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ダンジョン何階まで潜れる?

PHASE-684【巣立ち】

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「さっさと戻りましょう。ドヌクトスの冒険者達に自慢しないと」

「するのかよ!」
 駄目だろうが。そんな事をしたら――、って、イルマイユは俺たちと一緒か。

「いいんじゃないかしら。もうここには用が無いから。一応、まだ宝もあるし。それを目当てに頑張ってもらいましょう」

「は!? 言えよ!」

「大したものじゃないわよ」

「何があったんだ?」
 というか、マッピングは確実に行ったはず。他に何があったのだろう。

「十三階に続く転移魔法陣を一発で当てるところは、勇者としてのラックの高さとかがあるのかしらね~」

「ああ」
 つまりはあそこには十三階以外にも転移する場所があったのか。
 そこには一応、ミスリルのフル装備があったらしい。
 他にもスクロールがいくつかあったそうだ。

「ま、貴方には必要のない装備でしょ」

「俺に必要なくてもギルドメンバーには必要だったんだよな」

「私が昔から集めたり錬成した物を分けてあげるわよ。ギルドメンバーなんだし」

「それは助かる。でも報酬としてな」

「目の前に餌をぶら下げないとやる気が出ないのが、知性の低い生き物だものね~」
 そういう事。

「って、そういう事じゃなかった。うちのメンバーは知性は低くないし気骨ある面子だから。過去の冒険者たちと一緒にしないでくれ。リンも好意的な気持ちになれる奴らばっかりだから」

「そう。まあ貴男や周囲の強者たちを見れば確かにそうなのかもしれないわね」

「そうだぞ。よからぬ事をしたギルドメンバーには、リンが怖がる最強さんであるベルが修正するからな。王都では白髪の美鬼という話があってだな」
 俺が修正第一号なんだけども……。

「なんだか身の毛のよだつ話になりそうだから聞かないことにする。横道にそれたら修正されるというのは理解できたわ。だから貴男のギルドの者達は信頼できるという事も理解した。前言は撤回。餌ではなく頼れる者達に託すと訂正するわね。ただし、託せるだけの実力を有していることが前提だけどね。その為にはやはり――」

「見合うだけのクエストに励んでもらうよ」  
 ギルドのクエストにギルドメンバーが報酬を出すってのも変な話なんだけども。
 それだけ王都の方では何もかもが滞っていたからな。俺たちが頑張って養ってたようなもんだ。という考えは傲慢すぎかな?
 とにかく会頭として、メンバーには良い思いをさせたいってのは正直な気持ちだ。
 リンと侯爵がバックにつけば、ギルドメンバーに質の良い武具防具や装身具が供給できるようになるというもの。

「他にもイルマイユのいた地底湖の湖底にもオリハルコンの塊を置いてたりもしてたのよね。その塊で貴男が装備している一式は作れるくらいの塊が」

「それははっきりと言ってほしかった!」
 ミスリルよりも貴重な物を放置させるなんて。なにを考えてんだよ。
 それだけ自分の手元にオリハルコンを置いてるってことなのか。だったらしっかりと提供してもらいたい。
 というか、

「回収しに戻ろう!」

「まあいいじゃない。そういうのが有った方がここを挑む冒険者たちもやる気が出るでしょ」

「希少鉱物だろに」

「いいじゃないの」
 ふむん。
 ミストドラゴンがいた地底湖ってよりも、湖底に沈むオリハルコンというのが今後の目眩ましにでもなるって事なんだろうか。

「只ではあげないけどね。試練を乗り越えた強者にこそ相応しい物だから」
 てことで、再びディザスターナイトが配置される――てことにはならないらしい。
 流石に冒険者たちがゾンビ兵になるのも忍びないからな。
 リビングアーマーのそこそこ強いクラスを数体配置するそうだ。

「ここの冒険者の質は悪くはないけど、流石にディザスターナイトはきついでしょうからね」
 ここいらの冒険者は基本、素材集めがメインって話だったしな。
 モンスターとの戦いは慣れてるだろうけど、難敵となると苦戦は必至だろうからね。
 実入りはいいようだから、装備はかなりいい物ではあるけど、ディザスターナイトとなると対応は難しいだろうな。

「そんなきつい存在に勝利してしまう我々は凄いと」

「そうね」

「とどめを決めた私は本当に凄いと」

「はいはい」
 リンの肯定に、ふふん! と鼻息。
 コクリコはご満悦になれば、トラックにアイテムを積み込む動きがテキパキとしたものになる。

「――――それにしてもトール」

「なんだ?」

「本当にこれも持っていくのですか」

「嫌だけど、素材として幅広く使用出来て便利だし、金になるってギムロンやクラックリックが言ってたからな」

「私は構いませんがね」
 平然と持ち運べる胆力のあるコクリコには本当に感謝。
 俺は躊躇からはじまって、頑張ってやっとこさ持ち上げることが出来るからな。

「――――じゃあコクリコ。アイテムの見張りを頼む」

「お任せを」
 ビシッとポージングを決めると荷台にヒョイと飛び乗る。
 一応は腰を下ろす部分もあるから長距離には適しているが、固定してないアイテムを管理してもらわないといけないから結構大変だろう。
 揺らさないようにゆっくりと走るか。
 それに――、

「イルマイユもいるから安全運転で行かないとな」
 積み込みも終わり、出発準備が整ったので乗車させようとすれば、イルマイユが湖の方を向く。
 
 そして――、
 
「いってきます」
 と、一言と共に手を振る所作。
 自分が育った場所だもんな。
 そんなイルマイユを優しく見守るリン。
 心が温かくなるね。

 新しい場所へと踏み出そうとする少女をトラックに乗せて、ドヌクトスへと進路を向ける――――。
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