異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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ミルド領・閑話

PHASE-1020【妥当ではある】

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 ――――翌日。

 論功行賞により功績第一はギルマスの三名とした。
 当初、俺の考えでは征北騎士団団長であるヨハンだった。
 傭兵団との戦いの時は、ガラドスクに相手にされないことでプライドを傷つけられただろうが、それでも感情に突き動かされず、冷静に部隊を指揮したことを評価したかったが、荀攸さんは今は内より外に力を入れるべきだからと、素早い制圧により公都に被害を出さなかったことが何よりも大きいという理由から――、
【白狼の宴】バッシュ・オルソン。
【オグンの金床】ゲルン・ブリッジス。
【アーモリー・パライゾ】ライルライリ・ライクラライララ。
 ギルド代表の三名に与える事になった。
 最後の人の名前を口にする時は、本番で噛まないように何度も反復練習した。
 どんだけラが多いんだよ! と、ツッコミながら。

 なのでヨハンは功績第二として褒賞。
 カリオネル支配の時は冷遇されていた分、俺に変わってからは騎士団として真っ当に活動できるようになったという事もあり、不満は抱かないでしょうと荀攸さん。

 カイルやマイヤ達には公爵としてではなく会頭としての立場で褒賞し、二人の分は他の者たちの褒賞に回した。
 一番の不安要素だったのはコクリコ。
 なんで自分じゃないのかと、褒賞の場で異議申し立てをすると予想していたが、もの凄く大人しかった。
 というか、満足な表情だった。
 
 ――……まじで、俺とベルの出来レースでどんだけ稼いだんだ?
 あのコクリコが満足するくらいだから相当だろう。つまりは、ゲッコーさんもかなり稼いで、S級さん達に酒を振る舞ったんだろうね……。

「さて――」

「ようやくですね」

「はい」
 ミルド領に入り内情を知り、諸侯に一発かますための観艦式からのデモンストレーション。
 
 カイメラという合成獣を創造していたイカレ集団の存在を知ることが出来、カリオネルの戦いから因縁のある傭兵団――破邪の獅子王牙との戦いも終わり、褒賞も終わった。
 ミルド領においての政は爺様と荀攸さんに任せればOKだ。
 そして、有能な面々に協力してもらって、カリオネルと傭兵団のやらかしたこの領土をしっかりと立て直してもらい、全体が一つに向かって行動してもらうように励んでいただく。

 王の領地、他の貴族豪族の領地に比べれば、魔王軍による傷がないと言ってもいいこのミルド領で力を蓄えていた者達の協力を得ながら、今度は要塞トールハンマーより南に足を進め、魔王軍が征服する領地を奪還しなければならない。
 即ち――南伐となるわけだ。
 
 南伐のためには戦えるだけの戦力を得ないといけない。
 少しずつだけどその力を得ていることは出来ている。
 だが、兵力を南伐に投じるために解消しないといけない問題もある。
 南の地は未だに瘴気が充満している。
 瘴気を浄化しなければ、軍勢を南へと進めることは不可能。

 ならばその瘴気を浄化するための行動をしないといけない。

「公爵から勇者としての活動に重きを置かないといけなくなったか」

「こちらは我々に任せておいてください」
 荀攸さんの恭しい一礼と自信に染まる声。
 残りの四大聖龍リゾーマタドラゴンを救い出して、この大陸に蔓延する瘴気を浄化してもらわないとね。

 で、三爪痕トライスカーズやら魔王護衛軍をしっかりと倒していき、最終的に自分の事を聖祚とか呼ばせている勘違いイキリスライムのショゴスをしばき倒す。
 現状、俺のレベルではまだまだ挑むのは難しいが、一つ一つを丁寧にこなしていって、この世界に平和を取り戻せれば、元の世界に――テッテレー♪

「なんだよ!」

「珍妙な音ですね」

「すみませんね~」
 まったく。俺が気合いを入れるために心の中で決意を固めているって時なのに。
 なんとも久しぶりの音だったから、体がビクリとなってしまったぞ。この音には毎回なれないな……。
 驚きはあったけども、続けて直ぐに喜びの感情が湧き出したけどさ。
 荀攸さんに断りを入れつつ、プレイギアを手に取り自分のステータスチェック。

「……ふむん」
 嬉しくはあるけども……。
 ディスプレイに映し出される俺のレベルは66。
 これまでが63だから3アップ。
 久しぶりの音だし、死にかけた中でも戦ったんだからもっと評価点が加算されてもよかったんじゃないだろうか。
 一気に70台までなっても良かったと思ったんだけどな。

 俺が有する力を出し切って戦えば、マジョリカとの戦いで苦戦はないと判断されたのだろうか?
 というかそこだろうな。
 ブーステッドにゴロ丸。使えばもっとスマートに勝てたという判断からだろう。
 木刀での戦いが正にそれだったし。
 
 それらを使用しなかったことで死にかけたけども、良い経験にはなった。マジョリカからもその部分で学ばせてもらった。
 大きなダメージを受けた時、連動して回復を同時に行うような立ち回りが出来るようにならなければいけない。
 危険から直ぐさま回復へと繋げるのを体に馴染ませないといけない。
 
 今回はレベルが3上がっただけだが、最低限の評価はしてもらえたと喜ぶべきだろう。
 マジョリカ以外の戦いだと、カイメラが放置した地下施設での戦いだったし、苦戦ってほどでもなかったから妥当と言えば妥当なレベルアップか。
 本音としては、力を押さえて勝利したところを評価してほしかったけどな。

「よっしゃ! がんばろ!」

「主殿の奮励努力を離れた地で見守らせてもらいます」
 プレイギアに何が映し出されていたのかは知らなくても、俺をしっかりと応援してくれる荀攸さんの優しさはありがたい。
 でもやっぱり、こういうのは美人だったり、可愛い女の子に言ってもらいたいよね。
 ――今回は表情に出なかったから悟られなかったようだ。

 さて、ミルド領を出立する前にテッテレー♪ と鳴った事だし、かまってちゃんを構ってやるかな。
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