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ダンジョン何階まで潜れる?

PHASE-653【実験するのもいいかも】

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 九階に続く本命の階段を探す中で、一室だけの空間にあった宝箱の中身が現在、俺が手にするフライパン。
 コクリコが呆れるのも仕方がない。
 わざわざそれっぽい部屋にあった宝箱に入っていたのがフライパンとなれば、暗い感情が芽生えるもんだ。
 俺も一緒の感情。
 これが普通の金属のフライパンなら、ふざけんな! なのだろうけども。こいつは青白くほのかに輝く金属で出来ているんだもの。

 つまりは――、
「間違いなくミスリルで出来たフライパンだな」
 指で弾けばリーンと涼やかな音。
 ミスリル特有の音。

「ミスリルの意味!」

「うん――」
 本当にそう言いたくなるよな。
 ミスリルの無駄遣いだからな。

「でも便利そうじゃないの」

「どこがです。希少鉱物の無駄な使用例の一つとして後世に残すレベルです」
 リンのフォローを一刀のもとに両断するコクリコ。
 それに対して、なぜかリンはおもしろくないといった表情に変わる。
 でもって、なぜか二人が睨み合う展開。

「これの良さが分からないなんてね」

「これの良さが分かる貴女は頭がお花畑ですよ。これだけのミスリル量なら、フライパンなどにせず、ショートソード、メイスやワンドが作れますからね」

「そしたら貴女のワンドも少しはましになるって事かしら」

「ええそうですとも!」
 ――……睨み合いから丁々発止へと移行する二人。
 琥珀と栗色の瞳からバチバチと電撃が走っているようだ。
 なんでリンはここまでムキになる。

「まあまあ、まだ道半ばなんだから慎重に行こうぜ……」
 割って入り距離をとらせるけども、二人とも中々にメンチの切り合いをやめない。
 俺が少しでも立っている位置をずらせば、直ぐさま二人は接近して熱のこもった言い合いを再開する気ビンビン。
 警察二十四時、夜の歓楽街における、泥酔者同士のもめ事の現場みたいである。

「まあ、このミスリルのフライパンも使いようだからな」

「どう使えと! まさか料理ですか!」
 場を鎮めようと口を開けば、飛び火したようで、コクリコが俺に怒気を向けてくる。

「意外と戦闘でも使ったり出来るんだぜ」

「はあ?」

「この形状を見てみろよ。バックラーサイズの盾になるだろ。しかもグリップがあって面が広い。つまりは攻撃が当てやすい」
 ミスリルで出来た、打撃兼防御が可能な攻防一体武器と考えれば使いようが有るじゃないかと説明。
 実際にゲームだと妙に強かったりするアイテムでもあるよな。
 尻部分に装備して相手の銃弾を弾いたりもするし。
 現実だとあり得ない事だけど。

「流石は勇者。分かっているじゃないの。有事はそういった使い方。平時は調理にと幅広いものね」
 喜んでくれて何よりだけど、緊急時って時だけだからな。
 同じような打撃武器なら、俺は今現在携行しているメイスを選択する。

「ぬう」

「そんなぶんむくれるなよ。ほら」

「私が持つのですか」

「接近戦になった場合、ワンドで戦うよりはいいだろ」
 リーチもワンドとさして変わらないしな。
 むしろコクリコ向きだろ。
 防御力に不安があるくせに、無駄に接近戦を好んだりもするからな。
 
 ――――うん。間違いなく強い。
 いま頭内で、コクリコがミスリルフライパンを片手に大立ち回りする姿を想像したら、コクリコ無双だった。

「まあいいでしょう。フライパンであれミスリルですからね。高値で売れるでしょう」

「売るとか信じられない。そのよさを理解しないなんて」
 なんでさっきからリンがこうも突っかかるのか……。
 むしろコクリコよりもムキになっているな。
 普段の上から目線のクールさがない。



「――――ふう」
 腰にフライパンを帯びたコクリコが嘆息。
 流石に戦闘を行いながら、ゲットしたアイテムを上へと続く階段に隣接する通路の近くまで運ぶ作業も面倒くさくなってきた。
 こうなると人海戦術が使いたくなる。リンが人足を召喚してくれれば問題ないけど、協力はしてくれないと言っているしな。

「もっと楽な方法ってないですかね。例えばトールの力で」

「無茶言うなよ。俺の力は、俺が召喚出来るものを出し入れするだけだぞ」
 ストレージデータを利用して召喚するのであって、この世界の物を取り込むということは出来ない。
 そもそもここは通路。俺の所有する乗り物は大きすぎるからな。

「た、たたた例えば……。カ、カッ、カルロ・ヴェ……ヴェローチェとか……」
 声ガクガクじゃねえか。
 どんだけトラウマなんだよ。
 以前、憤怒の遠坂となってC.V.33使用し、コクリコを泣くまで追い回したけども。
 確かにこの狭い通路ならC.V.33の全幅なら問題ないだろう。
 でもアレは二人乗りだから積載量は期待できない。
 
 そもそもワールド・バトルタンクはオートセーブ機能じゃない。
 アイテムを入れてそのままプレイギアに戻し、上書きセーブをしないというミスをした場合、以前のデータが繁栄されるから、アイテムが消滅する可能性がある。
 
 以前のデータで再召還が出来るから、大破なんかの無茶をしても問題ないというメリットの方が大きいけどな。
 となると、またもゲッコーさんのゲームから力を借りるって事になる。
 オートセーブ機能だから、召喚した物にお宝を収納して戻しても消失しない可能性がある。
 まあ、この辺は実験をしないと判断は出来ない。収納可能となれば一気に楽になるのは確かだ。
 ――――試してみる価値はあるな。
 
 だがしかし。
 通路の幅を眺める。
 ハンヴィーやJLTVはこの通路の幅だときつきつだな。
 召喚できる場所が限られる。それだと結局そこにアイテムを集めるという面倒が発生。
 常に俺たちの近くに召喚できるような小型の車両がいい。
 小型で積載量のある車両って何かあるかな。

「ふむん――」
 腕組みして考える。
 で、ちょっとして甦る記憶。
 JLTVはゲッコーさんにとって敵側のマップに出てくるオブジェクトだったが、ゲッコーさんサイド拠点にも、ほどよいサイズの車両がオブジェクトであったな。
 あれなら問題ない。
 ゲーム製作者としては、オブジェクトで前者と後者の資金の差を表現したかったんだろうな。
 もちろん後者のゲッコーさんサイドは余裕がない側。 
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