異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』

FOX4

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トール師になる

PHASE-1099【上から約五十トン】

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「いい加減にしろ! ブラストスマッシュ!」
 姿勢を崩しつつも三つの拳が俺たち三人に向けられる。
 即座に二人からはプロテクションという声が上がり、至近にいた俺もピーカブースタイルでイグニースを展開。
 使う時には柔軟に使う。

「あら!?」
 問題なく防げると思ったけども中々の威力だった。
 圧縮された風の塊による衝撃を正面から受ければ、ガードは出来ても体が浮かされる。

「くたばれ!」
 宙を舞う俺に迫る大きな掌。

「なろ!」
 宙空で姿勢を整えて、俺は空中に立つ。
 シャルナの機転でプロテクションを足場としてくれる。
 迫る掌に、

「パーにはチョキだろ」
 障壁を蹴って跳躍し、二振りの刀剣で迎撃。
 掌に斬撃二閃。

「あらら!?」
 残火は振り抜くことが出来たが、左手に持ったエドワードが途中で止まってしまう。
 さらに悪いことに俺の手からも離れてしまう。
 床へと着地してガグの掌を見れば、しっかりとエドワードが刺さっていた。

「なぜこうも思い通りにいかん! この力は最強となるべく与えられたというのに! ええい! こんなところで時間を使うのも馬鹿らしい!」
 苛立ちつつ、残火で斬られた箇所と掌に刺さったエドワードを引き抜いて直ぐさまヒール。
 続けてイライラをぶつけるように抜いたエドワードを大きな手でへし折った。

「ああ! 俺のエドワード!」

「黙れ! これはそんな名ではない! そもそもテイワイズの得物であろうが!」

「まあ、そうなんだけど。戦利品で俺の剣にしたんだよ」

「勇者ではなくただの盗人だな。この国もそうやって奪うつもりなのだろう。あの御方の仰るとおりだ。やはり次のための行動を起こさねば」

「だから、あの御方って誰だよ!」

「……」
 なんでそこで沈黙するんだコイツは……。
 それに次ってなんだよ。
 もしかして王様に取って代わるつもりの行動に移行するって事か?
 口にする御方ってのが誰だか分からんが、もしかしたらそいつもこの国で行動している可能性がある。
 ――――これ以上ここで時間を使うのはよろしくないな。
 もう二刀流の練習も出来ない事だし、一気に決めにいこう。

「その刀を代わりによこしてもらおう!」

「お断りだね。エドワードの仇を取らせてもらう!」

「ならばテイワイズの仇である」

「殺してねえよ!」

「貴様は殺してやる!」
 殺意満々だけども、搦め手の攻撃を受ければ対応できなくなったり、思い通りにならない発言からガグの力を全て発揮できていないのは分かる。

「その力を扱うにはまだまだのようだな。ぶっつけ……」
 ――……本番で扱えるなんて思うな! と、発言をドヤって続けたかったけど、俺も基本ぶっつけ本番なので、ブーメラン発言を回避するため途中でやめた……。

「とにかく力に振り回されてるぜ」

「ぬかせ! 貴様等の体もこの剣のようにしてやろう!」

「トール。さっさとやっちゃって!」
 シャルナの発言に従ってさっさと終わらせよう。
 片手が寂しくなったのでエドワードの代わりにプレイギアを左手に持つ。

「エドワードの仇はエドワードで! さあ出てこいブラックプリンス歩兵戦車」

「なんだ!?」
 ガグの頭上にプレイギアを向ける。
 天井付近に発生する強い光を直視しないよう、ガグは残った腕三本を使って顔を覆う。

「それは失敗だ。タンクメテオをくらうヨロシ」

「ぬぅ!? うぉぉぉぉぉぉぉ……」
 光が消えると同時に現れるのは全高約三メートル、全長約九メートルの黒い巨塊。
 ガグのサイズを超える巨塊が頭上から落ちてくる。
 その巨塊を受け止めようとしているけども、如何に強靱な肉体を持つ巨体であっても難しいだろう。

 約五十トンからなるブラックプリンスの重量を支えるのは不可能。
 だと思ったけども、

「フゥウンンンンンンッ!」
 片膝をつき、三本の腕で懸命に支えて下敷きになるのを回避している姿は凄いと称賛をおくりたい。
 小癪な手を使うとばかりに、血のような赤い虹彩に囲まれた黒い瞳孔を細めると、こちらを強く睨んでくる。
 現状、睨みそれしか出来ないと言うのが正解かな。
 支えるだけで手一杯。
 でもそれも限界。

「ぅ、ヌァァァァァァァァァ――!」
 ――はい、終了。
 巨体であり怪力であろうとも、流石に五十トンを支えるだけの膂力はないよな。
 この重量に耐えうるのはファンタジー世界でも難しいところだろう。

「戻れ」
 ブラックプリンスをプレイギアに戻す。

 まあでも――、

「肉塊にならなかっただけでもファンタジー世界の不思議な力には驚かされるけどね」
 普通なら五十トンが上から落ちてくればミンチだからな。

「はぁ……ハァ、ハァ…………」
 伏臥の姿勢で息も絶え絶え。
 もう戦うだけの気力も体力もないだろう。

 
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