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王族の湯治場クレトス
PHASE-186【カリスマのカの字もねえ……】
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「あぁ、こりゃ瘴気も浄化されるってもんだ」
マイルドでしっとり。
熱すぎず、ぬるくない適温。
長風呂するのに最適な温泉だ。
心も体も清らかに――――、
「おお、広いですね!」
清らかになると思ったな――――。あれは嘘だ。
まな板の胸を持ちし魔女っ子の声を耳にしたその時――――、俺は光を超えた。
もちろん感覚的にだが。
岩風呂の湯船より、音も立てずに和テイストの竹で作られた仕切りへと移動。
向こう側からはコクリコがキャッキャと有頂天だ。
俺がまな板には興味が無いのは周知の事実。
だが、コクリコがいるという事は――――、
「素晴らしい」
ベルの声が聞こえてくるということだ。
きっと俺は、三日月状の笑みを湛えていることだろう。
脳内では小さな俺が小躍りしている。
「でしょ~」
フフフ――――、シャルナもいるな。当然よな。エルフの美しい裸体も最高であろう。
「ちゃんと体を洗ってからお風呂に入ろうね」
「無論だとも」
ゴロ太の発言に、上機嫌に応えるベル。
ゴロ太め! 羨ましい。
今日ほど転生する時に、愛玩動物に生まれ変わりたいとセラに伝えればよかったと思ったことはないぞ!
羨ましくてたまらないが、ベルに明るさを取り戻させたのでそこは評価しよう。
明るくなった女が仕切りの向こう側にいる。
と、なれば――――だ。俺は十六の男。ここで覗かなければ、男として恥よな!
覗き行為が恥とかそんなくそ真面目な考えなんて、虚空の彼方に消し飛ばしてやる!
しかしよぉ…………、
「…………」
アレはどうなの……。
覗くことも大事だが、それ以上に気になる事があるんだよね。
――――気になる方へと接近。
見下ろしてみても反応はない。
「何してんですか?」
「………………」
――……返事はない。
「やれやれ……」
呆れちまうな――っと!
しっかりと諸手で掴んで、勢いよく持ち上げる。
「!」
「いや……、頭に感嘆符を浮かべたいのは俺ですよ。何してんですかゲッコーさん。それでも伝説の兵士ですか」
「その……、完璧だっただろう?」
「ええ、完璧ですよ。完璧に浮いてましたよ。なぜに岩風呂で段ボールに隠れてんですか」
「鉄板だから」
場所を選びなさいよ……。
「そんなのよりも光学迷彩ですよ」
「いいや、ここは鉄板の段ボールだ」
段ボールじゃねえよ!
いい歳こいて、覗く事への罪悪感はないんだな。伝説の兵士なのに。
実際、エロいところもありますけども。
大体がなぜ段ボールだと気付かれないと思っている。
「そもそも、段ボールでどうやってこの先を進むんです」
「それはこうやってだな」
――……すげえよ。正にゲッコーだよ。
竹の仕切りをすいすいと登っていってるよ。指の先は吸盤で出来てんのかと問いたいよ。
まあ、段ボールを背負って登る姿は、すげーシュールな絵面だが……。
「降りてください!」
「なんだ?」
なんだ? じゃないよ! 登れるのは凄いけども、段ボールは目立つだろうが!
亀か! あんたは亀なのか! そもそもどうやって背中に段ボールをくっつけてるんだ?
「間違いなく見つかります」
「大丈夫だ」
なぜ言いきれる。
「ベルはゴロ太にご注進だ。いまベルの警戒能力はザルになっているだろう」
確かに、俺たちが仕切り間近でいかがわしいことを実行しようとしているのに、そのやり取りに気付いていない。
本来だったら、【嫌な感じがする】って、直ぐに感づくからな。
「だったら尚更に光学迷彩でしょう」
「ふ~」
なんですか、その嘆息は?
「浪漫が分かっていない。あれを使えば達成感がないだろう」
格好いいことを格好いい声で口にする。
やろうとしている事は覗きというダサい行為なのに。
「注意が愛玩動物に向けられているこの黄金の時間に攻めないでどうする」
正鵠を射ているとは思う。
――――が、この伝説の兵士の発言を信じてもいいものだろうか。
歴戦の英雄。絶対的カリスマ。普段ならば信頼は揺るがない。
しかし……、現在、目の前にいるのはなんだ。
腰に手ぬぐいを巻いて、段ボール背負ってるだけの変態だぞ……。
こんな姿を部下の連中が見た日には、一日で組織が無くなっちまうほどの威厳の無さだ。
マイルドでしっとり。
熱すぎず、ぬるくない適温。
長風呂するのに最適な温泉だ。
心も体も清らかに――――、
「おお、広いですね!」
清らかになると思ったな――――。あれは嘘だ。
まな板の胸を持ちし魔女っ子の声を耳にしたその時――――、俺は光を超えた。
もちろん感覚的にだが。
岩風呂の湯船より、音も立てずに和テイストの竹で作られた仕切りへと移動。
向こう側からはコクリコがキャッキャと有頂天だ。
俺がまな板には興味が無いのは周知の事実。
だが、コクリコがいるという事は――――、
「素晴らしい」
ベルの声が聞こえてくるということだ。
きっと俺は、三日月状の笑みを湛えていることだろう。
脳内では小さな俺が小躍りしている。
「でしょ~」
フフフ――――、シャルナもいるな。当然よな。エルフの美しい裸体も最高であろう。
「ちゃんと体を洗ってからお風呂に入ろうね」
「無論だとも」
ゴロ太の発言に、上機嫌に応えるベル。
ゴロ太め! 羨ましい。
今日ほど転生する時に、愛玩動物に生まれ変わりたいとセラに伝えればよかったと思ったことはないぞ!
羨ましくてたまらないが、ベルに明るさを取り戻させたのでそこは評価しよう。
明るくなった女が仕切りの向こう側にいる。
と、なれば――――だ。俺は十六の男。ここで覗かなければ、男として恥よな!
覗き行為が恥とかそんなくそ真面目な考えなんて、虚空の彼方に消し飛ばしてやる!
しかしよぉ…………、
「…………」
アレはどうなの……。
覗くことも大事だが、それ以上に気になる事があるんだよね。
――――気になる方へと接近。
見下ろしてみても反応はない。
「何してんですか?」
「………………」
――……返事はない。
「やれやれ……」
呆れちまうな――っと!
しっかりと諸手で掴んで、勢いよく持ち上げる。
「!」
「いや……、頭に感嘆符を浮かべたいのは俺ですよ。何してんですかゲッコーさん。それでも伝説の兵士ですか」
「その……、完璧だっただろう?」
「ええ、完璧ですよ。完璧に浮いてましたよ。なぜに岩風呂で段ボールに隠れてんですか」
「鉄板だから」
場所を選びなさいよ……。
「そんなのよりも光学迷彩ですよ」
「いいや、ここは鉄板の段ボールだ」
段ボールじゃねえよ!
いい歳こいて、覗く事への罪悪感はないんだな。伝説の兵士なのに。
実際、エロいところもありますけども。
大体がなぜ段ボールだと気付かれないと思っている。
「そもそも、段ボールでどうやってこの先を進むんです」
「それはこうやってだな」
――……すげえよ。正にゲッコーだよ。
竹の仕切りをすいすいと登っていってるよ。指の先は吸盤で出来てんのかと問いたいよ。
まあ、段ボールを背負って登る姿は、すげーシュールな絵面だが……。
「降りてください!」
「なんだ?」
なんだ? じゃないよ! 登れるのは凄いけども、段ボールは目立つだろうが!
亀か! あんたは亀なのか! そもそもどうやって背中に段ボールをくっつけてるんだ?
「間違いなく見つかります」
「大丈夫だ」
なぜ言いきれる。
「ベルはゴロ太にご注進だ。いまベルの警戒能力はザルになっているだろう」
確かに、俺たちが仕切り間近でいかがわしいことを実行しようとしているのに、そのやり取りに気付いていない。
本来だったら、【嫌な感じがする】って、直ぐに感づくからな。
「だったら尚更に光学迷彩でしょう」
「ふ~」
なんですか、その嘆息は?
「浪漫が分かっていない。あれを使えば達成感がないだろう」
格好いいことを格好いい声で口にする。
やろうとしている事は覗きというダサい行為なのに。
「注意が愛玩動物に向けられているこの黄金の時間に攻めないでどうする」
正鵠を射ているとは思う。
――――が、この伝説の兵士の発言を信じてもいいものだろうか。
歴戦の英雄。絶対的カリスマ。普段ならば信頼は揺るがない。
しかし……、現在、目の前にいるのはなんだ。
腰に手ぬぐいを巻いて、段ボール背負ってるだけの変態だぞ……。
こんな姿を部下の連中が見た日には、一日で組織が無くなっちまうほどの威厳の無さだ。
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