異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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増やそう経験

PHASE-294【使っていいって言ったのは、そっちだから】

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 観戦していた同志の一部は、すでに飽きているのか屋台で買い物してるんですが……。
 ――……ていうか、なんで修練場に屋台が出来てんだよ! 誰だよ出店してんの! 
 ――――って、ギムロンじゃねえか! 何を焼き芋なんて販売してんだ!
 
 女子が飛びつくヤツじゃねえか。
 
 しかも頼みの綱であるゴロ太や子コボルト達モフモフ族が、焼き芋の魔力に取り憑かれている。
 いつの間にか修練場にいるコクリコと一緒になって、モフモフ族は幸せな可愛い笑みで焼き芋を食っている。
 というか、コクリコは常に食い物の近くにいるな。
 しかし、繁盛してますね! こんな場所で!

「ん?」
 琥珀の瞳を持ちしまな板が今、俺をチラリと見た。
 あ! あいつ今、口元が緩んだ!
 あの嘲笑。
 ――――!? あのまな板! 俺がゴロ太たちを使ってベルを揺さぶっているのを妨害するために、屋台に連れて行ったな!

「よそ見する余裕はないはずだが?」

「くっ……」
 ベルに余裕が戻ってきている。
 ゴロ太たちが俺を応援して、自分を応援しないという状況が払拭されたからか。

「まだまだだな。ピリアなる力を習得したとはいえ、まだ基礎なのだろう。これでは魔王を倒すのは随分と先になりそうだな」

「耳が痛い……」

「決着をつけるか。私もゴロ太たちと焼き芋を食したい」

「心も痛い…………」
 俺と食してもいいじゃん! 終わった後のご褒美をくれ!

「とはいえ、出会った頃に比べて格段に体の動きはよくなった。基礎がしっかりとしているな。何より覚悟を身につけている」
 そうかな? 未だに躊躇を振り切るようにして、刀は振ってるけども。
 まあ、慣れてきたのは確かかな。
 覚悟が身についてきたのかは分からんが、決断は出来るようにはなったんじゃないだろうか。

 こんな状況下でも中佐に褒めてもらえるのは嬉しい。

 付き合いが長くなればなるほど、眼前の凛とした姿だけでなく、ポンコツな姿も見られるようになった。
 普段、目にすることの出来ない姿。
 それが嬉しいような、残念でならないような……。

「いだい!」

「決着をつけるとは言ったが、まだ終わっていないぞ。戦いの中で雑念が入ったな」
 可愛くない蹴りだよ。
 さっきはゴロ太たちが俺に声援を送っただけで、雑念が入りまくりだったくせに。どの口が言っているのやら。

「ほら、打ち返してこい。それとも終わるか?」

「くぅぅぅぅ……」
 この強気な笑みよ! ますます好きになっちゃうよね!
 我が思いを込めた上段からの一撃、届け!

「よい一撃だ。届きはしないがな」
 おう……。その発言は俺の心にダメージをあたえてくるぜ……。

「おりゃ! どりゃ!」
 発言を耳にしての捨て鉢な連撃なのは、自分でも分かっている。

「雑だ!」

「ぎん!」

「さっきから面白い声を上げる」
 これが真剣なら、俺は一体どれだけの命を消費しているんでしょうね。
 オンラインマルチのFPSにて、俺一人でチケットを消耗しているみたいな申し訳ない気持ちを思い出させてくれる。
 
 いかんともしがたい実力差。
 更には俺のギヤマンハートも限界が近い。

「雑なだけでなく、目にも力がなくなってきているぞ」
 ピリア使ってこれだからな。
 もう少しいい勝負が出来ると思っていたんだが……。
 
 まあ、正面切って戦えば俺より遙かに強いカイルが、手も足も出ないでベルにいいようにされていたのは、ついさっきの話。
 いまだ見えることのない遙か高みの存在か……。

「仕方ない。いつも腰にぶら下げている召喚に利用するアイテムを使ってもいいぞ」

「え、マジで!?」

「戦車程度で私を倒すことは出来ないだろうがな」
 いやいや生身で戦車…………いや、ベルならやりかねないな。
 でもそうか、使っていいんだ。
 
 そうなると俺は手段を選ばないぞ。
 使ったからといって、後で卑怯とか言うのは誇り高い軍人として絶対に禁止ね!

「何を……にやついている?」
 おっと、俺の顔はだらしない表情だったようだ。
 ベルがたじろぐほどに――――。
 俺が邪な事を考えていると悟ったようだな。

「使っていいんだよな? 言質とったと思っていいよな! 合意と見てよろしいですね!!」
 無理くそに話を終わらせるようにして、プレイギアをポーチから取り出す。

「…………!? おい! 待て!!」
 いえ、待てません。

「戦車なんか呼ぶわけないじゃん」
 制止に入るベルよりも早く、俺はプレイギアを――――ベルに向ける。
 そう――――、ベルに!
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