異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
580 / 1,861
死霊魔術師

PHASE-580【強者タイム】

しおりを挟む
 過熱して怒りのままに口から言葉を飛ばすコクリコに対して、ゴーストっ子は笑いながら余裕ある返し。
 どっちが年上か分からん……。
 やりとりが続くから、ゲッコーさんは一服しているし、ベルとシャルナはやり取りを見ているだけ。
 そんな中で、俺はしっかりとプレイギアで調べさせてもらう。
 カメラモードのプレイギアを向ける先は、笑っている幼女。
 被写体は――――幼女。
 ――……これ、警察が見たら一発で職質されるよね……。
 この世界に日本の警察がいないことに感謝しつつ、データに目をやる。

【オムニガル・レイムレース】
【種族・ポルターガイスト】
【レベル78】
【得手・物理完全耐性】
【不得手・魔法】
【属性・戯れ】
 得手の物理完全耐性って……。ここは普通、得意な攻撃方法とか魔法じゃないのか。
 それに偏るくらい圧倒的に物理攻撃に対する耐性を有しているってことか。
 完全耐性って記載されているもんな。
 不得手は魔法。この場合は攻撃魔法を受けた場合のことだよな。魔法自体は使用しているから出来ないって意味ではないだろう。
 弱点が魔法なのは、ゴースト系アンデッドのポルターガイストだからだな。
 聖光魔法なんかが効果絶大だろう。
 属性が戯れってのは現状のやり取りを見れば分かる。
 で、レベルは78。そらコクリコの魔法を容易くかき消すよ。
 にしても名前が特徴的だな。

「え~っと、オムニガル」

「え!? なんでお兄ちゃん私の名前を知ってるの」
 天真爛漫に驚いてくれる。
 鼻息の荒いコクリコの相手は飽きたのか、今度は名前を呼んだ俺に興味津々。
 空中を浮遊しながら俺へと接近。

「ここのトップと話をさせてくれないか」

「やだ」
 おっと即答での拒否。
 でもって――、

「パーティクルティンダー」

「ほう!?」
 接近と同時に、無数のマッチサイズの火が俺の前方から襲いかかってくる。
 タチアナが見せてくれたティンダーが、無数となって襲いかかってくる感じ。
 マッチの火くらいしかなくてもそれが無数となれば話は別。
 数の暴力。優勢火力ドクトリンってのが頭に浮かんだ。
 無数の炎に対し、俺のとった行動は、顔を守るように籠手を装備した前腕でピーカブースタイル。
 イグニースを展開するまでではない。

 ドドドドド――――。

 中々に苛烈な音が俺の体に走る。
 衝撃もしっかりと伝わってくる。

「ごめ~ん。痛いよね~」
 謝ってはいるが本気でないのは語調で分かるぞオムニガル。
 君にとっては遊びなんだな。
 火遊びが過ぎるのはよくないけども。
 ケタケタと笑いながらの謝罪。痛みを与える事をなんとも思っていないようだな。
 ――――だがな。

「効かんのだよ!」
 ピーカブースタイルから大仰に大の字の姿勢になって、俺が無傷だというのをしっかりと見せつけてやる。
 どうだい。心の中で物思いにふけりながら攻撃を受け、しかも効かない発言。
 いまの俺って、チート主人公達と肩を並べてもいいくらいじゃないの。
 大抵のチート系って、圧倒的に倒すか、攻撃を受けて全くもって効いていないことに自分自身が驚いたり、効かないと分かっていてあえて受け、相手に力の差を分からせたりするじゃない。
 今回の俺は正にそれ。

「そんな!」
 予想通りに驚いてくれる。
 表情からは笑みが消え、焦燥感に襲われたものに変わっている。
 本当に俺が一切の攻撃を受け付けてないから、戦慄わななきすら見て取れる。
 火龍装備に火炎系が効くわけがないのだよ。
 火炎系と毒系以外だったら全力で防いだけどね!

「さあ、もう一度。ここのトップに会わせて欲しいな」
 強者としての余裕を見せるように、笑みを湛えてからお願いする。
 こうすることで相手にプレッシャーを与える事が出来るというのも、チート主人公達のラノベから教わった。

「ぜ、絶対にやだ!」

「おやおや声を震わせて。そんなに拒絶されても困るんだがね~」
 自然と喋り方にも強者の風格が――、

「変な喋り方だな。止めたほうがいい」
 出ていなかったようだ……。
 ベルという真の強者にズバッと両断されてしまう、俺のエセ強者タイム。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...