異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

文字の大きさ
833 / 1,861
北伐

PHASE-833【汚物は爆発だぁ!】

しおりを挟む
「それにしても――高そうな物が沢山置いてありますね~。ダンジョン攻略コンビとしてはこれは見過ごせないですね」

「まあな。って、お前だけか? ベル達は?」

「もう少し後になるでしょうね」
 各所を占拠するというベルの活躍に、他からも助力をという声があり、要塞内を駆け回っているそうだ。
 シャルナもそのフォローをしているという。
 ゲッコーさんも似たようなもの。というか指導者というポジションでもあるから、前線にて指揮に励んでいるという。
 流石の面子だな。
 現在この場にいるのはコクリコと、それに随伴した――

「ようラルゴ」

「大将」
 元奴隷で砦群を根城にしていた賊たちだ。装備のいたるところに小さな傷が目立つけども、皆、無事なようだ。
 生産性重視の革の胸当てとチェインメイル。
 革の兜にショートソードやメイス。木と革の合成からなるヒーターシールド。
 狭い通路での戦いを見越して槍からショートソードやメイスに変更しているのは中々に優秀だな。

「元奴隷とのことでしたが、かなりの使い手でしたよ。特にリーダーのラルゴは」

「お嬢ちゃんの活躍と比べれ――ってぇ!?」
 おっと物静かなラルゴらしからぬ痛みを伝える大きな声。
 コクリコに思いっきり臑を蹴られていた。

「コクリコ――さん。でしょうが。私は貴男たちより先達なのですよ。まだまだ雑用を主にしている面々にお嬢ちゃん呼ばわりされるのは縦社会ではよろしくない」

「いつから俺のギルドは縦社会になったんだよ」

「最低限の規律というものです」
 規律から最も離れた所に立っているようなヤツが言うことかね。
 さっき誰何もしないでファイヤーボールを俺に撃ってきたのは何処の誰だよ。

「ジト目で見ない」
 俺に反論を言わせないとばかりにワンドをビシリと向けてくる。
 まあ、いいんだけどね。

「申し訳ないコクリコ殿」

「それで良いのですよ」
 ラルゴが素直に対応していることと、コクリコの活躍を口にしようとしたところから察するに、ここまでの道中、結構な大立ち回りによる活躍をしたのが窺える。
 コクリコもなんだかんだで人を引っ張るだけの実力があるってことだよな。
 それだけの修羅場を経験しているわけだし。

「さあ行きますよ!」

「了解だ」
 と、ラルゴ達の先頭に立ちつつ、

「そうそう、この辺のは戦利品として持ち帰りますよ。皆で山分けです」

「ヒュー」

「流石はコクリコさんだ」
 ラルゴの仲間達は山分けという発言で、コクリコに対する尊敬ポイントが急上昇したようだな。

「いいですよねトール」

「まあな。だが戦いが終わってからだ」

「え~! それだと奪い合いになってしまいますよ!」

「そうならないようにするのが王様の腕の見せ所だろうな。兵の略奪を押さえ込めないとなると、王様の品位も問われるからな。とくに今回はその王様自身が戦場に立っているわけだし」

「もし失敗したら。我々のお宝が……」

「王様を信じろ。とにかく今は前に進むぞ」
 調度品に後ろ髪を引かれるコクリコの背中を無理矢理に押して先へと進む。

「よしよしあと少しだぞ。あと少しで趣味の悪いスタチューを見る事が出来る」
 足を前へと進めれば――、

「確かに趣味が悪いですね……」
 呆れるコクリコ。

「コイツは誰なんだ? 大将」
 ラルゴが聞いてくるので、馬鹿息子だと説明すれば、

「以外と精悍な顔立ちだな」
 素顔を見たことがないからそんな事を言える。

「美化しすぎです! 神経に障る彫像ですね!」
 予想していたけど、コクリコのワンドの貴石が赤く輝く。
 俺に対して許可を求めるなんて事もしない。即実行に移したいほど不快だったようだ。
 貴石の輝きはファイヤーボールの時よりも強い赤色。

 すなわち――、

「ポップフレア!」

「イィィィィィハァァァァァァァァ!」
 発動と同時に俺も喜びの大音声。
 いいぞ! そいつが見たかったんだ。
 偽りで固められた彫像に直撃すれば、小気味の良い爆発により見事に四散。
しおりを挟む
感想 588

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...