった水龍の加護を増幅する魔導具が備わっているそうだ。
この工事を短時間で行ったのが、ワック・ワックさん。
「で、そのワック・ワックさんはどこにいるんだ? 俺としては大至急で会いたいんだけど」
「いまはいないよ」
「は?」
もういいよそのRPG要素。
会いに来たらいない。会うために新たなイベントが発生するとか、俺は欲していないよ。
お手軽に火龍の鱗から装備を作ってほしいだけなのに。
「どこにいるんだ?」
こうなった以上はイベントを進めないといけないからな。
こういう発言しか出てこない。
「ゴロ太がいなくなったんだ。つい先日の事なんだけどね。着の身着のままで村を飛び出したからね。皆、心配しててさ。警邏しつつゴロ太も探してたんだけど、ワックも居ても立っても居られないって、村を飛び出したんだよ」
「大丈夫なのかよ」
「一応、村の手練れも随伴してるから大事にはならないとは思うんだけど」
本当かよ。
「この山には山賊もいるんだろ? 油断しすぎじゃないか」
ゲッコーさんの言うとおりだ。
楽観視しすぎだろ。
自分たちがちょっと強いからって過信してんじゃないの?
加えて瘴気が晴れた開放感から、気が大きくなっているという悪循環の気がする。
「大変だ!」
本当に大変だよ……。
このご都合主義もさ……。
こっちに懸命にモブの方が走ってくるよ。
俺がいるのは異世界じゃなくて、ゲームの世界なんじゃないかと疑いたくなるくらいに、タイミングが良すぎるんだよ。
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