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レティアラ大陸
PHASE-545【あれに見えるは人々の住む大陸】
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「――――おい」
「……ん?」
「起きようか」
「ふぁい……」
「意外とすんなり起きたな」
目を開ければ夕陽が海へと沈む光景。優しい光だけども目を開けたばかりの俺にはきつすぎる光だ。
とっさに手で目を覆いつつ半眼になり、声の主へと目を向ければ、ベルが立っていた。
「こんな所で寝ていたら風邪をひくぞ」
「ええっと? ランシェルか?」
「は?」
よしよし現実だな。ランシェルのありがた迷惑な夢の中じゃないようだ。
なぜ自分をランシェルと間違えたのかと怪訝な表情に変わるベルだったが、あえてそこは伏せておく。
「アルスン老から聞いたぞ」
俺が新たな力を習得したということに満足げ。
会得は簡単だったけど、その後の能力使用テストで翁といい勝負をしたから、楽して覚えたわけではないので許していただきたい。
「どうだ。新たな力は?」
「おお、いいぞ。身体能力が倍になるようなもんだから、残火の剣術だけでなく、拳打である烈火も威力が上がる。悪漢程度なら素手で対処出来るだろうな」
「そうかそうか」
俺の成長を部下の成長とばかりに喜ぶベル。
「ならば――」
「いや、いいよ! まじで! 試し合いは! うん。夜になるし、操艦に集中しないといけない時間帯だから」
「そうか。それは残念だ」
いや、俺の敗北する未来しかないから。ベルとの模擬戦イベントでは、必ずズタボロになって負ける敗北者じゃけェ。
というか、腕試し以外のイベントがあってもいいじゃないか。
これを拒んだことで好感度が落ちるって事はないだろうけど。今回は体力が本当にもっていかれたからな。この辺はベルだって理解してくれているはず。
申し訳ないけど、腕試しはまた後日。
もちろん口にはしないけど。後日とか言ってしまうと、近いうちベルと戦わないといけなくなりそうだからな。
「しかし、今回はよくやったな」
「誰も倒れることなく地龍を救えたのは本当によかったよ」
「そうだな」
「火龍の時は無理させたからな」
「私が無理しなくていいくらいには、お前も成長しているということだな」
何という優しい笑み。夕陽に当てられた柔和な笑みは、俺の心を一撃で射抜くね。
腕試しではなく、こういったまったりと二人で時間を過ごすイベントをもっとください。
「さて、腕試しはまた今度だな。私は子供たちを寝かせてくる」
「……ああ」
だから、まったりイベントをください……。
腕試しがないなら即イベント終了とか。酷いですよね。
「…………本当に、淋しいもんだ」
「何がだ?」
露天艦橋にて、夜空の下ミズーリを操る俺の横では、昼間同様にゲッコーさんと地龍が周辺警戒をしてくれる。
「ハハハ……」
ゲッコーさんの問いに乾いた笑いで返す。
「まあ、華やかではないからな」
しっかりと現状を理解してくれたようだ。
ハーレムとはまではいかなくても、せめて女性枠がほしいところだよ。
横から温かいお茶を出してくれたりさ――――。
「皆様お疲れ様です。温かいお茶をご用意いたしました。地龍様も飲まれますか」
「いただこう。もちろんカップでな。皿でなくていい」
闇夜に溶け込まない紫色の髪に、闇夜に妖艶に輝く黄色い瞳。
女性枠を欲しいと願ったけども、男の娘メイドは頼んでないよ神様……。
柔らかい笑みを湛えながら注いでくれるランシェルの紅茶は、とてもおいしかった。
本当に女の子でないのが悔やまれる。
残念な気持ちになりつつも、地龍が蔦を上手く利用して、カップに入った紅茶を飲んでいるのは見事だった。
皿を全力で回避したのは、ペット的なイメージを俺たちに与えたくないからだろうな。
「こんなにも速くに到着できるのだな」
船旅も終わりに近づく。
ミズーリを襲う気概ある海のモンスターはおらず、何事もなく到着しそうだ。
視界には陸地が見えてきた。お久しぶりの人間が住むカルディア大陸だ。
甲板ではガルム氏が俺の横で驚いてくれる。
船であるのに、集落以上の生活環境。
潤沢な食事と寝室。抜群のコンディションで上陸を迎えることが出来ると鋭い犬歯を覗かせながら笑ってくれる。
ちょっと怖かった……。
俺たちが出航した浜辺が見えたところで、地龍とリズベッドによる魔法にて皆して空を飛ぶ。
ゾディアック君が息をしないという可哀想な状況だったが、便利な方に依存してしまうのが人間の性ってやつだな。
「相変わらず空気は澄んでいますね」
コクリコの深呼吸に俺も続く。
「この地には瘴気の脅威がないのだな」
「まあね。南北に走る山脈のおかげなんだよ」
「ああ、カンクトス山脈か」
納得したのか、鷹揚に頷く地龍。
豊かな土地だから、ここにいるだけの人数を世話するくらい、侯爵ならわけないだろう。
お願いすればちょっとした規模の土地を快く提供してもくれるはず。
そうなれば皆さん集落以上の生活が出来るはずだ。
「まずはドヌクトスへと帰還しよう。もう一つの目的があるからな」
「可能な限りやってみます」
要塞から、そして大陸から脱出し、一段落つけた航海中にリズベッドには姫の現状を伝えた。
まずは見てみないと分からないということだったが、最善は尽くすと約束してくれた。
マナに関してはこの世界でもチートクラス――ショゴスに奪われる前までだけど。それでも楽観的に考えてもここは問題ないと思いたい。
いくら高位のアンデッドであるヴァンパイアのゼノの呪いとはいえ、リズベッドなら呪解を成功させてくれるだろう。
「……ん?」
「起きようか」
「ふぁい……」
「意外とすんなり起きたな」
目を開ければ夕陽が海へと沈む光景。優しい光だけども目を開けたばかりの俺にはきつすぎる光だ。
とっさに手で目を覆いつつ半眼になり、声の主へと目を向ければ、ベルが立っていた。
「こんな所で寝ていたら風邪をひくぞ」
「ええっと? ランシェルか?」
「は?」
よしよし現実だな。ランシェルのありがた迷惑な夢の中じゃないようだ。
なぜ自分をランシェルと間違えたのかと怪訝な表情に変わるベルだったが、あえてそこは伏せておく。
「アルスン老から聞いたぞ」
俺が新たな力を習得したということに満足げ。
会得は簡単だったけど、その後の能力使用テストで翁といい勝負をしたから、楽して覚えたわけではないので許していただきたい。
「どうだ。新たな力は?」
「おお、いいぞ。身体能力が倍になるようなもんだから、残火の剣術だけでなく、拳打である烈火も威力が上がる。悪漢程度なら素手で対処出来るだろうな」
「そうかそうか」
俺の成長を部下の成長とばかりに喜ぶベル。
「ならば――」
「いや、いいよ! まじで! 試し合いは! うん。夜になるし、操艦に集中しないといけない時間帯だから」
「そうか。それは残念だ」
いや、俺の敗北する未来しかないから。ベルとの模擬戦イベントでは、必ずズタボロになって負ける敗北者じゃけェ。
というか、腕試し以外のイベントがあってもいいじゃないか。
これを拒んだことで好感度が落ちるって事はないだろうけど。今回は体力が本当にもっていかれたからな。この辺はベルだって理解してくれているはず。
申し訳ないけど、腕試しはまた後日。
もちろん口にはしないけど。後日とか言ってしまうと、近いうちベルと戦わないといけなくなりそうだからな。
「しかし、今回はよくやったな」
「誰も倒れることなく地龍を救えたのは本当によかったよ」
「そうだな」
「火龍の時は無理させたからな」
「私が無理しなくていいくらいには、お前も成長しているということだな」
何という優しい笑み。夕陽に当てられた柔和な笑みは、俺の心を一撃で射抜くね。
腕試しではなく、こういったまったりと二人で時間を過ごすイベントをもっとください。
「さて、腕試しはまた今度だな。私は子供たちを寝かせてくる」
「……ああ」
だから、まったりイベントをください……。
腕試しがないなら即イベント終了とか。酷いですよね。
「…………本当に、淋しいもんだ」
「何がだ?」
露天艦橋にて、夜空の下ミズーリを操る俺の横では、昼間同様にゲッコーさんと地龍が周辺警戒をしてくれる。
「ハハハ……」
ゲッコーさんの問いに乾いた笑いで返す。
「まあ、華やかではないからな」
しっかりと現状を理解してくれたようだ。
ハーレムとはまではいかなくても、せめて女性枠がほしいところだよ。
横から温かいお茶を出してくれたりさ――――。
「皆様お疲れ様です。温かいお茶をご用意いたしました。地龍様も飲まれますか」
「いただこう。もちろんカップでな。皿でなくていい」
闇夜に溶け込まない紫色の髪に、闇夜に妖艶に輝く黄色い瞳。
女性枠を欲しいと願ったけども、男の娘メイドは頼んでないよ神様……。
柔らかい笑みを湛えながら注いでくれるランシェルの紅茶は、とてもおいしかった。
本当に女の子でないのが悔やまれる。
残念な気持ちになりつつも、地龍が蔦を上手く利用して、カップに入った紅茶を飲んでいるのは見事だった。
皿を全力で回避したのは、ペット的なイメージを俺たちに与えたくないからだろうな。
「こんなにも速くに到着できるのだな」
船旅も終わりに近づく。
ミズーリを襲う気概ある海のモンスターはおらず、何事もなく到着しそうだ。
視界には陸地が見えてきた。お久しぶりの人間が住むカルディア大陸だ。
甲板ではガルム氏が俺の横で驚いてくれる。
船であるのに、集落以上の生活環境。
潤沢な食事と寝室。抜群のコンディションで上陸を迎えることが出来ると鋭い犬歯を覗かせながら笑ってくれる。
ちょっと怖かった……。
俺たちが出航した浜辺が見えたところで、地龍とリズベッドによる魔法にて皆して空を飛ぶ。
ゾディアック君が息をしないという可哀想な状況だったが、便利な方に依存してしまうのが人間の性ってやつだな。
「相変わらず空気は澄んでいますね」
コクリコの深呼吸に俺も続く。
「この地には瘴気の脅威がないのだな」
「まあね。南北に走る山脈のおかげなんだよ」
「ああ、カンクトス山脈か」
納得したのか、鷹揚に頷く地龍。
豊かな土地だから、ここにいるだけの人数を世話するくらい、侯爵ならわけないだろう。
お願いすればちょっとした規模の土地を快く提供してもくれるはず。
そうなれば皆さん集落以上の生活が出来るはずだ。
「まずはドヌクトスへと帰還しよう。もう一つの目的があるからな」
「可能な限りやってみます」
要塞から、そして大陸から脱出し、一段落つけた航海中にリズベッドには姫の現状を伝えた。
まずは見てみないと分からないということだったが、最善は尽くすと約束してくれた。
マナに関してはこの世界でもチートクラス――ショゴスに奪われる前までだけど。それでも楽観的に考えてもここは問題ないと思いたい。
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