681 / 1,861
ダンジョン何階まで潜れる?
PHASE-681【これまた庇護欲っ子】
しおりを挟む
「イルマイユは俺たちが全力で守る」
「ふ~ん」
「マジだぞ。俺のギルドで擁護する。危害なんて一切およばないようにする。護衛だってつけるぞ」
「勇者がそこまで言うのだから、守れませんでしたとはならないわよね」
「ならないとも」
とはいえ、常に前線に立たないといけない立場の俺がずっと守るって事も難しい。
王都に戻ったら先生に頼んで、有能な人材を護衛につけてもらおう。
カイルたち古参メンバーの中からが適任だろう。
ゲッコーさんにお願いして、S級さんの中からもお願いしたいね。
S級さんなら一人でも十分な護衛役になってくれるだろう。
「ですが、あまりにも物々しくすると、むしろ何者なのかと視線を浴びることになるでしょうね。ただでさえドラゴンなんですから」
「確かにな。ほどほど。やり手。誠実を兼ね備えた存在から選ぶのが重要だな」
「私からもアンデッドの護衛はつけるからその辺は問題ないわよ。問題は――」
俺たちの視線がイルマイユに注がれる。
このままこの地底湖にいるのもいいだろう。ここなら危害を加える者が現れるってのは外の世界に比べれば確実に少ない。
「ボクは……」
長い首をうつむかせて考え込む。
同族が冒険者に酷い目に遭わされたって事もあるから、人間に対する恐怖心は大きいだろう。イルマイユにとっては決死の選択でもある。
でもこんなところに籠もっていても成長は望めないだろう。
やはり見聞は広めてなんぼだからな。
「ボクは――もっとこの世界を見てみたい。人間は怖いし嫌いだけど、この世界がどうなっているのか、聞かされるだけじゃなくこの目で見たい」
言葉尻は何とも力強い言い様だった。
「じゃあ決まりだな。宜しく頼むよ」
「こちらもだよトール」
ボシュンって大きな音がすれば、イルマイユが白煙に包まれ、次には――、
「……え?」
固まる俺。
まいったな。思考が追っつかないぜ。
さっきまで馬サイズの首の長い白い龍がいたわけだが、突如としてコクリコくらいの身長で角の生えた女の子が出現。
しかも全裸。
「よろしく。トール」
「……」
「固まってないで別の方向を向きなさい!」
「パブッ!?」
リーンと涼やかな音が俺の顔側面から響き、視界が天井へと向く。
コクリコが所持するミスリルフライパンによる下方からの打ち上げによって、強制的に上を見る事になった。
コクリコとの身長差による一撃。下方からの強烈なもの……。
あと少し下の方を打たれたら、顎先へと直撃し、一発KOだっただろう……。
もう殴られるのはゴメンなので、体ごと明後日の方向を向く。
程なくして――、
「まあ、いいでしょう」
リンの声を合図として振り返れば、
「あら可愛らしい。着る子が違うだけでこうも変わるんだな」
急場でコクリコのローブを借りて肌を隠すイルマイユ。
黄色と黒の二色からなるローブ姿は、派手で愛らしいテルテル坊主のようだった。
イルマイユを褒めていれば、持ち主からは、
「このダンジョンでのラストバトルといきますか?」
「いえ、結構」
俺の発言を侮辱と受け取り構えるコクリコ。
青白い輝きで神々しかったミスリルフライパンが禍々しく見えるぜ。
「しかし驚いたぞ。人間みたいになれるんだな。ドラゴニュートっていうんだっけ?」
ゲーム知識だと竜人であるドラゴニュートは、亜人系の中でも最上位に位置する能力を有している。
「ドラゴニュートとは違って、この子は正真正銘のドラゴン。高位のドラゴンは擬人化できる力を有しているものよ」
「へ~」
恥ずかしそうにリンの後ろに隠れて、ひょっこりと顔だけを出している仕草に、リズベッドに負けないくらいの庇護欲を抱いてしまう。
――――尊い。
ドラゴンの時にも同じような事をしていたが、全くの別物だな。
ひょこりと出す髪の色はベルのような白銀で、くせ毛のない長い髪。
ドラゴン時は青色だったが、擬人化すれば瞳の色はオレンジ色に変化している。
黒目はやはりドラゴンだからか、縦長のまま。
で――、
「目を引くね」
ミストドラゴンの時と同様に、片鎌槍のような形状の角が耳の上側から生えている。
髪で隠されているから生え際は分からないけども、角全体は半透明の青いクリスタルで出来ているように美しいものだ。
「ふ~ん」
「マジだぞ。俺のギルドで擁護する。危害なんて一切およばないようにする。護衛だってつけるぞ」
「勇者がそこまで言うのだから、守れませんでしたとはならないわよね」
「ならないとも」
とはいえ、常に前線に立たないといけない立場の俺がずっと守るって事も難しい。
王都に戻ったら先生に頼んで、有能な人材を護衛につけてもらおう。
カイルたち古参メンバーの中からが適任だろう。
ゲッコーさんにお願いして、S級さんの中からもお願いしたいね。
S級さんなら一人でも十分な護衛役になってくれるだろう。
「ですが、あまりにも物々しくすると、むしろ何者なのかと視線を浴びることになるでしょうね。ただでさえドラゴンなんですから」
「確かにな。ほどほど。やり手。誠実を兼ね備えた存在から選ぶのが重要だな」
「私からもアンデッドの護衛はつけるからその辺は問題ないわよ。問題は――」
俺たちの視線がイルマイユに注がれる。
このままこの地底湖にいるのもいいだろう。ここなら危害を加える者が現れるってのは外の世界に比べれば確実に少ない。
「ボクは……」
長い首をうつむかせて考え込む。
同族が冒険者に酷い目に遭わされたって事もあるから、人間に対する恐怖心は大きいだろう。イルマイユにとっては決死の選択でもある。
でもこんなところに籠もっていても成長は望めないだろう。
やはり見聞は広めてなんぼだからな。
「ボクは――もっとこの世界を見てみたい。人間は怖いし嫌いだけど、この世界がどうなっているのか、聞かされるだけじゃなくこの目で見たい」
言葉尻は何とも力強い言い様だった。
「じゃあ決まりだな。宜しく頼むよ」
「こちらもだよトール」
ボシュンって大きな音がすれば、イルマイユが白煙に包まれ、次には――、
「……え?」
固まる俺。
まいったな。思考が追っつかないぜ。
さっきまで馬サイズの首の長い白い龍がいたわけだが、突如としてコクリコくらいの身長で角の生えた女の子が出現。
しかも全裸。
「よろしく。トール」
「……」
「固まってないで別の方向を向きなさい!」
「パブッ!?」
リーンと涼やかな音が俺の顔側面から響き、視界が天井へと向く。
コクリコが所持するミスリルフライパンによる下方からの打ち上げによって、強制的に上を見る事になった。
コクリコとの身長差による一撃。下方からの強烈なもの……。
あと少し下の方を打たれたら、顎先へと直撃し、一発KOだっただろう……。
もう殴られるのはゴメンなので、体ごと明後日の方向を向く。
程なくして――、
「まあ、いいでしょう」
リンの声を合図として振り返れば、
「あら可愛らしい。着る子が違うだけでこうも変わるんだな」
急場でコクリコのローブを借りて肌を隠すイルマイユ。
黄色と黒の二色からなるローブ姿は、派手で愛らしいテルテル坊主のようだった。
イルマイユを褒めていれば、持ち主からは、
「このダンジョンでのラストバトルといきますか?」
「いえ、結構」
俺の発言を侮辱と受け取り構えるコクリコ。
青白い輝きで神々しかったミスリルフライパンが禍々しく見えるぜ。
「しかし驚いたぞ。人間みたいになれるんだな。ドラゴニュートっていうんだっけ?」
ゲーム知識だと竜人であるドラゴニュートは、亜人系の中でも最上位に位置する能力を有している。
「ドラゴニュートとは違って、この子は正真正銘のドラゴン。高位のドラゴンは擬人化できる力を有しているものよ」
「へ~」
恥ずかしそうにリンの後ろに隠れて、ひょっこりと顔だけを出している仕草に、リズベッドに負けないくらいの庇護欲を抱いてしまう。
――――尊い。
ドラゴンの時にも同じような事をしていたが、全くの別物だな。
ひょこりと出す髪の色はベルのような白銀で、くせ毛のない長い髪。
ドラゴン時は青色だったが、擬人化すれば瞳の色はオレンジ色に変化している。
黒目はやはりドラゴンだからか、縦長のまま。
で――、
「目を引くね」
ミストドラゴンの時と同様に、片鎌槍のような形状の角が耳の上側から生えている。
髪で隠されているから生え際は分からないけども、角全体は半透明の青いクリスタルで出来ているように美しいものだ。
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる