異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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北伐

PHASE-808【最小限に留める】

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「う、ううん。とまあこの様に俺が召喚を行えば、こういうデッカいのも出せるわけだ。しかも本気じゃねえからな。本気出したらこれ以上のをサラッと召喚できるからな。火龍が封じられていた要塞を守護するシーゴーレム艦隊を簡単に没セシメタあのミズーリよりもえげつないの召喚することも可能だ」

「は、はあ」

「だから、お宅等はこの戦いには今後は参加するなよ。挟撃なんて考えようものなら、あのミズーリを麓に転がすからな」

「わ、分かりました!」

「うむ。よろしい」

「よろしくない! さっさと戻せ。なにが転がすだ!」

「あ、はい」
 ゲッコーさんが若干お怒り。
 アメリカの魂である存在を大地に転がすってのは許せないものがあるようだ。
 確かにあんな姿は俺も見るのは嫌だしな。
 プレイギアに素早く戻す。オートセーブ機能がついていないゲームだからこそ無茶もさせられるのはありがたいけど。

「う、うむ。流石だな。シーゴーレム艦隊を壊滅させたというのも頷けるというもの」

「お、王よ。驚くのは私もですが、号令を」

「そ、そうだなバリタン」
 高まった動悸を落ち着かせてから、

「公爵の兵の者は全ての武器を我々に預けた後、この麓にて待機。これは王命である」
 そう発せば、公爵兵たちは片膝をついて王様の言葉に従った。

「よしよし」

「よくやった」

「ああ、無血とはいかなかったけど、少ない流血ですんだよ」

「素晴らしい判断だったぞ」

「褒めるなら相手だろ。約束をちゃんと守ったからな」

「自身ではなくまず相手。トールも一人前になりつつある」
 部下の成長を喜ぶようにベルの顔がほころぶのが俺のご褒美だ。

 ――――いやはや流石だな。
 四男坊ことヨハンの命に従い、兵達が次々と自分たちの手にする武器をこちらへと渡してくるんだけど、その動きは無駄がなく整然としていて、見ていて気持ちよかった。

「あんた達を信用しなかった馬鹿む――カリオネルの無能さがよく分かるよ」

「耳心地がよくなるような、耳が痛いような。なんとも難しいです」

「いやいや前者で受け取るべきだよ。部下は選べても主を選べないのは指揮官の辛いところだな」

「これは耳が痛いほうですね」
 ミランドには借りがあるし。矜持のためにもやらないとな。

「本来、このような言葉を述べるのは許される事ではないのですが――――お願いいたします」

「おう! まかされよ。キツいのかましてやる」
 要塞までの道が出来上がる。
 後は馬鹿息子を殴るだけ。でもって珍妙団こと傭兵団を解体する勢いで叩きつぶしてやる。

「数の上で断然有利になったな」

「ベルさん。数の上でじゃないよ。全てにおいて有利になったんだよ」

「だったな。言葉足らずだった」
 兵数で完全に逆転した状況。
 要塞戦となれば、高順氏のユニークスキル【陥陣営】も25パーセントに固定される。
 兵士の質も圧倒的に上。
 相手は所詮ごろつきみたいなもんだ。士気の高いこの状態なら確実な勝利を収めることが出来る。

「皆の力を信頼すれば必勝だ」
 足をすくわれるような怠慢からの発言じゃない。絶対に勝てると思っているし、油断はしていない。
 俺の声音でその辺りは理解してくれているようで、ベルは微笑んでくれる。

「後は更なる奇跡を見せつけるだけだな」
 足はすくわれないようにしたいけども、背後からの声で足をすくわれそうになる。
 肩越しに見れば、ハリウッディアンなお髭に囲まれた口元が悪そうにつり上がっている。
 ――……そうか……。そうだったな。
 まだ残ってたな。奇跡……。

「ぶっちゃけ使わなくても勝てますよね」

「だが必勝を得たいんだろ。鼓舞にもなるし何より要塞側に混乱が生じる。防御壁も破壊できる。壁の破壊は攻城戦において攻め手に犠牲者を多く出す。勇者はそれを望むのか?」
 発言が正鵠を射ているから困る。
 ただその正論を台無しにするくらいに悪い笑みなのが腹立つ!
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