異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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王族の湯治場クレトス

PHASE-180【だから名前!】

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 ハンターたちも反省。ゴロ太に謝っている。
 背後のベルにビクビクしていたけども……。
 倒れていたハンター二人も起こして、改心させた。

「にしても、その黒いの凄いな」
 シャルナの佩剣を指差す。
 拘束されていたケーニッヒス・ティーガーの鎖を容易く切って救い出したのはシャルナだ。

「刃毀れとかしないのか?」

「見て見なよ」

「わっと!?」
 投げるなよ! 投げるなら鞘ごとよこせ!
 ちょっと前に、俺はこの刃物で襲われそうになったんだよな。
 ゲッコーさんが手にした時に鉱物って言ってたが、

「鉱物って頑丈なんですか?」

「硬度はあっても、同じ質量と形状の金属に比べれば衝撃には脆いんだがな。俺もいいか?」
 と、ここでゲッコーさんがゆっくりと黒い剣身のショートソードを見る。

「――――鉱物は?」

「黒石英だよ」

「石英か。十五段階でのモース硬度は8。真ん中くらいの硬度だが。この世界の鉱物だし、普通の石英よりも硬度はあるのかもしれんが、そもそも鉱物を刀剣にする意味がな」

「黒石英はタリスマンでもあるんだ。その剣には魔法が封じられててね、その魔法効果で鉱物であるその剣は、金属の剣よりも頑丈で、切れ味もいいんだ」

「なるほど、ファンタジーの世界だな。俺たちの常識は通用しないわけだ」

「ファンタジー?」
 なにを言っているのかといった感じで、ゲッコーさんに向けて首を傾げるシャルナ。
 ゲッコーさんはハリウッディアンの髭で笑むだけで、黒剣をシャルナに返す。
 何なんだろうと、笑みの意味を見いだせないまま、樹皮を加工した鞘に黒剣を収める。

 そんなやり取りをしつつ、皆を伴って山道へと出ようとしている最中――――、

「見つけたぞ」
 あん?
 木々が少なく、視界が開けた場所。
 そこで突然の怒鳴り声。

「よくもアジトを破壊してくれたな! 仲間も返してもらうぞ!」
 なんだよ。まだいたのかよ。

「おいおい、俺たちがアジトを壊した証拠は?」
 俺が壊した張本人だけども。
 だが、あの時あそこにいた山賊は捕まえた。
 となれば、

「見ていたんだよ」
 となるよな。
 なので、「へっ」と、嘲笑。
 お怒りなのか、顔真っ赤。
 
 俺は相手を挑発するセンスが秀逸のようだな。

「馬鹿にしてんのか!」

「してるよ。その時に立ち向かってこないで逃げ出してたくせに、いまになって攻めてくるって事は、それ相応の準備をしてきました。って言ってるのと一緒だろ。こっちはそれに警戒させてはもらうけど」

「いい洞察力だ。いいぞ、もっとしたたかになるんだ」
 じゃないと戦場じゃ生き残れないですからね。
 俺の用心深さの成長に、ゲッコーさんは喜んでくれる。

「うるせー! アジトの代わりに村をいただく」

「結局はそれが目的なんだろうに。だったら俺らじゃなくて村を襲うことが正解だったぞ」

「正論だ」
 頷くゲッコーさん。
 俺とゲッコーさんのやり取りに、山賊は更に怒りで体を震わせる。
 
 正直、俺のこの強気は、ベルやゲッコーさんがいるからってのもあるが、最近では、俺自身が魔法を使えるってところからもきている。
 それに、相手の言動から、大したことない連中って分かっているからな。
 
 だが、念には念をいれる。それが俺という、根っこは臆病な存在。
 彼を知り己を知ればってやつだ。
 
 プレイギアのカメラを山賊の一人向けて――――っと。

【アラミアンス・クラウディネス】

【種族・人間】

【レベル・14】

【得手・――】

【不得手・――】

【属性・強欲】

【所持アイテム・スクロール×4】

 ――う、む……。

 レベル14か。大したことないな。
 とはいえ、低レベルの俺がホブとかマレンティを倒したから、油断は出来ない。

 得手と不得手がなんの表記もないから、端的にザコって事なんだろうが。問題は…………、名前! 無駄に格好いい感じの名前!!
 
 山賊は皆こうなのかよ。
 村のモブさんもそうだったけども。
 名前が格好良すぎるんだよ!

 名前も気になって仕方ないが、それよりも一番に警戒しないといけないのは、低レベルでありながら、スクロールを所持していることだ。

 中身が何かまでは、流石にプレイギアのアプリでも分からないが、西の塔でナブル将軍が、スクロールは起死回生の代物とも言っていたし、山賊たちが大したことなくても、スクロールは危険視しないといけないな。
 四つも持ってるし。
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