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極東
PHASE-398【会頭の立場、勇者の立場】
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「大丈夫?」
回復を終えたところで、本日、俺たちの世話をしてくれていたメイドさんがランシェルちゃんの背中を優しく擦る。
「こんな事が許されるんですか!」
ついつい感情のまま、メイドさんに質問をしてしまう。
別にこの人が悪いわけじゃない。
第三者が見れば、メイドさんに当たり散らしているようにしか見えないだろう。
はたと我に返り――、
「すみません」
怒りを振り払うように首を左右に振ってから、頭を深く下げた。
「いえ、勇者様の優しさからの怒りです。感謝しかありません」
と、金色の目を柔和な表情と共に俺へと向けてくれた。
「ですが、我々は主に傅く存在。主の為に、私達はこれからも尽くしていくだけです」
言い終えるとメイドさんは、俺以上に頭を下げてくる。
茶髪のポニーテールが顔へとかかるほどに。
体を起こせば、真っ直ぐと俺を見てくるメイドさん。
傅く者として当然とばかりの発言なのか、迷いのない顔つきだった。
この世界では当然なんだろうが、俺が過ごした日本での一般的な生活ではありえない事。
だからこそ、不愉快だけが俺を支配する。
仕置きといってここまでの暴力。こんな事が許されていいはずがない。という考えしか思い浮かばない。
「サニアさん……。着替えてきます。コレでは仕事が出来ません」
目を丸くしてしまう。
ランシェルちゃんの発言が信じられなかったからだ。
こんな状態になっているのに仕事とか。
どれだけ雇い主に痛めつけられても、それでも仕事に従事するとか……。
「まるで奴隷じゃないか」
ポツリとこぼせば、大広間には沈黙の帳が降りる。
なぜ黙るのか。それはランシェルちゃんに、サニアさんと呼ばれたメイドさんもそれを自覚しているからだろう。
それでもサニアさんの先ほどの目力は、逆境の場所であっても、挫けないといった信念を感じさせた。
その力で立ち向かえないのだろうか……。
立ち向かえば環境だって変わるんじゃないだろうか。
納得がいかない俺だったが、片目だけ開いて静観していたゲッコーさんが、いつの間にか俺の背後に立っており、肩を掴んでくる。
肩越しから見たゲッコーさんの目は、これ以上は余計な詮索だ。と、そう伝えているようだった。
王都のための助力も考えないといけない。
人間性がどうであれ、力を持っているのは本当だし、お家事情に首を突っ込むのはよくないんだろう。
会頭の立場としては、助力を得るため、侯爵の勘気に触れないよう、黙っている事しか出来ないのか……。
「……着替えるのなら、俺がついていくよ」
会頭としてではなく、勇者として同行させてもらう。
ランシェルちゃんがまた何かされるかもしれないからな。
俺が側にいれば、侯爵も強くは出られないと考えて行動させてもらう。
今はこの程度のことしか出来ない自分が、情けない。
「ありがとうございます。ですが……」
「いいから。足がまだ震えているよ」
「あれ? あれ……」
「ほら」
さっきみたいに背中を見せる。
二度目という事もあって、ランシェルちゃんは素直に俺におぶさってきた。
「仕方ありませんね。私もついていってあげましょう。邪魔する者は私の魔法でぶっ飛ばしてやります」
普段は空気が読めないが、こういう時はなんとも頼りになる発言をしてくれるのがコクリコだよな。
ぶっ飛ばすって発言は、大事になるから止めてほしいところだが……。
得意げにワンドを振り回し、俺たちの先頭を歩き出す。
俺以上に道に迷いそうだから、先頭は歩いてほしくないと制止。
「ゲッコーさん達は」
「俺とベルとシャルナはここで待機する」
「そうですか」
最近、この三人はなんか俺に隠し事をしているかのような立ち振る舞いだな。
俺が侯爵に助力の話をするって言った時も、乗り気じゃなかったし。
何かしらの事を掴んでいるのは間違いないな。
「なんか隠してますよね?」
ストレートに問えば、
「いや、まったく」
いや、まったく。ってのが、すっごく嘘くさいんですけどね……。
回復を終えたところで、本日、俺たちの世話をしてくれていたメイドさんがランシェルちゃんの背中を優しく擦る。
「こんな事が許されるんですか!」
ついつい感情のまま、メイドさんに質問をしてしまう。
別にこの人が悪いわけじゃない。
第三者が見れば、メイドさんに当たり散らしているようにしか見えないだろう。
はたと我に返り――、
「すみません」
怒りを振り払うように首を左右に振ってから、頭を深く下げた。
「いえ、勇者様の優しさからの怒りです。感謝しかありません」
と、金色の目を柔和な表情と共に俺へと向けてくれた。
「ですが、我々は主に傅く存在。主の為に、私達はこれからも尽くしていくだけです」
言い終えるとメイドさんは、俺以上に頭を下げてくる。
茶髪のポニーテールが顔へとかかるほどに。
体を起こせば、真っ直ぐと俺を見てくるメイドさん。
傅く者として当然とばかりの発言なのか、迷いのない顔つきだった。
この世界では当然なんだろうが、俺が過ごした日本での一般的な生活ではありえない事。
だからこそ、不愉快だけが俺を支配する。
仕置きといってここまでの暴力。こんな事が許されていいはずがない。という考えしか思い浮かばない。
「サニアさん……。着替えてきます。コレでは仕事が出来ません」
目を丸くしてしまう。
ランシェルちゃんの発言が信じられなかったからだ。
こんな状態になっているのに仕事とか。
どれだけ雇い主に痛めつけられても、それでも仕事に従事するとか……。
「まるで奴隷じゃないか」
ポツリとこぼせば、大広間には沈黙の帳が降りる。
なぜ黙るのか。それはランシェルちゃんに、サニアさんと呼ばれたメイドさんもそれを自覚しているからだろう。
それでもサニアさんの先ほどの目力は、逆境の場所であっても、挫けないといった信念を感じさせた。
その力で立ち向かえないのだろうか……。
立ち向かえば環境だって変わるんじゃないだろうか。
納得がいかない俺だったが、片目だけ開いて静観していたゲッコーさんが、いつの間にか俺の背後に立っており、肩を掴んでくる。
肩越しから見たゲッコーさんの目は、これ以上は余計な詮索だ。と、そう伝えているようだった。
王都のための助力も考えないといけない。
人間性がどうであれ、力を持っているのは本当だし、お家事情に首を突っ込むのはよくないんだろう。
会頭の立場としては、助力を得るため、侯爵の勘気に触れないよう、黙っている事しか出来ないのか……。
「……着替えるのなら、俺がついていくよ」
会頭としてではなく、勇者として同行させてもらう。
ランシェルちゃんがまた何かされるかもしれないからな。
俺が側にいれば、侯爵も強くは出られないと考えて行動させてもらう。
今はこの程度のことしか出来ない自分が、情けない。
「ありがとうございます。ですが……」
「いいから。足がまだ震えているよ」
「あれ? あれ……」
「ほら」
さっきみたいに背中を見せる。
二度目という事もあって、ランシェルちゃんは素直に俺におぶさってきた。
「仕方ありませんね。私もついていってあげましょう。邪魔する者は私の魔法でぶっ飛ばしてやります」
普段は空気が読めないが、こういう時はなんとも頼りになる発言をしてくれるのがコクリコだよな。
ぶっ飛ばすって発言は、大事になるから止めてほしいところだが……。
得意げにワンドを振り回し、俺たちの先頭を歩き出す。
俺以上に道に迷いそうだから、先頭は歩いてほしくないと制止。
「ゲッコーさん達は」
「俺とベルとシャルナはここで待機する」
「そうですか」
最近、この三人はなんか俺に隠し事をしているかのような立ち振る舞いだな。
俺が侯爵に助力の話をするって言った時も、乗り気じゃなかったし。
何かしらの事を掴んでいるのは間違いないな。
「なんか隠してますよね?」
ストレートに問えば、
「いや、まったく」
いや、まったく。ってのが、すっごく嘘くさいんですけどね……。
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