異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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極東

PHASE-364【シニヨンでもないし、アホ毛もない】

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 騎乗の女騎士の風貌は、青を基調とした生地からなる服の上より、白銀の胸当てとガントレット。
 左腰には柄と柄頭に装飾の入った剣を収めた鞘。長さからしてロングソードだろう。
 
 凜々しくて美しいが、白銀の胸当て部分から考えるに、大差でベルに軍配が上がるな。

「なにか!」
 おっふ。胸元を見ていたのがバレバレである。
 ついさっきまで落ち着きのある語り口だったが、荒いものに変わった。
 ベルからも睨まれてしまう。こんな状況下でも胸に目が行く俺は大物なのか馬鹿なのか。
 自分では前者でいたいが、この場にいる皆は後者を選択するだろうな。

 シャルナとは対照的な濃い金髪に薔薇色そうびいろの瞳。
 長い金髪は、三つ編みをゆるふわにしたような纏めかた。確か、フッシュボーンって名前の髪型だと思う。
 何となくだけど、どこぞの騎士王かホーリーナイトみたいですね。

「それで、どういう状況だ。オルニス」
 女騎士が俺の発言に耳を貸さなかった隊長格に質問している。
 オルニスって名前らしい。ジュリセンでいいよ。
 ジュリセンが恭しくしていることから、この女騎士が団長と呼ばれている存在だろう。
 俺のとこもそうだけど、女が強いな。
 ――――向こうの会話が聞こえてきたが、やはり女騎士のことを団長と言っている。

「――――分かった」
 鷹揚に頷いた団長が俺たちへと接近。
 同時に周囲の兵達が槍を俺たちの方へと構える。

「よせ」
 一言発せば、兵達は構えをとく。
 統率は取れているし、信頼もされてんだな。

「王都から来たと?」

「これ見て」
 団長なら本物か偽物か分かるんじゃないの。
 六花の紋の入ったマントを上から下まで見てくれる。

「このご時世だから、偽物が出ても対処が難しいと思われるが、本物と考えていいだろう」
 ね、分かる人には分かるんですよ。

「だが分からない。貴方方はどうやって瘴気を抜けてきたのか。それを可能とするのは人外の亜人か、魔王軍の者だけのはず」
 自分たちの兵服とは違うベルの軍服のデザインから、訝しい目に変わってしまうが、

「俺たちは別の世界から来た。この世界を救うためにね。この世界の人間じゃないから瘴気の影響を受けないみたいなんだよ」
 以前、先生が行った、カイルや俺たちを使っての人体実験の話を聞かせてやったら、苦笑いが返ってきた。

「俺は勇者としてこの世界にやって来た。ここにいるのは俺が召喚した仲間と、この大陸で仲間になってくれた面々だ」
 とりあえず全員に降車を促す。
 ゲッコーさんだけが降りないのは、不測の事態を考えてだろう。
 なにかあった時は、ハンヴィーでこのまま格子を突き破るって事も考えているのかもしれない。

「ほら見て。賢者とされるハイエルフもいるから。約二千歳の歳がいって!? 痛ってぇぇぇぇ」

「エルフだと若いから!」
 まったく、俺が勇者として立派に立ち振る舞わないといけないのに、尻に蹴りを入れやがって。
 あまりの痛さに飛び跳ねていると、美人騎士団長の目は冷ややかなものに変わる。
 仕方ないよな。尻を蹴られて飛び跳ねる男が勇者だって言っても信じないよね。
 まず俺が信じないもの。

「ま、まあこんなのだが、本当に勇者なのです」
 弁解をするベルも流石に言葉を詰まらせてしまう。

「本当に勇者殿なら申し訳ない発言になりますが、こんなうだつの上がらないのが、ね~」

「ハハ……」
 騎士団長の無礼な発言に、苦笑いで返すしか出来ない俺の情けなさよ。

「その言は正しいですね」
 ――……ベル……。
 身内からも刺されるのは辛いぜ……。

「流石は騎士団長を務めるだけありますね。正鵠を射ています」
 ――……まな板……。
 降車して早々にぶっ刺してくるな……。

 ベルまでは良かったが、お前に言われると本当に怒りがこみ上げてくる。
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