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エルフの国
PHASE-1037【我が目で知れということね】
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「すみません。答えづらい立場である御方であるのに、ぶしつけなことを……」
「いえいえ」
ルミナングスさんが胃の部分を擦りつつ俺に謝罪。
ストレスを溜め込むタイプだね。親近感がある。一緒に胃をエメンタールチーズにしてみますか?
対してシャルナは、ぶしつけなのは育った環境と切り返す。
出会った時の父親に対する恐れは無くなっていた。
それだけこの身分制度に対しては、強い不満を抱いているんだろう。
ルミナングスさんも、シャルナの発したウーマンヤールという階級に対するあつかいには反対していると返していたが、それでもシャルナの機嫌はよくならなかった。
有り難かったのは、まだ内情を把握できていない状況下で、他国の事に関しての言動は選ばないといけないという判断をしたのが俺だけではなく、パーティーメンバーも同様だったようで、その辺の発言を避けるために口は開かないでいてくれたことかな。
ルミナングスさんは、俺達がこの国に留まっている間、この国をよく見て回り、エルフの世界を堪能しながら実情も理解していただきたいと言ってくる。
この発言にて、強制的に階級の話題を終わらせた。
――――。
「ファンタジー全開な国ではあるけども、中に入れば人間の世界とそこまで変わらない内情がありそうだな」
なんて独白しつつ、エリシュタルトでの初めての朝を迎える。
窓から外の風景を眺めながらの起床。
外界とは一定の付き合いを持ちつつ距離もとる国。
大通りを移動してきた時は、俺達に対する歓声が樹上から上がっていたが――、それだけだった。
人間が住まう町ならば、大通りとなると旅商人たちが街商を開いて派手に声を上げて客引きをし、その周辺の酒場などからは哄笑が聞こえてくるものだが、ここには喧騒がない。
この国の大通りは、普段は静かな場所だというのが分かる。
街商もなければ、その旅商人を目的とした宿屋兼酒場などというものもない。
なのでこのドリルブロッコリーから見下ろせば、大通りへと続く道は朝だというのに暗い。
城壁の向こう側も同じような光景だろう。
わずかな灯りも見えるが、夜にあそこを歩くには不便というもの。
これはエルフが暗闇の中でもしっかりと見通す目を持っているからってことなんだろうな。
つまりは他種族の事を考えていない道ということ。
基本、有事などが起こらないかぎり、他種族をこの国へと迎え入れることはほぼ無いと考えていい隔絶された国だ。
現エルフ王はこっちの王様に対して協力もしてくれるし、心の友の領民を避難させてくれたことからして、開放的な一面もあると思われるが、人間サイドから見ればまだまだ閉鎖的だ。
後は、次の王様がどんな方針をとるかが心配なところ。
カリオネルのような馬鹿ではないだろうが、大陸が危機的な状況下で閉鎖的な考えだけはやめてもらいたいと思っている。
――。
「おはよう」
「おはよう」
シャルナからのオウム返し。
「おやじさんは?」
「朝早くから国の警邏」
ぶっきらぼうな言い様からして、昨日のルミナングスさんとのやり取りにまだしこりが残っている模様。
まったく二千年近く生きといてこの辺は子供ですな。
エルフって長命ってだけで、心の成長とかはすっごく遅いんじゃないのだろうかと、シャルナを見てると思ってしまう。
「ふぃ~」
「朝からかよ」
広間ではギムロンが持参した酒を楽しんでいた。
一つの呼気で俺にまでしっかりと酒気が届く。
起きたての物憂いな頭にはいい気付けだ。
目がバチコーンと開くってもんだ。
「おはようさん。いい匂いじゃないか」
と、まるで酒の匂いに誘われたかのようにゲッコーさんもやってくる。
駆けつけ一杯と、ギムロンは使用していた杯をゲッコーさんに手渡せば、なみなみと注ぎ、ゲッコーさんは躊躇することなくドワーフが愛飲する度数の強い酒を一気に飲み干す。
強酒な二人はなんとも楽しげに朝から酒盛り。
別に休日をとってこの国に来たわけじゃないんですがね……。
「ちょっと! 今日はエリンダルク王に会うんだから、お酒のニオイを纏わないでよね。漂わせるのも駄目!」
「「へ~へ~」」
シャルナに軽く返せば、再び飲み始める二人。
酒に関しては本当にいいコンビだよ。
王都で酒蔵やってるのは伊達じゃないね。
蔵元と協力者はシャルナが不機嫌な視線を向けても楽しんでいたが――、
「酒量は控えるべきですね」
冷ややかな声がベルの朝の挨拶。
「「ああ、はい……」」
ベルの発言で酒はそそくさと片付けられる。
流石だな。
「でさ、エルフ王ってどんな人?」
一通りの流れを見終えてから質問。
「優秀な――方ではある」
なんとも含みのある言い方だな。
――――エルフ間でのいざこざを平定させた英雄という前置きがありつつも、その後の政策で氏族派閥を押し切ることが出来なかったのが残念だったとのこと。
あえて内容を説明しないのは、ルミナングスさんがこの国を見て回れば分かること。
と、言っていたから、俺達が自分の目で見て判断するように。と、シャルナも考えているようだな。
「いえいえ」
ルミナングスさんが胃の部分を擦りつつ俺に謝罪。
ストレスを溜め込むタイプだね。親近感がある。一緒に胃をエメンタールチーズにしてみますか?
対してシャルナは、ぶしつけなのは育った環境と切り返す。
出会った時の父親に対する恐れは無くなっていた。
それだけこの身分制度に対しては、強い不満を抱いているんだろう。
ルミナングスさんも、シャルナの発したウーマンヤールという階級に対するあつかいには反対していると返していたが、それでもシャルナの機嫌はよくならなかった。
有り難かったのは、まだ内情を把握できていない状況下で、他国の事に関しての言動は選ばないといけないという判断をしたのが俺だけではなく、パーティーメンバーも同様だったようで、その辺の発言を避けるために口は開かないでいてくれたことかな。
ルミナングスさんは、俺達がこの国に留まっている間、この国をよく見て回り、エルフの世界を堪能しながら実情も理解していただきたいと言ってくる。
この発言にて、強制的に階級の話題を終わらせた。
――――。
「ファンタジー全開な国ではあるけども、中に入れば人間の世界とそこまで変わらない内情がありそうだな」
なんて独白しつつ、エリシュタルトでの初めての朝を迎える。
窓から外の風景を眺めながらの起床。
外界とは一定の付き合いを持ちつつ距離もとる国。
大通りを移動してきた時は、俺達に対する歓声が樹上から上がっていたが――、それだけだった。
人間が住まう町ならば、大通りとなると旅商人たちが街商を開いて派手に声を上げて客引きをし、その周辺の酒場などからは哄笑が聞こえてくるものだが、ここには喧騒がない。
この国の大通りは、普段は静かな場所だというのが分かる。
街商もなければ、その旅商人を目的とした宿屋兼酒場などというものもない。
なのでこのドリルブロッコリーから見下ろせば、大通りへと続く道は朝だというのに暗い。
城壁の向こう側も同じような光景だろう。
わずかな灯りも見えるが、夜にあそこを歩くには不便というもの。
これはエルフが暗闇の中でもしっかりと見通す目を持っているからってことなんだろうな。
つまりは他種族の事を考えていない道ということ。
基本、有事などが起こらないかぎり、他種族をこの国へと迎え入れることはほぼ無いと考えていい隔絶された国だ。
現エルフ王はこっちの王様に対して協力もしてくれるし、心の友の領民を避難させてくれたことからして、開放的な一面もあると思われるが、人間サイドから見ればまだまだ閉鎖的だ。
後は、次の王様がどんな方針をとるかが心配なところ。
カリオネルのような馬鹿ではないだろうが、大陸が危機的な状況下で閉鎖的な考えだけはやめてもらいたいと思っている。
――。
「おはよう」
「おはよう」
シャルナからのオウム返し。
「おやじさんは?」
「朝早くから国の警邏」
ぶっきらぼうな言い様からして、昨日のルミナングスさんとのやり取りにまだしこりが残っている模様。
まったく二千年近く生きといてこの辺は子供ですな。
エルフって長命ってだけで、心の成長とかはすっごく遅いんじゃないのだろうかと、シャルナを見てると思ってしまう。
「ふぃ~」
「朝からかよ」
広間ではギムロンが持参した酒を楽しんでいた。
一つの呼気で俺にまでしっかりと酒気が届く。
起きたての物憂いな頭にはいい気付けだ。
目がバチコーンと開くってもんだ。
「おはようさん。いい匂いじゃないか」
と、まるで酒の匂いに誘われたかのようにゲッコーさんもやってくる。
駆けつけ一杯と、ギムロンは使用していた杯をゲッコーさんに手渡せば、なみなみと注ぎ、ゲッコーさんは躊躇することなくドワーフが愛飲する度数の強い酒を一気に飲み干す。
強酒な二人はなんとも楽しげに朝から酒盛り。
別に休日をとってこの国に来たわけじゃないんですがね……。
「ちょっと! 今日はエリンダルク王に会うんだから、お酒のニオイを纏わないでよね。漂わせるのも駄目!」
「「へ~へ~」」
シャルナに軽く返せば、再び飲み始める二人。
酒に関しては本当にいいコンビだよ。
王都で酒蔵やってるのは伊達じゃないね。
蔵元と協力者はシャルナが不機嫌な視線を向けても楽しんでいたが――、
「酒量は控えるべきですね」
冷ややかな声がベルの朝の挨拶。
「「ああ、はい……」」
ベルの発言で酒はそそくさと片付けられる。
流石だな。
「でさ、エルフ王ってどんな人?」
一通りの流れを見終えてから質問。
「優秀な――方ではある」
なんとも含みのある言い方だな。
――――エルフ間でのいざこざを平定させた英雄という前置きがありつつも、その後の政策で氏族派閥を押し切ることが出来なかったのが残念だったとのこと。
あえて内容を説明しないのは、ルミナングスさんがこの国を見て回れば分かること。
と、言っていたから、俺達が自分の目で見て判断するように。と、シャルナも考えているようだな。
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