異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
453 / 1,861
極東

PHASE-453【基本、女性陣はいつもやる気】

しおりを挟む
「ちなみに、現魔王であるスライムのショゴスって、どのくらい強いのですか?」
 誰もが知っておきたい敵戦力。コクリコが質問すれば、コトネさんは分からないと首を左右に振りながら返してくる。
 現在進行で捕食にて強化しているというのは、説明にもあったからな。
 弱体化する事だけはないというのが、共通認識だ。

 コトネさんが理解している範疇では、四大聖龍リゾーマタドラゴンを自身の力で封じることが出来るだけの力は有しているということ。
 これは支配されていた火龍を目にした俺たちも分かること。
 これに加えて、聖龍たちの力も奪っていると考えていいそうだ。
 
 前魔王同様に、奪うだけで捕食しないのは、自身の体の一部を聖龍へと埋め込むことで精神支配をし、聖龍が有するプラスの力をマイナスへと変換することで、ショゴスが発生させていた瘴気の肩代わりを聖龍に行わせ、瘴気放出から解放されたショゴスは、自身の強化に専念していると考えられる。

 火龍が封じられていた場所は濃密な瘴気に覆われていたわけだが、あれはショゴスが火龍の力をマイナスにした状態だったんだな。
 ガスマスクを付けていたコクリコが、中心に進まなくても気分が悪いと言い出すくらいに濃かったからな。
 
 瘴気発生器として、神のような存在である四大聖龍リゾーマタドラゴンを利用する。とんでもないスライムだな。

「火龍の頭部に埋め込まれた黒いクリスタルがショゴスの一部って事だったんでしょうか?」

「そうです。それこそショゴスの一部です。火龍様は救い出されましたが、他の聖龍様たちは今も尚、それにより支配を受けています」

「なるほど……」
 火龍からも聞かされてはいたが、やはりと思えば返す声も重くなる。
 
 結界を解除する鍵となる前魔王を救い出し、ショゴスの一部を破壊して地龍を救わなければならないけど、支配されている状態だから、救うまでの工程で地龍との戦闘は当然、発生する。
 しかもそれを敵の拠点である魔大陸で、しかも敵要塞内で実行するわけか…………。
 救い出しても逃げ果せる事が可能なのだろうか?
 瘴気だって俺たちのいる大陸以上かもしれない、むしろ大陸全体が瘴気に覆い尽くされている可能性だってある。

 ――……ふぅ……。

「今回は、コクリコとシャルナは――――」

「もちろん行きますとも! ええ、行きますとも!」
 なんて元気な声なんでしょう。
 捏造の歴史を書き綴りたいんだね~。
 まな板は何ともお気楽だ。
 この世界の人間が瘴気を吸入すると、気分が悪くなって、最終的に凶暴化するってのを分かってて言っているのかな? 

「もちろん私も協力するよ。勇者のパーティーに加入している時点で、危険な展開は受けて立つってね」
 コクリコと同様に胸を反らして自信を漲らせるシャルナ。
 違うところがあるとするなら、胸のサイズだな。
 敵のど真ん中だってのに、この強気よ。シャルナはハイエルフで魔法も強力なのを使えるわけだが、コクリコはな~……。

「よく言ったぞ二人とも! 頼りにしている」
 ちょっとだけ炎が復活したチートさんは端っから行く気満々だし、連れて行く気満々。

「どのみち攻略をしなければならないのですからね。早い内に行動するのも良いでしょう」
 と、先生。
 魔大陸は瘴気が充満している時点で、この世界の人間達では攻略は不可能だ。
 どれだけ精兵を整えても、進行できないな地点。
 先生の言うように早い方がいいのかもな。
 後は俺の心の準備が整えばいいだけってところか。

「あの、瘴気のことを気にしているようですが、そこまでの心配はありません」
 コトネさんの説明では、瘴気は外側――つまりはこちらの大陸に向かって放出しているものであり、魔大陸には瘴気はあるにはあるが、こちらの大陸ほどではないらしい。
 それでも地龍が発生させている瘴気は、ラッテンバウル要塞一帯に蔓延しているので、そこからは大変だということだ。
 
 結局、瘴気が少ないといっても、要塞周辺がそうなら、こっちの兵を送り込んでも意味は無い。
 良くて陽動要員だろうが、兵站も確保できない大陸で、陽動を行うのは死を覚悟しての行動だろう。
 こっちの大陸だってまだゴタゴタしているからな。そもそも派兵自体が難しい。
 結局は少数精鋭になるのかな。
 
「さて、今後の活動も大体まとまってきたようですので、私も王都へと戻りたいと考えていますが、どうすれば良いでしょうか?」
 あ、そうか。どうしよう。王都まで戻ってもらうことを考えていなかった。
 プレイギアで操作する乗り物と違って、実際に運転するものは燃料がかかる使用なんだよな。
 流石にここから王都までってなると、ガソリンが持たないだろうし。

「考えていなかったようですね」

「すみません……」
 ゆったりと馬車で帰るというわけにもいかないし、

「侯爵様にお願いしましょう」
 妙案があるとコトネさん。

 ――――侯爵へと会いに行けば、いまはメイドさん達が周囲にいないからか、淋しそうにベッドで寝ていた。
 コトネさんの入室が分かれば大いに喜び、その後ろを付いてきた俺たちと目が合えば、嘘くさい咳と共に居住まいを正す。
 ゼノと侯爵は女好き。
 こういうのが体を乗っ取られた原因に繋がったと再認識だ。

「どうされました勇者殿」

「侯爵様にお願いがあります」
 深々と典雅にコトネさんが頭を下げれば、言いたいことがあるなら言いなさいと、優しい口調で手をコトネさんへと向ける。

「ワイバーンをお貸しください」

「ワイバーン?」

「ワイバーン!?」
 前者はなぜにワイバーンを借りたいのかという侯爵。
 後者は、ワイバーンというファンタジーでは竜騎士が騎乗するのでお馴染みのドラゴンの存在に、興奮してしまった俺の声。
 
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...