異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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トール師になる

PHASE-1069【片膝つくとか……やだも~】

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「それにしてもサルタナ君。トール様のお弟子なんですね」

「あ、はい。僕なんかを弟子にしてくれて光栄に思っています」

「羨ましいです」
 本心だったようで、エリスの声は本当に羨んでいた。

「羨むな――お前も歩んでいく道だ」
 と、即効でコクリコがパクリのパクリをアレンジしての発言。
 ドヤ顔で発言はするも、一応は発言者である俺を警戒はしている。
 でも俺もリアフレからパクった手前、偉そうな事は言えないので鷹揚に頷くことでコクリコの発言を許すスタイル。

「えっと――お前も歩んでいく道だ。ということは――つまりは僕もトール様の弟子になれるということですか!」
 ――――ん? んん!?
 なんでそうなる。
 ――……いや、話の流れからしたらそなるのか――な?
 うん……。そうとらえられても仕方のない内容だね。
 しかも俺、コクリコの発言に対して鷹揚に頷いているから、肯定しているようにもとられるよね。
 あれ? この流れはエリスも俺の弟子になるって流れか?

 いやいや、ちょっと待て。
 エルフの国の次期王が俺の弟子とか問題しかないだろう。
 間違いなくそれを知れば、ストレスでルミナングスさんの胃が崩壊してしまう。
 なによりも気位の高い他の氏族の連中がなにを言い出すか分かったもんじゃない。

「あの……駄目でしょうか……」
 やめてくれ……。そんな寂しい目で俺を見るんじゃないよ。
 この部分だけを女性たちに見られれば、俺は完全に世の女性たちを敵に回してしまいそうだよ……。

「いいんじゃねえか」

「おいギムロン!」
 酒を楽しみながら適当な事を言うんじゃないよ。
 お前が肯定的な発言をした途端に、エリスの表情は期待から明るくなったよ。

「剣術指南役という立場になるのもいいかもしれませんよ。トールがやらないのならばこの私が――」

「お前がなったら変なポージングばかり教えるだろ!」

「失礼な! ここぞという場面で時宜を見計らった登場なども教えますよ!」

「余計にいらねえよ!」
 次期王に変な事でも教えたら、それこそこの国の方々から冷たい視線を向けられることになるっての!
 今までと違って真逆の視線を向けられるっての!

「そこのお二人どう思います?」

「「え!?」」

「忌憚のない意見を求めます」
 護衛のハイエルフさん達に振ってみる。
 案の定というべきか右往左往。
 とても自分たちでは対応できない案件だと思ったようだけども、意を決したように二人して頷くと、

「勇者様は殿下の命のご恩人。何よりも公爵様でもあります。勇者としてのお立場にご身分と、十二分にその資格を持ち得ておりますので問題ないかと」
 一人が代表してそう言ってくる。
 俺としてはそう易々と受けないでください。といったような発言を期待したんですけどね……。

「トール様、お願いです。僕も弟子にしてください。魔法は使用できるのですが、恥ずかしながら剣術、弓術はまるで駄目でして……」
 ほう、剣術はともかく、エルフなのに弓術が駄目とはね。
 かくいう俺も弓は使わないけどね。
 弓を使ったのって、確か――タフネスやらビジョンをカイル達にインスタントで教わった時、先生の護衛役であるハンター職のジュセルから手ほどきを受けた程度だよな。

 二刀流もだけど、そっち方面もしっかりと学ばないといけないよな。
 銃があるから別にいいっちゃいいけども。
 可能ならば様々な武器を扱えるようにはなりたいけどね。
 勇者たるもの万に通ずってね。
 俺の知る勇者はいろんなモノを扱いこなせるってイメージだしな。

「トール様?」
 ――……などと自分の事を考えて、目の前の現実から逃げたかったんだけども……。

「はっきりしなさい!」

「ぅあいた!?」
 コクリコからの蹴りは強烈なものだった。
 俺の外側広筋にダメージを与えるとはベルみたいだな。

「お願いしますトール様。僕をトール様の二番弟子にしてください」

「おお……」
 片膝つかれてのお願いとかこれ大丈夫なの? 外交的な問題に発展しないよね!?

「おいおい、次代の王に片膝をつかせたぞ」
 言うなギムロン。
 ルミナングスさんどころか、俺の胃も大変な事になってしまう……。
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