異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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新公爵

PHASE-921【力を見せていこう】

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「こういうのはあまり好まないのだがな」
 着ているドレスの気恥ずかしさを感想としながら俺達の所に来るベル。

「とても似合ってるよ」
 と、ストレートに褒める俺。

「鼻の下を伸ばさないで言えたらまだよかったな」

「ですよね~」
 でもさ。普通に似合ってるよとかサラッと言えた俺の成長は大したものでしょうよ。
 今までの俺ならそんなこと恥ずかしくて言えなかったからね。

 美人様たちが俺の周囲に立てば、自慢の娘を紹介しようとしていた諸侯の面々が顔を伏せてしまう。
 我が子だからこそ一番美しい思う親心もあるのだろうが、悲しいかなそういった親の愛情すらも凌駕する美人の登場に、娘を嫁がせて自分の権威を向上させるという政略結婚は水泡に帰したわけだ。

 ここで駄目出しとばかりの――、

「「「「おお!」」」」
 再び感嘆の声が大広間に響き渡る。
 食事を運んでくるメイドさん達の美しさにも当てられてしまっている。
 笑みを湛えてカーテシーによる挨拶とともに諸侯の前に食事を運んでくるサキュバスメイドさん達は絶賛、笑顔にチャームを混ぜ込んでいるご様子。
 離れた位置にて見るベル達とはまた違い、妖艶さもある笑みを至近距離で向けられれば心を奪われるのは必至。

「いやはや主殿の周囲には美しい女性ばかりがおりますね。これでは誰を選べば良いのか苦心するでしょう」
 いや~その通りですよ。
 と、ハーレムすぎて困るといった感じを醸し出して荀攸さんに返してみるも、口から出した途端に空虚になる……。
 実際は俺を男として見てくれているのは少ないからな~。
 サキュバスメイドさん達の好感度が高いのが救いではあるけど。
 そんなサキュバスさん達を口説くかのように諸侯が語りかけているのが見える。
 メイドなら手込めに出来ると思っているところに、

「私共の心はトール様に向けられていますので」
 と、嬉しいことを言ってくれる。
 本当に嬉しいことだよ!
 でもって、あれだけの美女を周囲に侍らせていて、更にはこの様に美しいメイド達の心までも独占している新公爵とはどれほどの力を有しているのかと、驚愕してくれるのは有りがたいんだけども……。
 有りがたいんだけどもさ……。
 その台詞はメイド長のコトネさんが代表して言えばよかったんじゃないでしょうか。ランシェル……。
 インキュバスよりサキュバスに言われたい台詞だったよ……。

 ――余談だが、諸侯の娘達が目を蕩けさせてたのは俺にではなく、俺の側にいた先生にでしたとさ――ケッ!
 勘違いさせてくれた男爵には八つ当たりの拳骨をもう一発プレゼントした。

 ――。

「お歴々、楽しんでくれて何より。ここで我が孫となったトールから催し物があるという。諸君、面倒ではあるだろうが中庭まで移動していただきたい」
 爺様が発せば、諸侯と冒険者ギルドの面々が従うように動き始める。

「では皆様、私についてきてください」
 スーツに身を包んでいる人物が誘導。
 この屋敷の執事ではないな。
 スーツからでも分かる鍛え抜かれた筋肉に、笑みを見せつつも全てを見通すような鋭い目。
 
「S級さんの一人ですか」

「そうだ」
 普段はバラクラバを被っているから分からないけど、体つきで分かるようになってきた俺も中々に目が養われてきているな。

「ではここからが本番ですね」

「その通りです」
 俺の背後に立つのは荀攸さん。
 この継承式を行う前日までに事は整えてある。

「後は派手にやるだけだ」
 こういった準備はゲッコーさんが適任。
 専門家たちに活躍してもらうのが一番だ。

「緊張します」

「練習通りでいいよヨハン。馬たちも慣れてくれたしな」

「ええ」
 諸侯が公都を訪れる前に、ヨハンたち征北騎士団や近衛にも協力してもらっての演習はバッチリ。
 混成による機動訓練を初見で体験すれば、見た者たちが圧倒されるのは想像に難くない。

「この催しが成功し、ミルドの力が一気に我が孫へと集結すると信じたいものだ」

「やってやりますよ。爺様にも見せていない力をお目にかけます」

「楽しみだ」

「私も楽しみにしているぞ」
 と、王様。
 家臣団の準備も出来ているとバリタン伯爵。
 主要メンバーも揃ったことだし、

「さあ皆さんには大いに驚いてもらおう。まずは移動方法でね」
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