915 / 1,861
新公爵
PHASE-915【スケールが王都以上】
しおりを挟む
「もっと欲しい物があるなら言ってくれ」
「話の分かるお爺様ですね」
「じぃじでいいのだぞコクリコ」
「考えておきます」
別に孫娘ポジションじゃないぞ。俺のパーティーメンバーだからなのか、家族として見ているのかな? にしても上からの物言いが流石はコクリコ。
態度が大きくても怒るような事はない。本当に言えばなんでも与えてくれそうだな。
コクリコはともかく、俺はカリオネルを反面教師として甘えないようにしよう。
――。
「うへ……」
「これは壮観だな」
横ではベルが感嘆の声を漏らす。
根が庶民の俺は、あまりにも立派な屋敷に気圧されているというのに。
――公都ラングリスの外周防御壁から二日を使用して公爵家の屋敷へと到着。
公都の中心ということもあり、この辺りはセントラルと呼ばれるそうで、富裕層が多く住む地区だそうだ。
富裕層が多いとはいえ、この屋敷は規格外すぎる。
王都の城壁を越える防御壁はここに来るまでに五つを潜った。
そしてミルド領での拠点となる屋敷も同サイズの防御壁に守られている。
公都は六重からなる防御壁に守られた堅牢な地ということになる。
そして六つ目を潜れば一般の兵はいない。
征北騎士団と、ケトルハットにフルプレートからなる装備の近衛兵達だけが公爵邸の敷地内の守りに就くことが許されているそうだ。
にしても広すぎる。
湖を覆わせる池に、先が見えない庭園。庭園っていうよりもはや森。
それらを眼界に入れつつ石畳の上を馬で進めば――、城規模の屋敷が眼界へと入ってくる。
「収容人数どのくらいだよ……」
「非常時は近隣の民の避難場所にもなります。敷地内には田畑も有り、屋敷の者たちだけなら自給自足も可能です。本来ならば十万が一年は籠もれるだけの食糧も備蓄されていました……」
この公爵邸だけでも十万を一年は飢えから救うことが出来るんだな。
公都の各所には同様の機能を持った屋敷や倉があり、公都の民草を半年は飢えから守るだけの蓄えを有しているという。
公都全体が不落の拠点となるわけだ。
気になったのは、説明をしてくれるヨハンの声が言葉尻で暗くなったこと。
なので質問をすれば、聞かされた内容で力が抜ける……。
備蓄された食糧は、今回の戦いに参加した傭兵と、兵を提供してくれた諸侯の分の兵糧を自分の力を誇示したいがためにカリオネルが全て賄ったそうで、兵と傭兵たちの為に全てを大盤振る舞い。
結果、屋敷の備蓄は底を突いたそうだ。
全くもってやってくれる……。
今回の戦いで糧秣廠にあった食糧を回収できただけでも良かったよ。
現在は食糧を補填するため、ミルド領の各地から集めているということだ。
しかし魔王軍との有事に備えるため、各地も温存しないといけない事から、公爵邸の倉が十分に満たされるのは大分先になりそうだ。
あの馬鹿は本当に……どうにもならない馬鹿だ……。
「敷地内の騎士団や近衛の兵力は?」
嘆息まじりに質問。
「敷地内で問題が発生しても、征北騎士団と近衛の官舎が敷地内の四方にあり、即応できる兵は三千。公都全体ならば一万を即動員できます」
「心強いね」
即応と限定しないなら三万は動員できるという。
公都だけで三万。
ミルド領全体となれば大部隊が編制できそうだな。
「ですが質の方がですね」
「それは大丈夫。今までは上が駄目駄目だっただけ。ちゃんと調練すればしっかりとした兵達になる」
「左様です」
先生も言ってくれればヨハンも柔和な笑みを湛える。
今までとは違う。だからこそ兵がしっかりと兵としての役目を果たせる事が出来るという喜びの笑みなんだろうな。
調練が大事なのは言わずもがな。これに加えて当分の間、公都には先生が滞在する。
滞在によってユニークスキル【王佐の才】が発動するから、この広大な公都の人々はそろって有能になる。
短期間で公都に住まう人々が大い成長してくれるというものだ。
――。
「――さあ堪能してくれ」
「言われる前から堪能してますよ」
本日は俺がこの屋敷の正式な主となった事を祝うという名目で、身内だけで集まって食事を楽しむというものだった。
身内ってのは、パーティーメンバーにギルドやそれに協力してくれる面々。王様に家臣団。公爵家に関わる方々。
公爵家の血縁者たちと大広間にて顔合わせの挨拶を行っている中、貴族社会とはかけ離れた豪快な食事を行うまな板の存在。
出される食事はバイキング方式。テーブルに置かれればそこは自分のテリトリーだとばかりに誰も近づけさせない食い意地……。
「見事だな」
爺様は豪快さに感心しているが、血縁関係の方々は引き気味。
申し訳ないと俺が謝罪すれば、当主のお供の方なら許される範囲であり、日夜、驚異と対面して解決している勇者の仲間ならあのくらいの豪快さが必要です。
と、表情と発言が跛行的なフォローをいただいた……。
コクリコ……恥ずかしい子!
「話の分かるお爺様ですね」
「じぃじでいいのだぞコクリコ」
「考えておきます」
別に孫娘ポジションじゃないぞ。俺のパーティーメンバーだからなのか、家族として見ているのかな? にしても上からの物言いが流石はコクリコ。
態度が大きくても怒るような事はない。本当に言えばなんでも与えてくれそうだな。
コクリコはともかく、俺はカリオネルを反面教師として甘えないようにしよう。
――。
「うへ……」
「これは壮観だな」
横ではベルが感嘆の声を漏らす。
根が庶民の俺は、あまりにも立派な屋敷に気圧されているというのに。
――公都ラングリスの外周防御壁から二日を使用して公爵家の屋敷へと到着。
公都の中心ということもあり、この辺りはセントラルと呼ばれるそうで、富裕層が多く住む地区だそうだ。
富裕層が多いとはいえ、この屋敷は規格外すぎる。
王都の城壁を越える防御壁はここに来るまでに五つを潜った。
そしてミルド領での拠点となる屋敷も同サイズの防御壁に守られている。
公都は六重からなる防御壁に守られた堅牢な地ということになる。
そして六つ目を潜れば一般の兵はいない。
征北騎士団と、ケトルハットにフルプレートからなる装備の近衛兵達だけが公爵邸の敷地内の守りに就くことが許されているそうだ。
にしても広すぎる。
湖を覆わせる池に、先が見えない庭園。庭園っていうよりもはや森。
それらを眼界に入れつつ石畳の上を馬で進めば――、城規模の屋敷が眼界へと入ってくる。
「収容人数どのくらいだよ……」
「非常時は近隣の民の避難場所にもなります。敷地内には田畑も有り、屋敷の者たちだけなら自給自足も可能です。本来ならば十万が一年は籠もれるだけの食糧も備蓄されていました……」
この公爵邸だけでも十万を一年は飢えから救うことが出来るんだな。
公都の各所には同様の機能を持った屋敷や倉があり、公都の民草を半年は飢えから守るだけの蓄えを有しているという。
公都全体が不落の拠点となるわけだ。
気になったのは、説明をしてくれるヨハンの声が言葉尻で暗くなったこと。
なので質問をすれば、聞かされた内容で力が抜ける……。
備蓄された食糧は、今回の戦いに参加した傭兵と、兵を提供してくれた諸侯の分の兵糧を自分の力を誇示したいがためにカリオネルが全て賄ったそうで、兵と傭兵たちの為に全てを大盤振る舞い。
結果、屋敷の備蓄は底を突いたそうだ。
全くもってやってくれる……。
今回の戦いで糧秣廠にあった食糧を回収できただけでも良かったよ。
現在は食糧を補填するため、ミルド領の各地から集めているということだ。
しかし魔王軍との有事に備えるため、各地も温存しないといけない事から、公爵邸の倉が十分に満たされるのは大分先になりそうだ。
あの馬鹿は本当に……どうにもならない馬鹿だ……。
「敷地内の騎士団や近衛の兵力は?」
嘆息まじりに質問。
「敷地内で問題が発生しても、征北騎士団と近衛の官舎が敷地内の四方にあり、即応できる兵は三千。公都全体ならば一万を即動員できます」
「心強いね」
即応と限定しないなら三万は動員できるという。
公都だけで三万。
ミルド領全体となれば大部隊が編制できそうだな。
「ですが質の方がですね」
「それは大丈夫。今までは上が駄目駄目だっただけ。ちゃんと調練すればしっかりとした兵達になる」
「左様です」
先生も言ってくれればヨハンも柔和な笑みを湛える。
今までとは違う。だからこそ兵がしっかりと兵としての役目を果たせる事が出来るという喜びの笑みなんだろうな。
調練が大事なのは言わずもがな。これに加えて当分の間、公都には先生が滞在する。
滞在によってユニークスキル【王佐の才】が発動するから、この広大な公都の人々はそろって有能になる。
短期間で公都に住まう人々が大い成長してくれるというものだ。
――。
「――さあ堪能してくれ」
「言われる前から堪能してますよ」
本日は俺がこの屋敷の正式な主となった事を祝うという名目で、身内だけで集まって食事を楽しむというものだった。
身内ってのは、パーティーメンバーにギルドやそれに協力してくれる面々。王様に家臣団。公爵家に関わる方々。
公爵家の血縁者たちと大広間にて顔合わせの挨拶を行っている中、貴族社会とはかけ離れた豪快な食事を行うまな板の存在。
出される食事はバイキング方式。テーブルに置かれればそこは自分のテリトリーだとばかりに誰も近づけさせない食い意地……。
「見事だな」
爺様は豪快さに感心しているが、血縁関係の方々は引き気味。
申し訳ないと俺が謝罪すれば、当主のお供の方なら許される範囲であり、日夜、驚異と対面して解決している勇者の仲間ならあのくらいの豪快さが必要です。
と、表情と発言が跛行的なフォローをいただいた……。
コクリコ……恥ずかしい子!
1
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる