異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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チートがほぼ無い冒険

PHASE-272【堂々と言い切れ。さすれば逃げおおせることも出来る】

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「しかし、随分とコクリコは静かだな」
 ゴロ太を膝に乗せたベルが、いつもなら無駄に目立とうとするコクリコの静けさを不思議がる。

「俺がしっかりと恐怖を植え付けて反省させたからな」
 リオスの町での出立前の夜は、食い意地まる出しの権化だったが、学習したのか、こういう場では調子に乗らないように心がけているようだな。

「そもそも、なぜあんなに怒っていたのだ?」
 訳を知りたいと言うベルに、俺がなぜあそこまで憤慨していたのかという経緯を説明した――――。

「なるほど……。それはいくら何でも度が過ぎたいたずらだ」

「いたずらじゃねえよベル。犯罪だよ」

「確かに悪質な暴行だな」
 倫理観のある中佐殿は、普段はコクリコに優しくても、やはりこういう時は炯眼だ。
 柳眉を逆立て、切れ長の目によってコクリコを睨めば、

「うう……」
 と漏らしながら、コクリコは弱々しく両手をゴニョゴニョと絡めつつ、ばつが悪そうにうつむいて、視線を合わせないように徹していた。

「まあ、これは仕方ないよね」
 シャルナもコクリコにお説教。
 これまた「うう……」と漏らすことしか出来ないコクリコ。
 
 俺からの折檻も受け、ちゃんと倫理ある女性陣にも叱ってもらえる。
 これでコクリコの罪は保留にしておいてやろう。
 洗い流すなんていう、さわやかイケメンのような解決はない。
 保留だ。悪さをすれば、保留分と合わせてのキャリーオーバー式の折檻をするだけだ。

「ですが、トールだって私のお尻を叩くのを大義名分として、いやらしく撫で回したんですよ……」

「「な!?」」
 おい、コクリコ! 何を暗い声音で言ってやがりますかね。
 被害者のような雰囲気を醸し出してるんじゃないよ。

「トール」
 おっと、ここで倫理観に定評のあるベルさんが俺を見てくる。
 今のところは睨みとかではない。
 冤罪の可能性も考えてくれているのか、じっと見るだけで圧はない。出来た女性
である。

 なので――――、

「事実だ」
 と、素直に答える俺は、鷹揚に頷いて自信に満ちた振る舞い。
 継いで、

「叩いた事は事実。だが撫で回してはいない。叩いた後に手をそのまま尻に触れさせていた状態になってた事もあっただろうが、やましい事ではない。まあ、俺は正直エロだ。だが、折檻の最中にそんな事はしない。怒りに支配された中でエロまで考えが及ぶわけがない。更に弁明するなら、俺は体が発達した美人にしか興味がない。それはクレトスの風呂場で、威風堂々と述べたはずだ」
 自信を持って喋々と言い切る。
 
 ――――嘘を――――。

 撫で回したというのは事実だ。正直、怒りよりもエロのテンションの方が遙かに勝ってた。
 未だに俺の右手には、コクリコの尻の感触が残っていると言っても過言ではない。
 実際に、タチアナにはどつかれるし、周囲の面々もどん引きだった。

 だがそれでも、俺は冤罪だと言い切る。真実を織り交ぜることで、この虚言に真実味を増させる。

 俺が発達ボディにしか興味がないと、ベルとシャルナの体を覗くために必死になったことを思い出させる。
 その時、コクリコに対しての俺の木で鼻をくくる応対を思い出してほしいと加えて熱弁してやった。

「分かった……。お前はそういう奴だったな……」

「さいて~」
 半眼の美人二人の呆れ口調。

「そういう目で見られるのは、俺の日頃の行いが悪いからだろうが、今回に関しては冤罪だ。俺が興味があるのは、お前達みたいな体の持ち主だけだ!」
 力説。力説なのである。

「お前は恥ずかしげもなく馬鹿なことを言い切ったな……」
 ベルは半眼から、馬鹿は見たくないとばかりに両目を閉じる。

「言いきれるのは、俺に嘘がないからだ!」
 圧の纏った発言をすれば、流石のベルも体を反らせてしまう。
 俺のエロに対する思いは、無敵の中佐さえ戦くのだ。
 
 ――……まあ、さっきからほぼほぼ嘘しか言ってないけど。
 俺の発言に、美人二人は呆れて頭を抱える。
 
 周囲の男性陣を見れば、先生とワックさんは肩を竦めて苦笑い。
 
 ゴロ太はよく分かっていない。
 
 同志であり、俺とちがい、覗きを成功させたゲッコーさんからは、サムズアップをいただいた。
 だがなぜだろう。疑惑の目でのサムズアップだった。
 おいおい同志。疑っちゃ駄目だよ。
 
 俺は――――、無罪だ。
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