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北伐
PHASE-763【嫌な念仏だ……】
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「ベル。ちょっと気になる事があるんだけど」
「なんだ」
「輜重隊の周辺を守っているのって――住民の皆さんだよね?」
「そうだな。素晴らしい愛国心だな」
「なるほど……ね」
まさか戦場でも協力をしてくれるとはね。
見送る時に男性陣が少なかったのは隊列にいたからか。
しかも戦う気満々で輜重隊の周囲を守るように歩いている。
手にするのは農業なんかで使用するピッチフォークや鋤。
腰には握りやすく加工した四十センチほどの長さの棍棒や木槌に金槌。鎌や鉈と、とりあえず武器になるような物を手当たり次第に集めた感じだ。
左腕にくくりつけているお鍋の蓋が盾の代わりなのかな。
木製の蓋で防ぐのは難しいだろうな。
刃ではなく振ってくる腕に蓋を当てて攻撃を止めるってのが理想的だけど、流石に難しいだろう。
小さな鍋が兜代わりで中華鍋みたいなのが鎧の代用。
余裕のある人は前後を中華鍋みたいなので守っている。まるでサンドウィッチマンのようだ。
他にも似たようなので、木のまな板によるブレストプレートもどきもある……。
総じてぶかぶかで、しっかりと固定がされてない姿なんだけど、皆して笑みを湛えているのは大したものだね。
戦場に向かっているのに怖じ気づかずに語り合ってるからね。
ベルは素晴らしい愛国心と言っているけども、絶対に前線には出させないからな。
あの装備品で後方にて食事でも作ってもらえれば、それだけで大助かりだ。
――目を動かして隊列を見渡せば……。
否が応でも目に飛び込んでくるんだよな……。
流石にスルーも出来ない。
「あれどうすんだよ」
「私にも難しいな……気持ちはとても分かるが」
ゴロ太を差し出せという内容の時のベルはとても恐ろしかったが、そのベルが珍しく引いている。
ずっと見て見ぬ振りだったけど、狂気がこっちにまで伝わってくるから、誰かしらに話を振らないと俺のSAN値が下がってしまいそうだ……。
――……謁見の間にはいなかったけど、後で詳細を聞かされると、瞳の虹彩が薄れて、念仏を唱えるように殺す発言を繰り返しているそうだ……。
というか絶賛、殺すという念仏を唱え続けている……。
現在、ハイウィザードのライラは凄く怖い……。
あれは間違いなく馬鹿息子が姿を現したら、脇目も振らずに命を奪いに行くだろう。
姫様激Loveなライラにとって、姫を嫁に寄越せなんて偉そうな事を言うような馬鹿は、処刑執行対象になるのは当然。
大好きな姫様の近くから離れてまでの従軍だからな。エンレージMAXは馬鹿息子を討伐するまで収まらないだろう。
とりあえずどんな言葉をかけていいのかも分からないので、やはり放置が一番なのかな。
王侯貴族の面々だって関わり合いたくないとばかりに距離を取っているしな……。
これでベルまでゴロ太の件で怒りが続いていたなら、この軍は行軍中ずっと恐慌状態に陥っていたことだろう。
「主」
と、上空からの声。
ヒッポグリフが俺の側まで降下してくる。
何事かあったかと思えば、侯爵麾下の竜騎兵たちも警戒するかのように東側に馬首ならぬ竜首をめぐらす。
「何か東で動きがあるみたいですね」
「理解が早くて助かります」
便利なビジョンを発動すれば砂塵が見える。
ここからおおよそ五キロ地点といったところか。
早期警戒とばかりにワイバーンを駆る竜騎兵の一編隊が、砂塵の方向へと移動を開始。
同時にS級さん達が使用する、二台のJLTVもそちらへと移動を開始。
砂塵の規模からして数はそこまで多くないから、相手の出方を窺うために、こちらも大仰な展開はしないようだ。
敵性と分かった時点で一気に戦闘モードに移行なんだろうけど。
偵察に出たJLTVは、俺たちが普段移動に使用するものと違って、キャビン上部に備わった銃座にはしっかりとM134が装備されている。
通称・無痛ガンと呼ばれるミニガンを防ぐ装備は、この世界では中々にないだろう。
敵性だった場合、相手は自分たちのレンジに入る前に、二台のJLTVによって掃討される事になるだろうな。
「なんだ」
「輜重隊の周辺を守っているのって――住民の皆さんだよね?」
「そうだな。素晴らしい愛国心だな」
「なるほど……ね」
まさか戦場でも協力をしてくれるとはね。
見送る時に男性陣が少なかったのは隊列にいたからか。
しかも戦う気満々で輜重隊の周囲を守るように歩いている。
手にするのは農業なんかで使用するピッチフォークや鋤。
腰には握りやすく加工した四十センチほどの長さの棍棒や木槌に金槌。鎌や鉈と、とりあえず武器になるような物を手当たり次第に集めた感じだ。
左腕にくくりつけているお鍋の蓋が盾の代わりなのかな。
木製の蓋で防ぐのは難しいだろうな。
刃ではなく振ってくる腕に蓋を当てて攻撃を止めるってのが理想的だけど、流石に難しいだろう。
小さな鍋が兜代わりで中華鍋みたいなのが鎧の代用。
余裕のある人は前後を中華鍋みたいなので守っている。まるでサンドウィッチマンのようだ。
他にも似たようなので、木のまな板によるブレストプレートもどきもある……。
総じてぶかぶかで、しっかりと固定がされてない姿なんだけど、皆して笑みを湛えているのは大したものだね。
戦場に向かっているのに怖じ気づかずに語り合ってるからね。
ベルは素晴らしい愛国心と言っているけども、絶対に前線には出させないからな。
あの装備品で後方にて食事でも作ってもらえれば、それだけで大助かりだ。
――目を動かして隊列を見渡せば……。
否が応でも目に飛び込んでくるんだよな……。
流石にスルーも出来ない。
「あれどうすんだよ」
「私にも難しいな……気持ちはとても分かるが」
ゴロ太を差し出せという内容の時のベルはとても恐ろしかったが、そのベルが珍しく引いている。
ずっと見て見ぬ振りだったけど、狂気がこっちにまで伝わってくるから、誰かしらに話を振らないと俺のSAN値が下がってしまいそうだ……。
――……謁見の間にはいなかったけど、後で詳細を聞かされると、瞳の虹彩が薄れて、念仏を唱えるように殺す発言を繰り返しているそうだ……。
というか絶賛、殺すという念仏を唱え続けている……。
現在、ハイウィザードのライラは凄く怖い……。
あれは間違いなく馬鹿息子が姿を現したら、脇目も振らずに命を奪いに行くだろう。
姫様激Loveなライラにとって、姫を嫁に寄越せなんて偉そうな事を言うような馬鹿は、処刑執行対象になるのは当然。
大好きな姫様の近くから離れてまでの従軍だからな。エンレージMAXは馬鹿息子を討伐するまで収まらないだろう。
とりあえずどんな言葉をかけていいのかも分からないので、やはり放置が一番なのかな。
王侯貴族の面々だって関わり合いたくないとばかりに距離を取っているしな……。
これでベルまでゴロ太の件で怒りが続いていたなら、この軍は行軍中ずっと恐慌状態に陥っていたことだろう。
「主」
と、上空からの声。
ヒッポグリフが俺の側まで降下してくる。
何事かあったかと思えば、侯爵麾下の竜騎兵たちも警戒するかのように東側に馬首ならぬ竜首をめぐらす。
「何か東で動きがあるみたいですね」
「理解が早くて助かります」
便利なビジョンを発動すれば砂塵が見える。
ここからおおよそ五キロ地点といったところか。
早期警戒とばかりにワイバーンを駆る竜騎兵の一編隊が、砂塵の方向へと移動を開始。
同時にS級さん達が使用する、二台のJLTVもそちらへと移動を開始。
砂塵の規模からして数はそこまで多くないから、相手の出方を窺うために、こちらも大仰な展開はしないようだ。
敵性と分かった時点で一気に戦闘モードに移行なんだろうけど。
偵察に出たJLTVは、俺たちが普段移動に使用するものと違って、キャビン上部に備わった銃座にはしっかりとM134が装備されている。
通称・無痛ガンと呼ばれるミニガンを防ぐ装備は、この世界では中々にないだろう。
敵性だった場合、相手は自分たちのレンジに入る前に、二台のJLTVによって掃討される事になるだろうな。
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