異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

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PHASE-1090【里見さんで見取り稽古しとけばよかった】

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「気概を見せるよりもポルパロングの場所まで案内しなさい」

「ファロンド様のご息女。戦いとなった以上それは出来ません。言われるままに主の元へと案内すれば、貴方方に屈したこととなります。そうなれば兵士として生きていけません。何より不忠者と後ろ指をさされれば、エルフとしても生きていけません」

「その忠義は王に捧げなさいよ」

「捧げておりますよ。同じようにシッタージュ様にも捧げております」

「訳分かんないんだけど」

「分かんなくていいんじゃないか」
 シャルナと兵達の間に立つ。

「要はメンツの問題だよな。気位の高い種族さん」

「その通りです」

「よっしゃ来いよ」
 俺としても及び腰の相手ではなく、気概のある連中と戦わないと実力は上達しないからな。

「アッパーテンペスト」

「おう!?」
 シャルナ同様の魔法が俺がさっきまで立っていた足元から顕現。
 跳躍で回避したところに――、

「「「ウインドランス」」」
 と、三方向から風の槍が投擲される。

「そい、そい、そい!」
 残火とエドワードでこれらを迎撃。
 今の両手での迎撃は左右を独立して動かせた。
 
 着地したところで、フロートという発言が耳朶に届く。
 床を滑るようにして兵達が俺に向かって接近。
 手にしたショートソードは躊躇なく俺に振り下ろされる。

「よっ!」
 残火で切り払えば剣身は容易く断ち切れる。
 剣には魔法付与が施されていなかった。
 装剣は立派だけども、生産性重視の数打ち物だったようだ。
 統一性のない立派な見た目は、長い時間の間に個々で装飾したものってところか。

「悪いな愛剣を断ち切って」

「結構ですよ」
 更にフロートと周囲から聞こえれば、俺に向かって接近戦をしかけてくるエルフ兵達。
 タイミングはいいけども。

「なんで俺にばかり集中するのか」

「アッパーテンペスト」
 ここで俺にとっての元祖使い手であるシャルナが、俺に迫る一人の足元にタイミングドンピシャで竜巻を顕現させる。
 木の葉のように軽々と宙に舞う。

「ファイヤーボール」
 宙を舞う兵に対して追撃の魔法はリンから。
 いつものバランスボールサイズと違って、野球ボールサイズの火球。
 直撃すれば爆発が生まれる。
 下方にいた他の兵達は熱風に顔を歪ませ、腕で歪んだ顔を覆う。

「動きを止めるのはどうなのさ! それだとさっきの連中と変わらないぞ」
 すかさずそこに俺が接近。
 二振りの刀剣を振り回しバタバタと倒していく。
 ――……うむん……。
 魔法の迎撃はよかったけども、動きながら複数人への連撃ってなるとまだまだなのが分かる。
 意識していないと二振りの刀剣は同じ軌道を描いてしまう。
 
 一撃目は左右に持った得物を別々に振ることで二人同時にダウンさせられたけど、三人目に対して打ち込んだ上段からの振り下ろしは、両手による振り下ろし。
 なので四人目の攻撃には一手遅れることになった。
 三人目も残火かエドワードのどちらか片方で対処しつつ、四人目に対して残った方を使用すれば、一撃目同様に、同時に倒す事が可能だった。
 もっと効率の良い立ち回りをしないとな。

 こんな事なら生前の夏休み、朝に放送されていた昔の時代劇【長七郎天下ご免!】をしっかりと見ていればよかった。
 ゲームばっかりしてないで、流れるような美しい二刀流の殺陣を目に焼き付けるべきだった。

 ――――もっと経験を積みたかったが――、

「貴男で終わり」
 シャルナの蹴りを受ければ、エルフ兵が姿勢を崩して後退。
 後退する場所にはリンが佇む。

「終わりって言うならちゃんと終わらせなさい」
 言いつつ手に電流を纏わせ肩にタッチ。
 体を震わせると、最後の一人が力なく膝から崩れる。
 口や耳から煙が上がっていた。

「死んだ? 死んでないよな?」

「大丈夫。貴男が手心を加えている時点で、それに付き合ってやるわよ」

「それは感謝だよ」
 ファイヤーボールも手加減してたもんな。
 今のはスパークタッチなる非殺傷の低位魔法だという。
 コクリコのアークディフュージョンの単体バージョンのようである。
 
 エルフ兵達、気概を見せたのは評価するけど、正直、役不足だった。
 当初は手間取るとも思ったが、気概と実力に開きがあったね。
 
 ルミナングスさんとこの方々と比べると、練度が圧倒的に低い。
 どれだけ長命であっても、練度が大事だというのが分かる。
 多様な魔法を使用できるだけの力はあるわけだから、実力向上は今後の本人たちの心構え次第だろう。
 いま倒れている面々は、逃げ出した私兵と違って変わろうとしているから、そこは期待できる。
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