異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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ダンジョン何階まで潜れる?

PHASE-671【残念な人に向けるような視線はやめろ】

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「見ましたかトール!」

「見たとも! 凄いじゃないか!」

「我が眷属であるミッターとオスカーの力です」
 このダンジョンで手に入れた、タリスマンが埋め込まれたシルバーの装身具を眷属とか言うところは、中二病を拗らせてるコクリコらしい。

 ――――俺もそんな名前をつけた眷属が欲しいな。
 火龍装備にタリスマンは付いているけど、別で欲しいな眷属。

『邪魔が入ったか』

「頼れる仲間だぜ!」
 わずかに焦りの混じった声に対して、ロングソードを振るう。
 増援による高揚からの一振りは、大上段からの全力。
 高揚が手の痺れに勝った最高の一振りだった。
 でも……、

「くそ!」
 如何な名剣であっても、伝説のドラゴンが有する硬質の鱗には通用せず。
 真鍮色の剣身は、鱗の下にある筋肉にまで届くことはない。
 俺の技量はまだまだ未熟。ベルの絶技には遠く及ばない。

「いや……トールは何をしているんです? アホなんですか?」
 ここでコクリコから気の抜けた声。
 しかもアホあつかい。こんなに頑張っているのに!
 この濃霧の中で巨龍相手に一人で戦っていたのに、なんでそんなに気に抜けた声で問いかけてくるんだろうか。
 しかもアホあつかい。ここは大事なところだから二回!
 窮地を救ってくれた感謝は大いにある。でもアホあつかいはどうなんですかね!

「見て分かれよ。激闘だよ」
 
「……はぁ」
 なんだそのさっきから続く間の抜けた声は! でもってなぜに俺を可哀想な目で見ているんだよ!
 現状、巨大なドラゴンと戦っているんだからな! 肩に力が入りすぎるのもよくないが、この状況での弛緩は駄目だぞ。

「おら!」

『ハハハハ、利くものか!』
 ええい! どうやったらこの分厚い鱗の奥にある肉にまで届くのか。
 このままだと、オリハルコンの剣身に傷が付かなくても俺の手がもたない。
 高揚によるアドレナリン分泌だってずっと続くわけないからな。手の痺れが再び勝ってくるのも時間の問題。

 痛痒をまったく感じる事もなく余裕なところは、流石は伝説のドラゴンってところか。
 というか、よく昔の冒険者たちは倒すことが出来たな。
 ミストドラゴンはそこまで強くないって話だけども、オリハルコンのロングソードでも鱗を突破できない時点で絶対に強いだろ。
 
 昔の冒険者たちは、アダマンタイトとか緋緋色金ヒヒイロカネからなる武具防具をパーティー全員が装備していたんだろうか? 
 ばかすかと伝説級の装備が、大量生産可能な黄金時代でもあったのか?

「おら!」

『ハハハ、無駄だ!』

「くそ! もういっち――――」

「ファイヤーボール」

「ぎゃ!?」
 突如として俺の前にて火球が爆発。
 実力向上と、眷属という名のタリスマンによる向上からなる火球――が!

「何してんだよ!」

「何をしているのかと問いたいのは、こっちですよ!」

『面倒くさい小娘が! 邪魔をするな』

「ライトニングスネーク」
 バリバリと電撃の蛇がワンドから顕現。
 今までと違って太くなった電撃が、宙をのたうち回れば、

『チッ』
 と、舌打ち。
 霧の中にある巨影が消える。
 そこでコクリコが俺に合流。

「何だよコクリコ」

「先に謝っておきます」

「――――はい?」

「ふんす!」

「ブフッ!?」
 突如としてコクリコが、俺の頬に平手を叩き付けてくる。
 目から火花が飛ぶ。同時に涙もぶわっと溢れ、玉となってキラキラと横に流れる。

「痛いよ!」

「痛みが有るのはいい事です。まずは良しとしましょう」

「なんだその反省のない発言は! 謝罪プリーズ!」

「先に謝っていますよ」

「確かに!」
 でもなんでビンタだよ。

「トール。周囲を見てください」
 ――…………濃霧ですが。
 見渡す限りの濃霧だよ。念のためにもう一度、見渡したけども、紛う方なき濃霧の世界だよ。
 白い絵の具を水に溶かしたような、十メートル先も分かりづらい視界。
 視程がすこぶる悪い状況で何を見ろというんだ。
 馬鹿にしてんのか!
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