異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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死霊魔術師

PHASE-608【俺は耐性持ってない】

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 じんわりと残る痛みを意識から排除して、

「大丈夫か!?」
 とにかく誰でもいいから無事を知りたいと、大音声を発せば、

「問題ない」
 と、直ぐさま俺とは真逆の静かな声で返事をくれたのは、当然ベルだ。
 炎を体に纏わせている状態で俺に近づいてくる。
 炎を纏わせた状態のベルなら、ちょっとやそっとではダメージは入らないだろう。
 現在よりも、より強力な青い炎を使用していた時には、火龍使用の大魔法を防ぎきったからな。

「他の皆は!」
 未だに力の間には光の残滓があり、濃霧の中に佇んでいるような状態。
 近づいてくるベルに俺から駆け寄り問えば、

「どうだろか。邪気は消え去っている」
 ということだった。
 確かに大型スケルトンであるガシャドクロの気配を感じない。
 いくら視界が悪いとはいえ、あれだけの巨体なんだから目立ってもいいんだけどもそれがない。
 やはりリンの範囲魔法によって消え去ったと考えるべきか。
 詠唱とこの状況から、ヘイローシャインは聖光魔法と見ていいだろう。
 アンデッドに対して絶大な威力を誇る魔法だったはず。
 アンデッドがアンチアンデッドの聖光魔法とか。笑えねえよ。
 濃霧のような光の中でベルと背中越しに警戒。
 ――――徐々に鮮明になってくる空間で最初に視認したのは、

「ああ!?」
 真っ先に声を上げたのは俺。
 プロテクションの中でシャルナが両膝を突いた状態。
 半透明のドーム越しにシャルナと目が合えば、わずかに微笑んだと思った瞬間、障壁が消え、術者が力なく倒れかかる。
 床に倒れる前にプロテクションの庇護を受けていたゲッコーさんがしっかりと体を支えてやっていた。
 ベルと共に一足飛びで合流すれば、

「大丈夫なのか!? おい! シャルナ!」

「……トール……うるさい」

「おお……」
 まあ、大丈夫なようだ。
 青ざめた表情は全てを出し切った様子。
 プロテクションであれだけの魔法を防いだんだ。集中によって精神は疲弊したはずだ。
 コクリコが自分のポシェットからハイポーションを取り出し飲ませてあげている。
 疲労が軽減したとしても、シャルナにはもう少し休んでいてもらおう。

「やってくれたもんだ」
 プロテクション内で難を逃れたゲッコーさんの声は低くて怖い。
 俺たちにもしっかりとプレッシャーを与えてくる。
 流石のベルも、普段以上に背筋が伸びる。

「ビシビシとプレッシャーを感じさせるわね。歴戦の戦士さん」
 鋭い眼光で射抜くように睨むゲッコーさんの視線は高い位置に向けられる。
 伝説の兵士の重圧にも意を介さないくらいに胆力のあるリンは、花弁の中で悠々とこちらを――、

「見下してくれる」

「高い位置にいるからね」

「絶対に引きずり出して謝らせてやる!」

「その前にもう一度ヘイローシャインを見舞ってあげる」
 させるわけがねえ。

「ベル」

「分かっている」
 以心伝心なのは嬉しい限り。
 俺たちから離れるベルは、一目散にクリスタルで出来たオベリスクへと駆け出す。

「だからそれはやめて!」
 ここを攻められると弱いのか、リンの声音には本心からの弱気が混ざっていた。

「ベル。徹底的にやってくれ」

「任せろ」
 頼りになる返事。
 煌めく白髪を揺らす背中を一度見てから、

「おりゃ!」
 ベルの背後に伸びる蔓を断ち切ってやる。

「邪魔しないの」

「邪魔するのが当たり前。ベルに気を取られるよりもこっちを相手にした方がいいぞ」

「調子に乗らないことね!」
 ヘイト集めはゲームでもこなしたもんだ。
 狙うなら俺だけを狙え! って、格好つけた発言を口にしてもいいんだろうけど。

「マスター。エンド・オブ・フェイトで決めればいいよ。あのお姉ちゃんには効かないみたいだけど、お兄ちゃんには効きそう」
 それは止めて……。
 折角、立ち向かうっていう気概で漲っているのに、やる気が削がれるような事はされたくない。
 即死系に対抗する装備は俺には無いからな。
 というか、ベル以外は即死系ってどうなるんだ? 俺もだけど、皆、即死耐性の装身具とか所持してないぞ。
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