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トール師になる
PHASE-1070【二番弟子】
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「分かった。分かったから体を立たせようか。弟子として迎え入れるよ」
「はい!」
なんて屈託のない笑みなんだ……。
弟子入り出来た途端に、一帯を明るく照らすような幻視を見せてくる笑みだった。
とても八百歳を超えているとは思えないあどけなさ……。
護衛の二人はとてもめでたいとか言って喜んでるし……。
「ではこれからは僕も弟子として励みます! やはり王となる以上、民を守る為の強さも重要ですから!」
「その民にはウーマンヤールも含まれるのでしょうか」
おっと、コクリコ。ここでも姉御肌。
「無論です!」
おっと、躊躇を見せることなく即答だよ。
「僕は今よりももっと開けた国にしたいと思っております。変革もなく閉ざされた国となったのは、長命によって次の代に移行する事なく居座り続ける者達が原因だと思っています。それを正していき、才ある者が国を動かしていくべきと考えています。才なき者がいつまでも上に居座ってはいけないのです」
おお――。
はっきりと言い切ったな。
これには護衛の二人も驚いているよ。
才なき者が居座ってはいけない。氏族やそれに組みする者達の事を暗に言っているようだった。
「なので――自身の発言を証明する為にも、行動で示さないといけないと思います」
「ほう。そりゃなんじゃい?」
ゲッフと下品にゲップをしつつエリスに問えば、エリスの目は真っ直ぐサルタナの方へと向けられる。
目が合えばサルタナは恐れ多いとばかりに視線を逸らすが、構わずエリスはサルタナの手をしっかりと掴んで握り、
「これからは共に切磋琢磨して励みましょう! 兄弟子!」
「え、ええ!?」
次期王が平民――しかもハーフエルフである自分を兄弟子と呼ぶ。
当然ながらサルタナはパニック。目を激しく泳がせていた。
「僕が二番弟子ですから当然ですよね師匠」
「お、おお。そうだな。俺の弟子となるならそこに王族も平民もない。弟子は対等だ」
「その通りです。ですのでよろしくお願いします。兄弟子」
「あ、はい……」
護衛の二人もエリスと俺が決めたという事もあってか、割って入るという無粋な事はせずただただ静観。
でも表情は些か曇り気味。
そんな二人に、
「これは師と弟子たちの中でのこと。余計な事は言わないように」
しっかりと釘を刺すのはコクリコ。
ギムロンも無粋なことは望まないと続けば、護衛の二名は首を縦に振るしか出来ないでいた。
サルタナは次期王が弟弟子という存在になったことに困惑気味。
年齢はエリスの方がかなり年上だけど、背格好だけで見れば同年代。
そんなエリスの邪気の無い笑顔を向けられれば、困惑していたサルタナも素直に笑顔で返していた。
うむ――。
エリスが考えるこの国の将来を思わせる光景だ。
階級から実力主義の国。誰でも努力すればチャンスが与えられる国。
この二人の関係性が、今後の国の指標になってくれれば師として嬉しい限り。
惜しむらくは、この弟子達がどう成長して立派な大人になるかってのは間違いなく見る事は出来ないってことだな。
魔王をぶっ飛ばして元の世界に帰るってのもあるけど、単純に寿命によって二人の成長を見守ることは出来ないからな。
「よし。じゃあまずは僕も自分の木剣を準備しないと!」
「ならば我々が鍛錬で使用しているものから上質の物を」
「いや、殿下が使われるのだ。ここはミスティルテインから一から作るのはどうか」
二人して盛り上がっているところ悪いけども、
「へたっぴ」
「「え?」」
「分かってないですね~お二人さん。そう言うのは取り巻きが盛り上がれば盛り上がるほど、中心に立つ者は冷めるんですよ」
俺からの指摘を受けて直ぐさまエリスを見れば、苦笑いだったのに気付いて平謝りの護衛さん達。
「まずはエリスの振りを見てみたい。サルタナ――」
「はい」
元気よく腰帯に差している木剣をエリスへ手渡そうとする。
その所作は両手で持っての恭しい姿だった。
「弟弟子にそんな気づかいは必要ない、片手で持って普通に手渡せばいい」
「その通りですよ兄弟子」
エリスからも言われるが、挙動が慎ましくなるのはしかたがないか。
弟弟子とはいえ、相手は次期王だからな。態度を一新させるには時間が必要なようだ。
俺とエリスを忙しく見つつ、俺の発言に従って片手で手渡すサルタナの挙動はギクシャクしたもの。
つい笑いそうになってしまった。
「有り難うございます」
と、エリスは一言と一礼。
凹凸のあるまだまだ木剣とは言いがたいサルタナの得物を受け取り、距離をあけてから――一振り。
――……。
護衛の二名は素晴らしいと言ってはいるが、声は上擦ったもの。
接待ゴルフは任せられないタイプだ。
「へたっぴ」
と、今度は俺ではない。
護衛の二人と違って忖度なんて知らねえよ。とばかりにコクリコによるへたっぴ発言。
一瞬にして護衛の二人が固まってしまう。
二人だけ時が止まったようだった。
「はい!」
なんて屈託のない笑みなんだ……。
弟子入り出来た途端に、一帯を明るく照らすような幻視を見せてくる笑みだった。
とても八百歳を超えているとは思えないあどけなさ……。
護衛の二人はとてもめでたいとか言って喜んでるし……。
「ではこれからは僕も弟子として励みます! やはり王となる以上、民を守る為の強さも重要ですから!」
「その民にはウーマンヤールも含まれるのでしょうか」
おっと、コクリコ。ここでも姉御肌。
「無論です!」
おっと、躊躇を見せることなく即答だよ。
「僕は今よりももっと開けた国にしたいと思っております。変革もなく閉ざされた国となったのは、長命によって次の代に移行する事なく居座り続ける者達が原因だと思っています。それを正していき、才ある者が国を動かしていくべきと考えています。才なき者がいつまでも上に居座ってはいけないのです」
おお――。
はっきりと言い切ったな。
これには護衛の二人も驚いているよ。
才なき者が居座ってはいけない。氏族やそれに組みする者達の事を暗に言っているようだった。
「なので――自身の発言を証明する為にも、行動で示さないといけないと思います」
「ほう。そりゃなんじゃい?」
ゲッフと下品にゲップをしつつエリスに問えば、エリスの目は真っ直ぐサルタナの方へと向けられる。
目が合えばサルタナは恐れ多いとばかりに視線を逸らすが、構わずエリスはサルタナの手をしっかりと掴んで握り、
「これからは共に切磋琢磨して励みましょう! 兄弟子!」
「え、ええ!?」
次期王が平民――しかもハーフエルフである自分を兄弟子と呼ぶ。
当然ながらサルタナはパニック。目を激しく泳がせていた。
「僕が二番弟子ですから当然ですよね師匠」
「お、おお。そうだな。俺の弟子となるならそこに王族も平民もない。弟子は対等だ」
「その通りです。ですのでよろしくお願いします。兄弟子」
「あ、はい……」
護衛の二人もエリスと俺が決めたという事もあってか、割って入るという無粋な事はせずただただ静観。
でも表情は些か曇り気味。
そんな二人に、
「これは師と弟子たちの中でのこと。余計な事は言わないように」
しっかりと釘を刺すのはコクリコ。
ギムロンも無粋なことは望まないと続けば、護衛の二名は首を縦に振るしか出来ないでいた。
サルタナは次期王が弟弟子という存在になったことに困惑気味。
年齢はエリスの方がかなり年上だけど、背格好だけで見れば同年代。
そんなエリスの邪気の無い笑顔を向けられれば、困惑していたサルタナも素直に笑顔で返していた。
うむ――。
エリスが考えるこの国の将来を思わせる光景だ。
階級から実力主義の国。誰でも努力すればチャンスが与えられる国。
この二人の関係性が、今後の国の指標になってくれれば師として嬉しい限り。
惜しむらくは、この弟子達がどう成長して立派な大人になるかってのは間違いなく見る事は出来ないってことだな。
魔王をぶっ飛ばして元の世界に帰るってのもあるけど、単純に寿命によって二人の成長を見守ることは出来ないからな。
「よし。じゃあまずは僕も自分の木剣を準備しないと!」
「ならば我々が鍛錬で使用しているものから上質の物を」
「いや、殿下が使われるのだ。ここはミスティルテインから一から作るのはどうか」
二人して盛り上がっているところ悪いけども、
「へたっぴ」
「「え?」」
「分かってないですね~お二人さん。そう言うのは取り巻きが盛り上がれば盛り上がるほど、中心に立つ者は冷めるんですよ」
俺からの指摘を受けて直ぐさまエリスを見れば、苦笑いだったのに気付いて平謝りの護衛さん達。
「まずはエリスの振りを見てみたい。サルタナ――」
「はい」
元気よく腰帯に差している木剣をエリスへ手渡そうとする。
その所作は両手で持っての恭しい姿だった。
「弟弟子にそんな気づかいは必要ない、片手で持って普通に手渡せばいい」
「その通りですよ兄弟子」
エリスからも言われるが、挙動が慎ましくなるのはしかたがないか。
弟弟子とはいえ、相手は次期王だからな。態度を一新させるには時間が必要なようだ。
俺とエリスを忙しく見つつ、俺の発言に従って片手で手渡すサルタナの挙動はギクシャクしたもの。
つい笑いそうになってしまった。
「有り難うございます」
と、エリスは一言と一礼。
凹凸のあるまだまだ木剣とは言いがたいサルタナの得物を受け取り、距離をあけてから――一振り。
――……。
護衛の二名は素晴らしいと言ってはいるが、声は上擦ったもの。
接待ゴルフは任せられないタイプだ。
「へたっぴ」
と、今度は俺ではない。
護衛の二人と違って忖度なんて知らねえよ。とばかりにコクリコによるへたっぴ発言。
一瞬にして護衛の二人が固まってしまう。
二人だけ時が止まったようだった。
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