異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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王族の湯治場クレトス

PHASE-182【山の王者である虎とは別の虎】

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「あのさ、あんまり強い魔法を使用しないでくれる」
 俺なりの格好いいポーズをしている時に苦言とは、生意気だぞシャルナ。

「なんで?」
 こっちは綺麗に決まって、若干、悦に浸っているのに。

「森がめちゃくちゃになるからだよ!」
 色素の薄い金髪を揺らめかせて、碧眼で睨まれてしまう。
 
 確かに、大魔法は威力が高いからな。自然破壊にも繋がるってもんだ……。
 さっきは木々の多いところだったから、水の勢いも抑えられたようだが、ここは開けてるからな……。

「すんません」
 お怒りのエルフに綺麗に一礼。

「だけど見てくれ。ゴーレムを」
 大魔法の効果で、一体は完全に流しきったし、残った一体も崩れ落ちている。

「くそ! クリエイトのスクロールだ」
 おっと、クリエイトって聞けば、嫌な予感しかしないぞ。
 アラミアンスって山賊の指示に従って、一人の山賊が開いたスクロールに手を当てると、崩れ落ちたゴーレムがみるみる元通りだ。
 
 言葉通りのスクロール効果。

「にゃろ! 山賊の分際でどれだけスクロールを持ってるんだよ!」
 仕方ない。

「スプリームフォウッ!?」

「だからダメだって!」
 だからって、弓で俺の頭をどつくんじゃない!

「目の前の脅威も大事だろうが!」
 ゲッコーさんがロケランを撃てば、なんの問題もないのに。
 俺を試すように傍観だもの!

「お兄ちゃん」

「なんだい」
 声はあれだが、姿が愛らしいので、一応はあやすように話してみる。

「シャルナお姉ちゃんの言うように、森に被害が出るから、止めてほしいな」
 まん丸なお目々の、マヨネーズ容器体型からのお願い。
 可愛くはあるが、俺は乙女ではないので、

「でもな、脅威が迫ってるから」

「でも……」

「おい、ゴロ太が悲しんでいるじゃないか」
 えぇ……。
 ここで胸囲――じゃなかった、脅威の中佐が炯眼で俺を威圧してくる。
 俺は乙女ではないが、ベルは完全なる乙女だった。
 
 可愛いものの懇願を聞き入れなければ、絶対に許さないといったところか……。

「もっと別の方法を探せ」

「探すんじゃなくて、一緒に戦おうぜ」

「私はゴロ太の護衛で忙しい」
 愛くるしさが羨ましい!
 でも、ゴロ太は未だにベルを怖がってるみたいですが。
 ポイント稼ぐのも大変だな。
 
 俺がお前に気に入ってもらえるように、ポイントを必死になって稼いでる気分が少しは理解できましたか!
 
 いいさ、やってやるさ!

「お前等には悪いけども、ここからは完全なる八つ当たりを実行させてもらうからな!」
 ゴロ太に抱く、妬み嫉みの思いを山賊たちにぶつけてやる。

「やれるもんならやって見やがれ! こっちはまだクリエイトのスクロールは持ってんだ」

「知るか! そんなもん使い切るまで破壊してやりたいが、お前等の持ってるスクロールは欲しいので、素直に降伏するように」

「ふざけんな!」 
 うるせい! こちとらギルドの会頭なんだよ! メンバーの為に上等な報酬が得られるチャンスがあるなら、実行に移さないとな!
 
 物理、魔法に強くとも、火力の高いものなら破壊は可能だというのは、そこのゴーレムよりデカいシーゴーレムで理解している。

 スクロールは得たいから、迅速に対処させてもらうぞ。

「よぉぉし! 俺も見せてやろう! そっちが土と石の巨人なら、こっちは鋼鉄製だ」

「大魔法は駄目だからね。自然破壊は無しだよ」
 おっと、半信半疑のエルフよ、ここで俺の凄さを完全に理解させないとな。
 サージカルストライクで対処してやるから心配するな。 

 ミズーリでお世話になったゲーム、ワールド・バトルシップを持っているということは――、

「こいつも持ってんだよ! 出てこい第三帝国の凄いヤツ! ティーガーアインス!」
 プレイギアを前面に出して、輝きの中から現れる鋼鉄の塊。
 
 ワールドシリーズの陸版。ワールド・バトルタンクより、WW2ダブダブツー時の陸の王者と言っても過言ではない、皆大好きティーガー1だ。
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