異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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北伐

PHASE-745【大立ち回りは回避したいところなんだけど……】

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「通りたければ俺たちを倒して――!?」

「ハーイ、チャン、バブ」
 これ以上あいつらの恥ずかしい行為を見たくないので、ストレンクスンとインクリーズを発動してからのアクセルで、仲良く並んでいた牙の三傑なる壁上からの着地以外は至って普通の連中を台詞に合わせての左と右のワンツーに加えて、右の裏拳の三連撃で仲良く一撃で倒させてもらう。
 一連の流れは、初撃の左拳で向かって右を殴り。右拳で向かって左。
 振り抜いた右を戻す時に腰を捻ってから勢いをつけて真ん中のヤツに裏拳。
 この三つの攻撃動作だけですんだ。
 感想はもちろん――弱い。
 ピリア発動って事もあって中々の距離を飛んでくれるし、ズザーって床を滑っていく姿はシュールだった。

「名付けて――鮭の卵ちゃんコンボ」

「シュールなコンボ名だな……」
 相手の姿をシュールだと思っていたけど、背後のゲッコーさんにとっては俺のコンボ名の方がシュールだったようだ。
 ま、言ってる俺もそう思っております。

「そんな!? 牙の三傑が」

「驚かないでくれる。多分お宅等とそんな実力は変わらないと思うよ」
 本当に何の差もないと思う。壁上から飛び降りるだけの身体能力は常人とは違うけども。
 むしろ四人衆の方がピリアを使用してきたからまだ使い手なのかも。
 まあ、コイツ等が実力を出す前にのしちゃったから真の実力の程は分からないけど。
 この状況下で名乗りを上げてポージングする暇があったのに、優先しないといけないピリアなんかの下準備を怠った時点で戦い方はなっちゃいないけどね。

「矢を使え!」
 傭兵ではなく、兵達が壁上の胸壁にクロスボウを固定するようにして構えている。

「よせ!」
 と、ミランドが俺達の前に立つも、

「どいてください。明らかな敵対行動です」

「そっちから挑んできたからね」

「うるさい!」
 と、激しい返答だけども、クロスボウの鏃はぶれることなくしっかりと俺を捕捉している。
 格好つけてる傭兵たちよりしっかりしているな。
 やはり周囲の守り手の人選は間違ってるな馬鹿息子。
 こっちとしてはやりやすくていいけど。
 良い兵であっても、上が馬鹿だとどうにもならん。
 無能な兵はいない。いるのは無能な将だけだ。ってね。

「やるぞ」
 兵士たちに続くように傭兵たちも各々の得物を手にして構える。

「聞き分けの悪い方々です」
 パフスリーブに両手を交差させるように突っ込めば、ナックルダスターを装備した状態になるランシェル。
 ナックルダスターを握った手を軽く振れば、カランビットナイフのような弧を描いた刃が飛び出してくる。

「おもしろい物を使うのね」
 言って、マイヤもシースナイフを太股から二本取りだし逆手の構え。
 両人とも似たような構えだ。

「命を奪う事は避けたいんだよな」
 本格的な戦いに発展させるのは嫌だ。
 いや、もう手遅れなのかもしれないが……。
 可能な限り現状は非殺傷でいきたい。

「ゲッコーさん」

「なんだ」
 手にするのは未だCZ75 SP-01。麻酔銃とは違って命を奪える銃。
 ミュラーさんといつの間にか合流しているS級さん三名は――、

「うわぁタボールだ」
 格好いい。
 タンカラーのタボールは、スタンダードタイプのTAR-21だ。
 ブルパップ方式の中で俺が好きなアサルトライフルの双璧の一つ。
 もう一つのF2000も捨てがたいが、タンカラーのタボールはやはりいい!

 ――……じゃない!

「俺の奇跡って」

「いつでもいけるぞ」
 本当は今後に使用したかったと小声で漏らしているが、相手を混乱させるのに使用してもいいだろうと、ゲッコーさんは俺の背後に立ち、何処を爆破したいか指示してくれと言ってくる。
 指示――つまりはへんてこ踊りって事なんだろうけど……。

「今回は時間も無いので、動きははしょって切っ先を向けた方向に」

「つまらないな」
 なにを残念がりますかね……。
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