異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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チートがほぼ無い冒険

PHASE-273【執事増殖】

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「まったく、こいつはこんな状況でも嘘をつく。反省していないな!」

「私は嘘などついて――――」

「ええい! 黙れ、黙れ!」
 言わせねえよ。
 大体、俺は撫で回したっていっても、ほんのちょっとだけサワサワしただけだし~。
 叩いた後に、次に叩く位置を定める感じでお尻に沿って、手を動かしたようなもんだ。
 そうやって自分に言い聞かせることにより、俺の行いは正しいことと自らにも暗示をかけていく。
 生まれてくる自信はそこからだ。
 
 威風堂々。この姿を見れば、コクリコは発言を続ける事はなかった。
 こうやって、泣き寝入りする女性がこの世の中に生まれることは嘆かわしい。
 加害者は厳罰に処されるべきだね!
 ま、俺は悪くないけどな。今回のは冤罪ですよ。冤罪。ハハハハ――――。
 
 というか、あれだけの暴行を受けて、お尻ペンペンと豆戦車タンケッテで追い回した程度で許してる時点で、俺は凄く優しい男だよ。
 これが悪い男なら、間違いなく十三歳の貞操は奪われてたからな。
 身籠もってただろうさ!
 よかったな! 尻をサワサワしただけの優しい俺で!

「必死か……お前は……」
 同志ゲッコー。俺の表情から考えを読まないでいただきたい。
 さっきまでは半眼サムズアップだったが、俺の態度から、明らかに黒と判断したゲッコーさんは、呆れ果てた視線を向けてくる。

「お、そうだ! お酒造りはどうなってます?」
 すかさず話を逸らす俺氏。

「ああ……。手探りだが、元々、酵母もあればホップもあるこの世界ではビールは造れる。この世界ではホップの入っていないエールが愛されているようだ。だが、今は王都にエールはない。よって俺がエールを作るわけだな。ホップも入れてビールも造る! フルーティーなエールと、苦味を楽しむビールを俺は造る!」

「頑張ってください。生産できたら俺たちの店に出しましょう」
 熱のこもり方が凄いが、おかげで話は逸らせた。

「もちろんだ」
 二人して笑みを湛えるところに、ベルが先ほどコクリコに向けていた鋭い眼光を俺たちに向けてくる。
 背筋がピンッとなるね。

「普通のお店で出すのだな?」

「…………モチロンソウヨ」

「抑揚がないぞ」
 直ぐに威圧してくるんだからさ。
 俺だってレベル38だぞ。毎度毎度、威圧してきても、今の俺ならそのくらいの圧になら耐えることだって出来るんだぞ。
 耐えることは出来ても、跳ね返すことは不可能だけどな!

「よからぬ事を実行しようとは――――、努々思わぬ事だな」
 ――……前言撤回。
 耐えることも出来ませんでした……。
 
 全力で視線を逸らす事しか出来ない俺。レベル38とかいっても、ベルの場合、実力はカンストしているような存在だからな。
 38とか、勝負にもならねえよ……。

「おっとベルに頼み事があるんだった」

「話題を変えてはぐらかすつもりか」

「そんなんじゃねえよ……」
 怖いから睨まないでいただきたい。

「は、入ってもらって~」
 上擦りながらも言葉尻を伸ばすのは、今からの頼み事が緊張を要しないものだと思わせたいから。

「さあ、どうぞ中へ」
 応接室前で護衛に当たってくれるマイヤがドアを開く。
 心なしか、ほころんだ表情だ。

 誘導をマイヤに頼めば、首肯が返ってくる。
 応接室の中央へと手を向けるマイヤに続いて、

「し、失礼します」

「む!?」
 しゃっちょこばった動作で入室してくる声の主に続いて、ベルが椅子を倒すような勢いで立ち上がる。
 もちろんゴロ太のことをしっかりと抱きしめて。

「これはどういう事なのだ? トール」
 若干だが興奮が含まれたベルの語気。
 入室してきたのは、コルレオン氏につづく大人コボルト達。
 人数は三人。

「王都で頑張ってもらいたくてね。彼らにも大いに励んでもらおうと思ってるんだ」
 元来、働くのが大好きというコボルト。
 大人であっても背格好は子供のような体格なので、愛らしい存在である。
 
 愛らしいのを利用し、王都に到着して早々、ギムロンや他のドワーフ職人に頼んで、ゴロ太の時と同様の執事服を仕立ててもらった。
 
 居並ぶ面々に圧を感じているのか、コルレオン氏同様に、執事服を着用したコボルト達は落ち着きがなく、深呼吸を繰り返している。
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