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エルフの国
PHASE-1027【ちらつく】
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――――冬だというのに緑豊かな木々に覆われた風景。
「さあここからはしっかりと付いてきてください」
森の中を移動するわけだが、ルートを知らない者が入り込めば、まず間違いなく迷うそうで、最悪、命を堕とす事になるという。
日本で例えるなら樹海みたいなもんかな。
先頭で俺達を誘導してくれるのは、ここでもルーシャンナルさん。
イケメンのハイエルフさんの年齢はやはりとんでもなかった。
二千を超えていた。
ここまでの道中で教えてもらった年齢は2257歳。シャルナより300歳以上の年上。
――……三百歳以上って何?
エルフが存在する世界だし、一年は過ごしているからその辺りの驚きには慣れたと思ったけども――慣れていなかった俺。
さも当たり前に三百歳年上って発言は、とんでもパワーワードですよ。
そんな2257歳のルーシャンナルさん。エルフの国であるエリシュタルトでは百人隊の隊長だという。
魔法と弓術に精通した百人からなるエルフを指揮できる立場なのは心から凄いと思う。
ちなみにカリオネル討伐時に個人的協力という名目で参加してくださったハイエルフの中心人物はカーミルトさんと言うそうで、ルーシャンナルさんの上役にして、三百人隊を指揮する権限を持っている方だそうだ。
そんなカーミルトさんには殿をつけられ、ルーシャンナルさんからは様をつけられるシャルナ。
「やっぱ王族だろ」
「だから違うわよ」
「ご理解しているでしょうが、それに近いものと思ってください」
と、ルーシャンナルさんが返せば、車内からシャルナがじろりと見てくる。
権力者の娘ってのは分かったけども、どうもその権力の下で行動するのは嫌いなご様子。
じゃないとわざわざ人間の活動範囲に出て来るわけないか。
外に出るエルフ達ってのは、自由を求める冒険者に憧れてたりするんだろうか。
――などと考えていれば、先頭のルーシャンナルさんが停止。
右手を横に伸ばして止まれという合図。
それに合わせて残りのエルフさん達も停止。
皆して目つきが鋭いものに変わる。
当然、俺も。
俺だってそこそこの場数を踏んでいるからね。
樹上から気配を察知する。
ルーシャンナルさんは、伸ばした右手をそのまま馬に装着している矢筒へと動かし、細長い指で矢を一本つまみ、そのまま弓へと番える。
他の方々もシンクロしているかのように動く。
低いモノでも高さが五十メートルを超える木々に囲まれた場所。
その木々が陽を遮れば、森の中は夜のように暗く、わずかな木漏れ日が光芒のようであり、犯し難い聖域を思わせる。
そんな場に相応しい森閑の中で、エルフさん達が弦を軽く引くと、キリッと小気味のいい音色を奏でる。
「敵ですか!」
森閑なる空間を打ち破るのはもちろんこの方――コクリコ・シュレンテッドさん十四歳。
馬車から上半身だけを出すコクリコのその声を合図にしたかのように、
「ギャァァァァァァ!」
痛みによる叫び声――ではなく、こちらに敵意を向けた声が樹上から聞こえてくる。
ピジョン発動で上を見れば、緑色の肌に黄色の瞳、鷲鼻からなる小さな存在が多数降りてくる。
「ゴブリンですか」
「ゴブリンだな」
コクリコは残念がっているけども、手にしたモノをこちら向けながらの降下から、敵対しているのは間違いない。
「ギョ!?」
短い断末魔。
一人のゴブリンが地面に倒れる。
矢によるヘッドショット。
ルーシャンナルさんが放った、見事な一矢だった。
強襲を仕掛けるつもりだったんだろうが、絶命したゴブリンに続いて樹上から飛び降りてきたゴブリン達はこの一矢であっという間に力量差を理解したようで、恐怖に呑まれてしまったようだ。
樹上から降りてきたのは――十六――やられたのを除けば十五。
現状の俺達なら脅威になる数ではない。
先頭のが手に持つのは、粗雑な尖頭器からなるモノ。
木に尖った石をくくりつけているだけの槍。
槍はゴブリンと同サイズ。
子供と変わらない体格のゴブリンが持つ槍は、こちらの刀剣とリーチ差は変わらない。
長くてもどのみち脅威ではないけどね。
もっとも多いのは棍棒。木の枝をそのまま流用しているだけの、加工もしていない棍棒だ。
「よう、無駄な戦いはやめようぜ」
ここで俺が先頭に立つ。
「勇者殿」
既に次の矢を番えているルーシャンナルさんの動きは早く、次のターゲットに狙いを定めていたけども、俺の発言でルーシャンナルさんをはじめとしたエルフさん達が動きを止める。
瞬時に行動を切り替えてくれるのは優秀の証だね。
――さて。
見た感じ、野生のゴブリンってところか。
魔王軍のゴブリンとは装備が明らかに違うからな。
革鎧でも利器でもない。全裸を隠す程度の襤褸からなる服装と、尖頭器や棍棒による装備だからね。
本来なら野生のゴブリンだし敵対しているから討伐するのもいいんだろうけど、アルスン翁の顔がちらつくんだよな~。
「さあここからはしっかりと付いてきてください」
森の中を移動するわけだが、ルートを知らない者が入り込めば、まず間違いなく迷うそうで、最悪、命を堕とす事になるという。
日本で例えるなら樹海みたいなもんかな。
先頭で俺達を誘導してくれるのは、ここでもルーシャンナルさん。
イケメンのハイエルフさんの年齢はやはりとんでもなかった。
二千を超えていた。
ここまでの道中で教えてもらった年齢は2257歳。シャルナより300歳以上の年上。
――……三百歳以上って何?
エルフが存在する世界だし、一年は過ごしているからその辺りの驚きには慣れたと思ったけども――慣れていなかった俺。
さも当たり前に三百歳年上って発言は、とんでもパワーワードですよ。
そんな2257歳のルーシャンナルさん。エルフの国であるエリシュタルトでは百人隊の隊長だという。
魔法と弓術に精通した百人からなるエルフを指揮できる立場なのは心から凄いと思う。
ちなみにカリオネル討伐時に個人的協力という名目で参加してくださったハイエルフの中心人物はカーミルトさんと言うそうで、ルーシャンナルさんの上役にして、三百人隊を指揮する権限を持っている方だそうだ。
そんなカーミルトさんには殿をつけられ、ルーシャンナルさんからは様をつけられるシャルナ。
「やっぱ王族だろ」
「だから違うわよ」
「ご理解しているでしょうが、それに近いものと思ってください」
と、ルーシャンナルさんが返せば、車内からシャルナがじろりと見てくる。
権力者の娘ってのは分かったけども、どうもその権力の下で行動するのは嫌いなご様子。
じゃないとわざわざ人間の活動範囲に出て来るわけないか。
外に出るエルフ達ってのは、自由を求める冒険者に憧れてたりするんだろうか。
――などと考えていれば、先頭のルーシャンナルさんが停止。
右手を横に伸ばして止まれという合図。
それに合わせて残りのエルフさん達も停止。
皆して目つきが鋭いものに変わる。
当然、俺も。
俺だってそこそこの場数を踏んでいるからね。
樹上から気配を察知する。
ルーシャンナルさんは、伸ばした右手をそのまま馬に装着している矢筒へと動かし、細長い指で矢を一本つまみ、そのまま弓へと番える。
他の方々もシンクロしているかのように動く。
低いモノでも高さが五十メートルを超える木々に囲まれた場所。
その木々が陽を遮れば、森の中は夜のように暗く、わずかな木漏れ日が光芒のようであり、犯し難い聖域を思わせる。
そんな場に相応しい森閑の中で、エルフさん達が弦を軽く引くと、キリッと小気味のいい音色を奏でる。
「敵ですか!」
森閑なる空間を打ち破るのはもちろんこの方――コクリコ・シュレンテッドさん十四歳。
馬車から上半身だけを出すコクリコのその声を合図にしたかのように、
「ギャァァァァァァ!」
痛みによる叫び声――ではなく、こちらに敵意を向けた声が樹上から聞こえてくる。
ピジョン発動で上を見れば、緑色の肌に黄色の瞳、鷲鼻からなる小さな存在が多数降りてくる。
「ゴブリンですか」
「ゴブリンだな」
コクリコは残念がっているけども、手にしたモノをこちら向けながらの降下から、敵対しているのは間違いない。
「ギョ!?」
短い断末魔。
一人のゴブリンが地面に倒れる。
矢によるヘッドショット。
ルーシャンナルさんが放った、見事な一矢だった。
強襲を仕掛けるつもりだったんだろうが、絶命したゴブリンに続いて樹上から飛び降りてきたゴブリン達はこの一矢であっという間に力量差を理解したようで、恐怖に呑まれてしまったようだ。
樹上から降りてきたのは――十六――やられたのを除けば十五。
現状の俺達なら脅威になる数ではない。
先頭のが手に持つのは、粗雑な尖頭器からなるモノ。
木に尖った石をくくりつけているだけの槍。
槍はゴブリンと同サイズ。
子供と変わらない体格のゴブリンが持つ槍は、こちらの刀剣とリーチ差は変わらない。
長くてもどのみち脅威ではないけどね。
もっとも多いのは棍棒。木の枝をそのまま流用しているだけの、加工もしていない棍棒だ。
「よう、無駄な戦いはやめようぜ」
ここで俺が先頭に立つ。
「勇者殿」
既に次の矢を番えているルーシャンナルさんの動きは早く、次のターゲットに狙いを定めていたけども、俺の発言でルーシャンナルさんをはじめとしたエルフさん達が動きを止める。
瞬時に行動を切り替えてくれるのは優秀の証だね。
――さて。
見た感じ、野生のゴブリンってところか。
魔王軍のゴブリンとは装備が明らかに違うからな。
革鎧でも利器でもない。全裸を隠す程度の襤褸からなる服装と、尖頭器や棍棒による装備だからね。
本来なら野生のゴブリンだし敵対しているから討伐するのもいいんだろうけど、アルスン翁の顔がちらつくんだよな~。
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