異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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北伐

PHASE-699【皆、優秀】

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 物見櫓から姿を見せたのは革製のブレストプレートを纏った三人。
 プレートの下にはしっかりとしたチェインメイルを装備しているのも分かる。
 でもプレートのデザインに統一性がないので、冒険者だってのは分かるし、何より首からさげた認識票でギルドメンバーだというのも分かった。

「大したもんだ」
 感嘆する。
 三人とも認識票の色は一番下の黒色級ドゥブだ。
 なのにチェインメイルと革製のブレストプレートという駆け出しとしては十分な装備に身を包んでいた。
 一人はカイトシールドも装備しているな。
 形状からして、ダイヒレンの上翅を加工したやつだな。
 ダイヒレン装備は初めて目にするけど、黒光りする盾ってなんか嫌だな……。

「何者かと聞いている!」
 再び発せられた誰何には苛立ちが混じっていた。
 ダイヒレンのカイトシールドの黒光りに表情を歪めてしまったが、その表情が怪しいと思われたようだ。
 新人さん達みたいだけど、よく相手の顔を見ている。

「有能な人材が増えるのはいい事だ」
 うんうんと頷けば、ピィィィィィィィィィっと指笛。
 呼子笛の代わりだな。上手いこと鳴らす。

「怪しい一団、動くなよ!」
 車両なんかを初めて目にすれば怪しいとも思われるよな。
 そんな厳つい車両を見てもおののかない事も素晴らしい。
 弓に矢を番えても弦を引くまでにはいたらない。
 俺がまだ動きを見せないから、新人さん達も警戒レベルを低い状態で維持してくれている。
 いや~。本当に有能だ。

 緊張している新人さん達と違って、俺は嬉しくて笑みを湛えてしまう。
 これ以上、新人さん達を刺激するのはよくないんだけども、未だに構えるまでにいたらないのはしっかりと見極めるためだな。
 流石は先生だ。王都の新しい出入り口となっている木壁部分には新人とはいえ、状況をしっかりと見極めて判断出来る人材を配置している。

「警戒を解いていいぞ」
 うむ、指笛から直ぐだったな。
 迅速に行動できるようになっているね。王都兵も。
 門の向こう側から野太い声が聞こえれば、重厚な音と共に門がゆっくりと開かれる。
 現れたのは、小札の馬甲を纏った軍馬に騎乗するプレートアーマーの騎士が四人。
 四人ともクロスヘルムのバイザーを開いた状態にて素顔を見せてくれる。
 門から橋までくれば下馬して佇立。
 俺が橋を渡り接近したところで片膝をついて仰々しく頭を垂れる。

「やめてくださいよ」

「よくぞお戻りになられました。勇者殿!」
 野太い声の人物が俺へと顔を向けると笑んでいた。
 まるで憧れの存在を見るような敬慕さが伝わってくる。歳は俺よりちょっと上くらいかな。
 俺の事を知っているから、追い詰められていた時から王都で堪え忍んでいた人物だろう。

「快男児。装備が立派になっているね」

「はい! 荀彧様の指示の元、様々なものが機能し発展ておりまして、自分のような者でもこのような装備を与えられています」
 与えられるだけの努力をこなしてきたんだろうね。
 王都から逃げ出さずにずっと戦ってきていた実績だろう。
 先生は末端の兵のことまでしっかりと見通すことが出来るのかな?
 末端の兵をちゃんと評価できる中間管理職的な人材を配置しているんだろうけど。

 フルプレートの騎士を目にすれば、ドヌクトスの装備にも負けてないと思った。
 末端の騎士でこの装備なら、王都内部の市井も大きく変化していると期待できる。
 王都として恥ずかしくない復興。流石は先生というべきだな。
 先生の発言を聞き入れて実行する王様や貴族の方々の有能さも発揮されていると考えるべきか。

 騎士四人に先導されて俺が門を潜れば、そのタイミングを見計らい、

「勇者殿の凱旋である!」
 快男児の騎士が発する。
 物見櫓にいた新米冒険者たちは橋の上の動向を窺い、驚きから目を見開いていたが、しっかりと勇者という単語を耳朶に触れさせた事で更に目が見開かれ、眼窩から今にも目がこぼれ落ちそうになっていた。
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