異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
525 / 1,861
レティアラ大陸

PHASE-525【この面子は最強】

しおりを挟む
「やだ。乗りたくない……」

「何が気に入らない。この雄々しいデザインはよいものだろう?」

「よいどうこうじゃなくて、こんなもんに乗って似合うのは、秘孔の位置が全て逆な聖帝様だけだよ!」

「聖帝とは誰だか分からないが、勇者と同等のような称号ではないか。ならば問題なかろう」
 ありありだよ。恥ずかしいよ。

「普通の鞍でお願いします」

「そうか……」
 残念がらないでほしい。
 ――――左右の角のデザインが消え去って、けばけばしい輝きも鳴りを潜め、落ち着きのある黒色に変わり、見た目が普通になった。
 鞍と例えるより、背もたれがしっかりとある椅子のままではあるが、だるい体を預けられる背もたれの存在はありがたい。
 地龍は角を上手く利用して俺の体を持ち上げれば、器用に椅子へと座らせてくれる。
 落ち着いて腰を降ろしたところにリズベッドが回復魔法を唱えてくれた。
 脱力以外にも、ブーステッドで無理に体を酷使しているから、その回復のためだ。

「ついでだ、魔王も乗るといい」
 半長靴のサイズが合っていないことを悟り、優しさを見せる地龍。

「いえ、私は自らの足で」
 俺としては美少女と共に聖龍に乗る姿が、勇者っぽくて様になると思っているんだけども。
 長い間、封じられていたから、自身の足で歩きたいという思いが強いそうだ。
 決して、俺と一緒なのが嫌だという事ではない。

 ――――地龍が封じられていた地下施設という名の地底湖を後にする。
 ここからは救出成功で弛緩した神経を研ぎ澄まさないといけない。

「指令の仇だ!」

「絶対にここより出すな! 全員でかかるぞ」
 当然の如く、デスベアラーと戦闘を繰り広げた室内には、レッドキャップスをはじめ、護衛軍がわんさかと大挙している。
 スペースがないのか、柱にしがみついたり、柱に埋め込まれたクリスタルの上に立ち、クロスボウや弓を手にする者達。
 鈴生りの状態で鏃をこちらへと向けていた。

「これはなんとも大勢力だ」
 不敵な笑みを浮かべるベル。
 本来の力なら、レイピアを横に一振りするだけで敵を壊滅させられるだけの力を有しているけども、現在はそうはいかない。
 だが、眼前の光景を目にしても驚異と思っていないことは、湛えた笑みで理解できる。

「ちゃっちゃとやろうか」
 更にもう一人余裕なのは、言わずもがなゲッコーさん。
 再び、一人で面制圧できるもん。であるAA-12が猛威を振るいそうだ。

「流石に多いような……」

「大丈夫だよ。コクリコなら出来るさ」

「地龍に騎乗し、やる気のなさそうな姿勢の人に言われてもね」
 集団なんだから、アークディフュージョンやライトニングスネークを唱えればなんとかなるさ。

「不思議とこの面子なら負ける気はしないよね」
 シャルナはチート二人ほどじゃないけど、表情は強張らず、余裕だ。
 リズベッドを遮るようにして立つランシェルは、眼光を鋭くさせ、口を一文字に結び、ナックルダスターを両拳にはめて構える。

「なめたまねを! この状況で挑むつもりか!」
 相対する方向の先頭に立つレッドキャップスのオーガが吠える。
 手にした三メートルはありそうな大きなメイスを苛立ちと威嚇を混ぜて床に叩き付ける。
 叩き付けを合図とし、集団は戦闘態勢。
 穂先と剣先がしっかりと俺たちに向けられ、鏃も標的を捉え直す動きをしていた。
 魔法を使用する者達は、スタッフやワンドの先端を向けてくる。

「一斉射を実行されればたまらんな」
 発言の内容は驚異だけど、声音はまったく驚異と思っていないゲッコーさん。
 先手必勝とばかりに、32発が装填されたドラムマガジンを備えたAA-12を容赦なく発射する。
 こちらがまず、一人による一斉射。

「障壁」
 オーガの発する言葉に魔道師系が障壁を展開し、更には盾持ちが壁を思わせる横隊。
 だが、障壁の間に合わなかった箇所は散弾の雨によってバタバタと倒れ、穴が空いた箇所に、ゲッコーさんは追加で散弾を撃ち込んでいく。
 でもって、

「そら」
 手に握ったグレネードをその穴部分に投擲すれば、上手い具合に陣形を組んでいる中央に落ち、程なくして爆発。
 爆発と破片によって阿鼻叫喚がその場所より上がり、

「……ええい! やれ!」
 一人に言い様にされている事に呆気にとられていたオーガが指示を出せば、遠距離攻撃を一斉に仕掛けてくる。
 多彩な魔法と矢が飛んでくるけども、

「ここは私が」
 ランシェルの後ろにいたリズベッドがランシェルの前へと一歩出て、迫る攻撃に両手を向ければ、地龍戦で活躍した魔法障壁が現出。

 単身で向こうの陣営が顕現させた障壁を凌駕するものを展開。
 正面だけでなく頭上から迫ってくる攻撃に対しても、半透明の不落の壁は、その悉くを防いでいく。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...