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ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-679【欲する言葉は絶対】
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「ええっと――」
「イルマイユよ」
モジモジとして口を開いてくれないところで、代わりにリンが名乗ってくれる。
「イルマイユか。よろしくな」
「この人、怖くない?」
「私と一緒にいる人間で、私の――そうね、雇い主みたいなものよ。この人のパーティーにお世話になっているの」
「そうです。そしてそのパーティーにて先達の立場であるロードウィザードのコクリコ・シュレンテッドです」
ミストドラゴンのイルマイユ並みに置いてけぼりにしていたコクリコ。
当の本人はどこで入ってこようかとタイミングを見計らっていたようで、ここぞとばかりに無い胸を反らしての名乗り。
長い首をリンの背後から出して覗き込む姿は怪訝なものだった。
「なんか、不愉快なドラゴンですね」
「この人、痛いことするから嫌い……」
「はいはい、怖がらない」
リンがイルマイユを優しく撫でつつなだめる。
そんなやり取りを見つつ、コクリコの口から出てきたのは、
「まあいいでしょう。私を強者として恐れるぶんには愉悦に浸れますからね」
――……すげぇ……。
残念な発言をポジティブに言ったな。
恐れるぶんには愉悦に浸れるって、最低発言な気がする……。
強者の言いようじゃねえ……。
「じゃあ、話を最初に戻して――爪を分けてほしい」
問えば長い首が忙しなく俺とリンを行き来する。
本当に信頼出来る人物なのだろうか? と、リンに問うているようであった。
まだ交渉には早かったかな。
しかたない。
「イルマイユはここには一人でいるのかい?」
優しく語りかけ話題を変える。
「うん……。ボクの仲間は怖い人達に殺されたから……」
別段、俺が実行したわけじゃなく、昔の冒険者たちがやった事だけども、同じ人間として凄く罪悪感が芽生えてしまう……。
「寂しくないのですか?」
と、ここでコクリコも優しく語る。
しかしライトニングスネークを見舞われた恐怖が残っているのか、リンの後ろに素早く頭を隠す。
魔法でのダメージはリンがさっさと治してくれているけども、コクリコに対しては敵対意識や嫌悪感がまだ残っているようだ。
対するコクリコはムキになることもなく肩を竦める程度。
挙動からして完全に自分より幼いと考えたんだろう。
とはいえ、リンと顔見知りで昔の惨劇を経験しているわけだから――、
「五百年は生きてんだな」
「そうね。私と出会った時はまだ生まれたばかりだったけど」
ドラゴンもエルフやドワーフみたいに長命なんだな。
「その間、ずっとここで一人って事か……」
「毎日、コリンズのおじちゃん達が遊んでくれるから一人ぼっちじゃない」
「なるほど」
あのリッチ優しそうだったもんな。
でも、俺たちがミストドラゴンの爪を欲することを伝えた時は、結構なプレッシャーを感じさせてきたからな。
返答次第では俺たちに本気の殺意を向けたかもしれないな。
「こんな所にいるよりも外に出てはどうです」
とのコクリコの質問には全力で拒絶感を表に出す。
怖がっていた対象よりも、発言内容のほうが恐怖を上回ったみたいだ。
人間が巣くう世界に踏み入るのは怖いようだな。
ここから出てしまえば直ぐに命を奪われると思っているんだろう。
――……仕方がないか。霊薬であるエリクシールの素材の一つを担っている存在だしな。
存在が知れれば、欲に駆られて行動する者達も出て来るだろう。
だがしかし――だ。
「俺たちと一緒にいれば大丈夫だと思うけどな」
「思うでは困るのよ」
リンの涼やかな声の中には、冷ややかな氷の刃を思わせるものが含まれており、しっかりと俺の体にその声が刻まれる。
思わず後退りしそうになってしまった。
リンとしては、絶対という発言がないと駄目ってことだろう。
世の中には絶対なんて絶対にないんだけども……。
それでも無理を押し通して、絶対に守るっていう言質が欲しいということなんだろうな。
「イルマイユよ」
モジモジとして口を開いてくれないところで、代わりにリンが名乗ってくれる。
「イルマイユか。よろしくな」
「この人、怖くない?」
「私と一緒にいる人間で、私の――そうね、雇い主みたいなものよ。この人のパーティーにお世話になっているの」
「そうです。そしてそのパーティーにて先達の立場であるロードウィザードのコクリコ・シュレンテッドです」
ミストドラゴンのイルマイユ並みに置いてけぼりにしていたコクリコ。
当の本人はどこで入ってこようかとタイミングを見計らっていたようで、ここぞとばかりに無い胸を反らしての名乗り。
長い首をリンの背後から出して覗き込む姿は怪訝なものだった。
「なんか、不愉快なドラゴンですね」
「この人、痛いことするから嫌い……」
「はいはい、怖がらない」
リンがイルマイユを優しく撫でつつなだめる。
そんなやり取りを見つつ、コクリコの口から出てきたのは、
「まあいいでしょう。私を強者として恐れるぶんには愉悦に浸れますからね」
――……すげぇ……。
残念な発言をポジティブに言ったな。
恐れるぶんには愉悦に浸れるって、最低発言な気がする……。
強者の言いようじゃねえ……。
「じゃあ、話を最初に戻して――爪を分けてほしい」
問えば長い首が忙しなく俺とリンを行き来する。
本当に信頼出来る人物なのだろうか? と、リンに問うているようであった。
まだ交渉には早かったかな。
しかたない。
「イルマイユはここには一人でいるのかい?」
優しく語りかけ話題を変える。
「うん……。ボクの仲間は怖い人達に殺されたから……」
別段、俺が実行したわけじゃなく、昔の冒険者たちがやった事だけども、同じ人間として凄く罪悪感が芽生えてしまう……。
「寂しくないのですか?」
と、ここでコクリコも優しく語る。
しかしライトニングスネークを見舞われた恐怖が残っているのか、リンの後ろに素早く頭を隠す。
魔法でのダメージはリンがさっさと治してくれているけども、コクリコに対しては敵対意識や嫌悪感がまだ残っているようだ。
対するコクリコはムキになることもなく肩を竦める程度。
挙動からして完全に自分より幼いと考えたんだろう。
とはいえ、リンと顔見知りで昔の惨劇を経験しているわけだから――、
「五百年は生きてんだな」
「そうね。私と出会った時はまだ生まれたばかりだったけど」
ドラゴンもエルフやドワーフみたいに長命なんだな。
「その間、ずっとここで一人って事か……」
「毎日、コリンズのおじちゃん達が遊んでくれるから一人ぼっちじゃない」
「なるほど」
あのリッチ優しそうだったもんな。
でも、俺たちがミストドラゴンの爪を欲することを伝えた時は、結構なプレッシャーを感じさせてきたからな。
返答次第では俺たちに本気の殺意を向けたかもしれないな。
「こんな所にいるよりも外に出てはどうです」
とのコクリコの質問には全力で拒絶感を表に出す。
怖がっていた対象よりも、発言内容のほうが恐怖を上回ったみたいだ。
人間が巣くう世界に踏み入るのは怖いようだな。
ここから出てしまえば直ぐに命を奪われると思っているんだろう。
――……仕方がないか。霊薬であるエリクシールの素材の一つを担っている存在だしな。
存在が知れれば、欲に駆られて行動する者達も出て来るだろう。
だがしかし――だ。
「俺たちと一緒にいれば大丈夫だと思うけどな」
「思うでは困るのよ」
リンの涼やかな声の中には、冷ややかな氷の刃を思わせるものが含まれており、しっかりと俺の体にその声が刻まれる。
思わず後退りしそうになってしまった。
リンとしては、絶対という発言がないと駄目ってことだろう。
世の中には絶対なんて絶対にないんだけども……。
それでも無理を押し通して、絶対に守るっていう言質が欲しいということなんだろうな。
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