異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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増やそう経験

PHASE-314【説得力がある。重みが違う。重みが】

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「いくつ出来るかな~」

「言葉尻を伸ばして上機嫌みたいだし、とりあえず俺の傷も治してくれよな」
 空飛ぶ百足の成体を倒したご褒美に治してもらいたい。
 俺の口の中は未だに痛みが走るし、顎先だってガクガクなんだ。よくもこんな不調な体で戦えたよ。俺は自分を褒めたい。

「やだ」
 これですわ……。なんて心の狭いエルフなのか。

「仕方ねえ、ポーションを使わせてもらうか」
 折角だし、試すという意味でも生成したグレーターポーションが出来上がれば、是非に使ってみたい。

「絶対に駄目! その程度で使わせないよ。瀕死でもないのに。そもそもあれだけ動けたんだから治さなくていいよ。寝れば治るでしょ。若いんだから」
 宿屋で完全回復するRPGじゃないんだからさ。
 
 ――だがまあ、

「いや~説得力あるわ」

「なに? その嫌味な顔」

「若いってところ。すっごく説得力があるよな」
 と、約二千歳をおちょくるスタイル。

「しゃあら!」

「べいっ!?」
 年齢を言えば流石は女性。ベルほどの鋭さと内部に伝わってくるような痛みはないが、中々にいい蹴りを俺の臑に見舞ってくれる……。
 
 まったくどいつもこいつも蹴りばっかしてきやがって! 特に足ばっか狙いやがって!
 職人になってきてるよ! 蹴りを評価するマイスターを習得してるよ!
 ていうか、俺はサッカーボールか!
 ゴム足ポン太郎って改名しようかしら。

 

 採取クエストに赴いた時より増やした痛みを伴って、ギルドハウスに戻ってきた。
 決して、戦いで痛みを伴ったものではない。
 約二千歳の美人BBAが原因だ。
 口には出しませんがね。
 
 ハウス一階の人の数はまばらだ。
 現在は夕方。後ちょっとすれば騒がしいさによって支配されるだろう。――いや、今日はずっと静かなのかな……。
 
 ギルドメンバーや、野良の方々が掲示板に張り出された依頼書に目を通している。
 だが、手には取らない。
 報酬内容が安い物や、期限が長い内容はゆとりを持って受けるってのが多いようで、懐に余裕のある連中は受けないといったところ。
 
 うちのメンバーの位階では、黄色級ブィ以上は見向きもしない依頼のようだ。

「――なになに」
 掲示板を見ている面々の背後から窺えば、即座に道を譲ってくれる。
 ただ見るだけだったからよかったのに。

 ――――やはり残っているのはゴブリン退治や王都近隣のモンスターの駆除。他には王都の下水道にいるグラトニーなるでっかい鼠のモンスター処理に、ダイヒレンの処理。
 新人が受けるやつばかりだ。
 でも、ダイヒレンがいる時点で高難易度にしたいんですが……。
 ダイヒレンを新人さん達が討伐するって凄いね。実際は簡単なんだろうが、凄いよね。
 多分だが、最強の存在ベルが唯一、攻略できない相手だと思う。
 
 ――――掲示板から目を離し、次に目を移す先は受付。
 そこでは獲得した素材から取り分を貰って、それを道具と交換している人もいる。
 小瓶と交換。あれがポーションだな。
 白磁の小瓶をいくつか貰って、割れないように布で厚く巻いてから、雑嚢に収納していた。
 テーブルでは先駆けとばかりに、酒を飲んでる野良のパーティーもいる。
 無事と労をねぎらう静かな乾杯だ。酒が回ってくれば騒がしくなるのかな。
 今日は活気がなさそうだから、少しは騒いでくれるとありがたいね。
 
 応対するコボルトに対して普通に接してくれていることから、野良の間でもベルの威光が抜群に効いているようだ。

「ふぅ」
 おっと、その威光を放つ存在が帰ってきましたね。
 ギルドメンバーの野郎達をボコボコにしたもんだから、うちのギルドは行動不能者が続出。
 先生が激オコなので、ベルが片っ端からクエストをこなしていくはめになっている。

「……お疲れのようで」

「疲れてはいない」
 普通に接してはくれるが、ズキリと痛みが走るぜ……。
 今回の力の行使は、俺の心底にしっかりと恐怖を植え付けたものだったからな。
 ドキドキと心拍数を増やしながら語りかけてしまう。

「まったく! お前が馬鹿をするから」
 継いだ声音は、脱力感が混じっていた。
 自分の不甲斐なさもポロリと口からこぼしている。
 俺の挑発に乗って、感情のままに行動し、過度な行使を実行した事に対して反省している。
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