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極東
PHASE-443【烏は狡猾な生き物】
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「な、なんなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
離れたところから断末魔と共に、現状を理解できていない翼幻王軍の一体が発狂しながら死んでいく。
大混乱の中で生存していた者たちも、直ぐさま生を奪われ、先に散っていった者達と同じ大地へと落ちていく……。
中には混乱から立ち直った者もいて、魔法障壁を展開している。
正面から迫るミサイルを防ぐことには成功したが、障壁で耐えきったのは一度きり。
衝撃を防げても、爆発の光と爆煙により視界を奪われ、動きが止まったところに、次のミサイルにより体を貫かれ爆発。
飛行に自信がある者は、必死になって蛇行しながら上昇し、反転してのきりもみで振り切ろうとする。
だが超音速から逃げ果せる事は不可能で、数発のミサイルが容赦なく体を貫き爆発を生み出す。
――――俺の周辺では、間断のないミサイル発射音に変化が生じる。
散発へと変わっていき、程なくして鳴りを潜めた。
――……敵の脅威はない。
圧倒的な勝利。
だが、勝利した余韻などはない。
達成感がないからだ。
しじまに支配された周囲の冒険者や兵士たちは今尚、声を発する事がない。
ただ二キロ先の惨状を目にして、立ち尽くすだけ。
手にする鐙が備わったクロスボウは、出番無しとばかりに、だらりと力なく壁上の床の方に向けられていた。
装填されるも活躍の場がなかったボルトの鏃が、虚しく床を捉えている。
「状況終了」
ゲッコーさんの一言に、S級さん達はスティンガー片手に待機状態へと移行。
「ヒュゥゥゥゥゥゥゥ――。チリソースの出来上がりだ!」
「不味そうだけどな」
「辛味なんてない、あるのは鉄の味だ」
笑えないアメリカンジョークみたいなのやめてくれる……。
しかも鉄の味とか、俺の馴染みの味だから容易に想像できる分、本気で吐きそうになる……。
S級さん達のやり取り……。
ミンチとかミートソースはよく聞く台詞だが、チリソースって変化球じゃんよ。
大地に落ちた亡骸を見れば……。
胃袋が決壊しそうだ……。チリソースは当面、口にすることは出来ない。
どのみちこの世界だとチリソースには出会う機会は中々ないだろうし、そもそも日本にいた時から使用はしていなかったけども。
「ああ……」
俺よりも遙かに逞しいコクリコは壁上の縁に立ち、ポージングを崩して悲しげな声を出す。
意気揚々としていたけども、自身が活躍することなく終わるからか、残念がっている。
ゼノとの戦いの時は輝いてたからな。主に素手で。
「さあ、あの待機組はどう動くかな」
咥え煙草と双眼鏡の姿が様になるゲッコーさん。
スティンガーなら待機組の位置にも十分に届く射程を有している。
動き次第ではいつでも撃てると、ブラックなアメリカンジョークを口にしていたS級さん達は、発射筒を手で支えながら立てた状態で待機。
俺もビジョンでクロウスを見つけ、そのまま凝視。
レベル95の存在はどう動く。
周囲の80越えのガーゴイル達を伴って、攻めてくるだろうか。
待機している軍勢の中央に位置するクロウスは、まるでこちらの視線を感じたかのように――、
「視線が合ったぞ」
双眼鏡を覗いたまま、ゲッコーさんがそう言う。
はたして正にで、俺ともしっかりと目があっている。
カラス頭だけど、猛禽類なみの視力なのかな。
「カラスは目がいいからな」
あ、そうなんだ。
毎度、俺の思っていることを口に出して教えてくれるゲッコーさんには感謝。
眺めていれば、先ほど同様に、執事みたいな一礼を俺たちへと向けて行うと反転し、待機していた者たちと共に、ゆったりと余裕ある羽ばたきで去っていく。
「ああいう姿を見せられると、追撃しにくいな」
見せつけてくる余裕が、ゲッコーさんに追撃を止めさせた。
そもそも追撃をするつもりはなかっただろうけど。
追首は恥ってやつだな。
S級さん達は、スティンガーはもう使用しないと判断し、MASADAへと持ち替えて、標準装備となっている。
「あの烏。中々にしたたかだな」
にんまりと笑むと、ゲッコーさんが称賛する。
三爪痕という三つの組織がある以上、互いに競い合い、反目していると考えられる。
これはどの世界の軍隊でも似たようなもの。
もちろん翼幻王の内部でも上に行くために、ライバルを蹴落とすという考えもあるはずだ。
クロウスにとって、血気盛んに攻め立ててきた奴らは、間引きたかった連中だったのかもしれない。
自分たちの手を汚さないことで、組織内で恨みを持たれることなく、競合相手を潰していくという腹積もりを持っていたのかもしれない。
最初から戦いに参加しようとしなかった事と、撤退の早さから、ゲッコーさんはそのように推測。
周囲のS級さん達も、然り。と、肯定。
離れたところから断末魔と共に、現状を理解できていない翼幻王軍の一体が発狂しながら死んでいく。
大混乱の中で生存していた者たちも、直ぐさま生を奪われ、先に散っていった者達と同じ大地へと落ちていく……。
中には混乱から立ち直った者もいて、魔法障壁を展開している。
正面から迫るミサイルを防ぐことには成功したが、障壁で耐えきったのは一度きり。
衝撃を防げても、爆発の光と爆煙により視界を奪われ、動きが止まったところに、次のミサイルにより体を貫かれ爆発。
飛行に自信がある者は、必死になって蛇行しながら上昇し、反転してのきりもみで振り切ろうとする。
だが超音速から逃げ果せる事は不可能で、数発のミサイルが容赦なく体を貫き爆発を生み出す。
――――俺の周辺では、間断のないミサイル発射音に変化が生じる。
散発へと変わっていき、程なくして鳴りを潜めた。
――……敵の脅威はない。
圧倒的な勝利。
だが、勝利した余韻などはない。
達成感がないからだ。
しじまに支配された周囲の冒険者や兵士たちは今尚、声を発する事がない。
ただ二キロ先の惨状を目にして、立ち尽くすだけ。
手にする鐙が備わったクロスボウは、出番無しとばかりに、だらりと力なく壁上の床の方に向けられていた。
装填されるも活躍の場がなかったボルトの鏃が、虚しく床を捉えている。
「状況終了」
ゲッコーさんの一言に、S級さん達はスティンガー片手に待機状態へと移行。
「ヒュゥゥゥゥゥゥゥ――。チリソースの出来上がりだ!」
「不味そうだけどな」
「辛味なんてない、あるのは鉄の味だ」
笑えないアメリカンジョークみたいなのやめてくれる……。
しかも鉄の味とか、俺の馴染みの味だから容易に想像できる分、本気で吐きそうになる……。
S級さん達のやり取り……。
ミンチとかミートソースはよく聞く台詞だが、チリソースって変化球じゃんよ。
大地に落ちた亡骸を見れば……。
胃袋が決壊しそうだ……。チリソースは当面、口にすることは出来ない。
どのみちこの世界だとチリソースには出会う機会は中々ないだろうし、そもそも日本にいた時から使用はしていなかったけども。
「ああ……」
俺よりも遙かに逞しいコクリコは壁上の縁に立ち、ポージングを崩して悲しげな声を出す。
意気揚々としていたけども、自身が活躍することなく終わるからか、残念がっている。
ゼノとの戦いの時は輝いてたからな。主に素手で。
「さあ、あの待機組はどう動くかな」
咥え煙草と双眼鏡の姿が様になるゲッコーさん。
スティンガーなら待機組の位置にも十分に届く射程を有している。
動き次第ではいつでも撃てると、ブラックなアメリカンジョークを口にしていたS級さん達は、発射筒を手で支えながら立てた状態で待機。
俺もビジョンでクロウスを見つけ、そのまま凝視。
レベル95の存在はどう動く。
周囲の80越えのガーゴイル達を伴って、攻めてくるだろうか。
待機している軍勢の中央に位置するクロウスは、まるでこちらの視線を感じたかのように――、
「視線が合ったぞ」
双眼鏡を覗いたまま、ゲッコーさんがそう言う。
はたして正にで、俺ともしっかりと目があっている。
カラス頭だけど、猛禽類なみの視力なのかな。
「カラスは目がいいからな」
あ、そうなんだ。
毎度、俺の思っていることを口に出して教えてくれるゲッコーさんには感謝。
眺めていれば、先ほど同様に、執事みたいな一礼を俺たちへと向けて行うと反転し、待機していた者たちと共に、ゆったりと余裕ある羽ばたきで去っていく。
「ああいう姿を見せられると、追撃しにくいな」
見せつけてくる余裕が、ゲッコーさんに追撃を止めさせた。
そもそも追撃をするつもりはなかっただろうけど。
追首は恥ってやつだな。
S級さん達は、スティンガーはもう使用しないと判断し、MASADAへと持ち替えて、標準装備となっている。
「あの烏。中々にしたたかだな」
にんまりと笑むと、ゲッコーさんが称賛する。
三爪痕という三つの組織がある以上、互いに競い合い、反目していると考えられる。
これはどの世界の軍隊でも似たようなもの。
もちろん翼幻王の内部でも上に行くために、ライバルを蹴落とすという考えもあるはずだ。
クロウスにとって、血気盛んに攻め立ててきた奴らは、間引きたかった連中だったのかもしれない。
自分たちの手を汚さないことで、組織内で恨みを持たれることなく、競合相手を潰していくという腹積もりを持っていたのかもしれない。
最初から戦いに参加しようとしなかった事と、撤退の早さから、ゲッコーさんはそのように推測。
周囲のS級さん達も、然り。と、肯定。
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