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北伐
PHASE-700【発展したが活気がない】
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目を大きく見開き、ややあってはたと我に返ると、
「え……あれが勇者様――――ということは……」
「会頭!」
「そうだよ」
見合う三人へフランクに返せば、転げ落ちるような勢いで物見櫓から下りてくる。
「知らなかったとはいえ、ご無礼を!」
「いや、いいよ。むしろしっかりしていて感動したくらいだから」
「副会頭からの指示を忠実にこなしているだけです」
最早、自由を謳歌するはずの冒険者たちって所作じゃない……。
騎士たちみたいに恭しく片膝をついての挨拶。
シークランナーのロイ氏と仲間達のやり取りを目にしているからな。こういうのはちょっと違う気がして淋しくもある。
「今度からは気を付けるのですよ」
突如として俺の横に立ち、発言するのはコクリコ。
先輩風を吹かせているけども、お前と同じ階級だからな。
今回は大活躍だったから、黒から白に認識票の色を昇格させるけども。調子に乗っては駄目だぞ。
なんて注意もしたかったが、
「まさか。コクリコさんですか!?」
「え、ええ」
爛々と目を輝かせて興奮した声を出す新人君の一人の勢いに、流石のコクリコも仰け反っている。
「琥珀の瞳の美少女ウィザードって話は本当だったんだな」
「会頭と幾多の修羅場を潜ってきた魔導の天才」
ちょっとなにその誇張された話。
美少女は認めよう。でも魔導の天才って何だよ。
実際、成長してきているから才能があるのは事実だけど、言いすぎじゃないですかね。調子に乗らせないでほしい。
仰け反っていた姿勢から胸を張る姿勢に変わるコクリコさん。
姿勢的にはそこまで変わってないけど、ドヤって感じの表情にはしっかり変わっている。
でもって魔法は成長しても、胸を張っても張る物がないスマホ体系は進歩なし。
同じ黒色級でもコクリコのは名前部分が金色で着色されているからか、新人さん達には特別に見えるようだ。
「大騒ぎだね~」
コクリコの後に続くのはシャルナ。
「ハイエルフのシャルナさんだ!」
興奮する声にシャルナはまんざらでもないのか手を振って返せば、新人三人は大喜び。
アイドルの出待ちを思わせる光景だ。
二人以外はちゃんと車で待っているあたりしっかりしている。
まだ木壁の外側なんだから油断はして欲しくないからね。
君たちは護衛の任があるんだからね。新人君たちに恥ずかしくない先達であれ。
てことで、二人を連れて再び乗車。
石の橋をゆっくりと渡っていくストライカーに続いて、俺の運転するJLTVが通過すれば、橋で待機していた新人三人が助手席のベルを目にすると、コクリコやシャルナの時のような喜色のものではなく、憧憬の眼差しとなっていた。
笑顔ではなく真剣な表情になると、アイドルあつかいではなく、崇め奉るように深々とした一礼。
王都にはベルの美姫と美鬼の話がしっかりと広がっているようだ。
凛とした表情を崩すことなく、一礼する三人に顔を向ける。
緊張で固まる三人。両方の名を持つというのが分かるといった感じだろう。
後者である美鬼は経験していないと本当の意味では分からないだろうけどね。
窓を開けるベルは、
「忠勤ごくろう。隙を見せないよい応対だった、これからも冒険者として人々の安寧の為に励んでくれ」
凛とした表情から柔和な表情というギャップ。
笑みと共に語りかけられれば、
「「「分かりました!!!!」」」
てな具合に大喜び。
伝説として残るであろう強さに加えて絶世の美人。
英雄譚に憧れて冒険者の道に足を踏み入れた者たちにとっては、生ける伝説との邂逅は最高の一時だったんだろう。サイドミラー越しに後方を見れば、橋の上で喜びの舞なのか分からんが、三人でピョンピョンと跳びはねて、全身を使って喜びを表現していた。
――――門を潜り王都までの舗装された石畳の街道を進む。
「ベルの予想通り収穫は上々だったみたいだな」
「その様だ」
救荒作物である粟や稗を栽培していたが、しっかりと刈り取られている田園風景。
寂しい風景になってしまっているが、寂しい風景の分、王都に住まう人々の胃袋は満たされる。
木壁の内側は平和そのもの。
以前の王都とは別物――――なんだけども。マール街に向かっていたルウの言っていた通りだな……。
街道を通る人はいない。
田畑に来年の収穫の為の麦まきをする王都住人はいても、旅装束の人々はいない。
刈り終わった田園風景同様に、街道の光景には寂しさがあった。
「え……あれが勇者様――――ということは……」
「会頭!」
「そうだよ」
見合う三人へフランクに返せば、転げ落ちるような勢いで物見櫓から下りてくる。
「知らなかったとはいえ、ご無礼を!」
「いや、いいよ。むしろしっかりしていて感動したくらいだから」
「副会頭からの指示を忠実にこなしているだけです」
最早、自由を謳歌するはずの冒険者たちって所作じゃない……。
騎士たちみたいに恭しく片膝をついての挨拶。
シークランナーのロイ氏と仲間達のやり取りを目にしているからな。こういうのはちょっと違う気がして淋しくもある。
「今度からは気を付けるのですよ」
突如として俺の横に立ち、発言するのはコクリコ。
先輩風を吹かせているけども、お前と同じ階級だからな。
今回は大活躍だったから、黒から白に認識票の色を昇格させるけども。調子に乗っては駄目だぞ。
なんて注意もしたかったが、
「まさか。コクリコさんですか!?」
「え、ええ」
爛々と目を輝かせて興奮した声を出す新人君の一人の勢いに、流石のコクリコも仰け反っている。
「琥珀の瞳の美少女ウィザードって話は本当だったんだな」
「会頭と幾多の修羅場を潜ってきた魔導の天才」
ちょっとなにその誇張された話。
美少女は認めよう。でも魔導の天才って何だよ。
実際、成長してきているから才能があるのは事実だけど、言いすぎじゃないですかね。調子に乗らせないでほしい。
仰け反っていた姿勢から胸を張る姿勢に変わるコクリコさん。
姿勢的にはそこまで変わってないけど、ドヤって感じの表情にはしっかり変わっている。
でもって魔法は成長しても、胸を張っても張る物がないスマホ体系は進歩なし。
同じ黒色級でもコクリコのは名前部分が金色で着色されているからか、新人さん達には特別に見えるようだ。
「大騒ぎだね~」
コクリコの後に続くのはシャルナ。
「ハイエルフのシャルナさんだ!」
興奮する声にシャルナはまんざらでもないのか手を振って返せば、新人三人は大喜び。
アイドルの出待ちを思わせる光景だ。
二人以外はちゃんと車で待っているあたりしっかりしている。
まだ木壁の外側なんだから油断はして欲しくないからね。
君たちは護衛の任があるんだからね。新人君たちに恥ずかしくない先達であれ。
てことで、二人を連れて再び乗車。
石の橋をゆっくりと渡っていくストライカーに続いて、俺の運転するJLTVが通過すれば、橋で待機していた新人三人が助手席のベルを目にすると、コクリコやシャルナの時のような喜色のものではなく、憧憬の眼差しとなっていた。
笑顔ではなく真剣な表情になると、アイドルあつかいではなく、崇め奉るように深々とした一礼。
王都にはベルの美姫と美鬼の話がしっかりと広がっているようだ。
凛とした表情を崩すことなく、一礼する三人に顔を向ける。
緊張で固まる三人。両方の名を持つというのが分かるといった感じだろう。
後者である美鬼は経験していないと本当の意味では分からないだろうけどね。
窓を開けるベルは、
「忠勤ごくろう。隙を見せないよい応対だった、これからも冒険者として人々の安寧の為に励んでくれ」
凛とした表情から柔和な表情というギャップ。
笑みと共に語りかけられれば、
「「「分かりました!!!!」」」
てな具合に大喜び。
伝説として残るであろう強さに加えて絶世の美人。
英雄譚に憧れて冒険者の道に足を踏み入れた者たちにとっては、生ける伝説との邂逅は最高の一時だったんだろう。サイドミラー越しに後方を見れば、橋の上で喜びの舞なのか分からんが、三人でピョンピョンと跳びはねて、全身を使って喜びを表現していた。
――――門を潜り王都までの舗装された石畳の街道を進む。
「ベルの予想通り収穫は上々だったみたいだな」
「その様だ」
救荒作物である粟や稗を栽培していたが、しっかりと刈り取られている田園風景。
寂しい風景になってしまっているが、寂しい風景の分、王都に住まう人々の胃袋は満たされる。
木壁の内側は平和そのもの。
以前の王都とは別物――――なんだけども。マール街に向かっていたルウの言っていた通りだな……。
街道を通る人はいない。
田畑に来年の収穫の為の麦まきをする王都住人はいても、旅装束の人々はいない。
刈り終わった田園風景同様に、街道の光景には寂しさがあった。
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