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トール師になる
PHASE-1114【整えさせる前に行動】
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「いい連携と撤収で」
姿が見えなくなった相手に称賛の言葉を投げる。
狼たちもしっかりと調教されているようだな。
ベルの圧によって攻撃を行わなかったミストウルフだったけど、撤退時はしっかりと働く。
偵察に報告、サポートをこなせる立派な戦闘要員だ。
反乱を企てるための戦力として十二分に力を発揮するだけの調教をしている。
――いや、さっきのネクレス氏の発言を思い返せば、調教されているって言っていたな。
自分たちとは違い、第三者が調教しているような言い様だった。
やはりミストウルフを準備したのはカゲストと考えていいかもね。
「さて、考え事はもういいか?」
「悪いベル」
「どうする? 直ぐに後を追った方がいいだろう」
「だな。こっちの動きがバレバレな以上、態勢を整えられる前に仕掛けた方がいいかもしれない」
有り難いのはネクレス氏たちと戦闘に入る前に、ゲッコーさんとシャルナ。それとリンファさんが別行動をとれたことだろう。
問題はミストウルフには見られているってところだけど、言葉を発せないから深い意思疎通は出来ないと信じたい。
もし意思疎通が出来たとしてもゲッコーさんをこの森の中から見つけ出すのは難しいから、その辺の心配はしなくてもいいだろう。
潜伏、潜入のプロであるゲッコーさんならシャルナ達をつれていても見つかることはないはず。
別働隊を編制したのは正解だった。
ならば俺たちが別働隊にしてやれる事は、あえて派手に行動し、ゲッコーさん達の集落潜入の難易度を下げてやる事だろう。
「兵法三十六計、第六計、声東撃西ってやつだな」
先生や荀攸さんから影でちょこちょこ学んでた事をドヤって発言。
本心だと第三計の借刀殺人がいいんだけど、他力本願をスパルタ二人は許さないから実行できないのが俺という存在。
兵法三十六計って兵法書自体は、荀氏二人が活躍した後の時代のモノらしいけど、俺のような目先のドヤり使用ではなく、後の歴史からもしっかりと知識を蓄えていくところが俺と賢者さん達との圧倒的な違いなんだろうね――。
「なんですそれ? あの――トール?」
コクリコの呼びかけにはたとなり、現実に引っ張り戻されたところで、
「派手にやれって事だ」
と、発する。
「それならば私の独擅場!」
肩口まで伸びたラセットブラウンの髪を揺らし、琥珀の瞳を闇夜に煌めかせ、木々に覆われた空を見上げる笑みは勝ち気なもの。
「頼りにしているぞコクリコ」
気がかりなのは、
「ブラフだったらいいんだけども――」
ここで判断を間違ったらえらいことになるのは必至。
こちらには熟考する猶予もない。
ならば――一つしか解決策はない。
「ベル」
「いいだろう」
嬉しいね。全てを言わなくても心が繋がっているのは。
となるとサルタナ――だと足が遅い。
ルーシャンナルさんが適任かな。
「いや戦力をこれ以上割くのはよくない。私一人で行動する」
俺が二人を見て何を考えていたのかも直ぐに理解してくれたようだ。
「大丈夫か?」
「全くもって問題ない」
俺もベルも主語が抜けまくっているけども、俺の問いかけにベルは森全体を見渡し、
「中央までの道は把握している」
流石は帝国軍最強の人物。
背の高い木々。鬱蒼とした下生えがあろうともお構いなし。
移動時に地系もしっかりと頭の中に記憶したそうだ。
ビジョンが使用できなくても、夜目がそんなに利かずとも最強さんには問題ないようだ。
「じゃあ――頼む!」
「任せておけ」
微笑みと共に返してくるベル。俺の鼓動が早鐘を打つ。
俺が俺の側でベルに頼らず、離れた位置を任せようとした事を成長と判断した中佐殿は、その事がとして嬉しかったご様子。
――――中央へと戻るベルの背中を見送ってから、
「行こうか」
「行きましょう」
早鐘を打っていた鼓動が正常に戻り、声を整えて発せば、真っ先に呼応するコクリコが先頭へと立つ。
「では、相手の迎撃が整わないように移動速度を上げます」
と、ルーシャンナルさんがコクリコの前に立つ。
「サルタナは道が分かっているからな。遅れてもいいから無茶はしないでついてくるんだぞ」
「はい」
とはいえ流石に一人には出来ないので――、
「リン」
「はいはい」
ベル同様に主語抜きでも話が通じ合うのは有り難い。
即座にエルダースケルトンを二体召喚してくれる。
アンデッドであるスケルトンが側に立てばサルタナは顔を引きつらせてしまうが、
「問題ない。お前を守ってくれる頼もしい方々であり、紳士だ」
「そういう事だ。我々がしっかりと守ってやろう」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「流石は勇者の弟子である。礼儀正しい。少しは我らが主も見習ってもらいたいものだ」
「うっさいわね」
相変わらずのやり取りだな。
シャルナに対しては強いリンも、自身が使役するアンデッド達にツッコまれると弱かったりする。
まあ、逆もまた然りだけど。
愛嬌のあるアンデッド達である。
上位アンデッドであるエルダー二体の護衛。サルタナの身辺に心配はない。
「よし! ベルを信じて俺たちは前へと進もう!」
姿が見えなくなった相手に称賛の言葉を投げる。
狼たちもしっかりと調教されているようだな。
ベルの圧によって攻撃を行わなかったミストウルフだったけど、撤退時はしっかりと働く。
偵察に報告、サポートをこなせる立派な戦闘要員だ。
反乱を企てるための戦力として十二分に力を発揮するだけの調教をしている。
――いや、さっきのネクレス氏の発言を思い返せば、調教されているって言っていたな。
自分たちとは違い、第三者が調教しているような言い様だった。
やはりミストウルフを準備したのはカゲストと考えていいかもね。
「さて、考え事はもういいか?」
「悪いベル」
「どうする? 直ぐに後を追った方がいいだろう」
「だな。こっちの動きがバレバレな以上、態勢を整えられる前に仕掛けた方がいいかもしれない」
有り難いのはネクレス氏たちと戦闘に入る前に、ゲッコーさんとシャルナ。それとリンファさんが別行動をとれたことだろう。
問題はミストウルフには見られているってところだけど、言葉を発せないから深い意思疎通は出来ないと信じたい。
もし意思疎通が出来たとしてもゲッコーさんをこの森の中から見つけ出すのは難しいから、その辺の心配はしなくてもいいだろう。
潜伏、潜入のプロであるゲッコーさんならシャルナ達をつれていても見つかることはないはず。
別働隊を編制したのは正解だった。
ならば俺たちが別働隊にしてやれる事は、あえて派手に行動し、ゲッコーさん達の集落潜入の難易度を下げてやる事だろう。
「兵法三十六計、第六計、声東撃西ってやつだな」
先生や荀攸さんから影でちょこちょこ学んでた事をドヤって発言。
本心だと第三計の借刀殺人がいいんだけど、他力本願をスパルタ二人は許さないから実行できないのが俺という存在。
兵法三十六計って兵法書自体は、荀氏二人が活躍した後の時代のモノらしいけど、俺のような目先のドヤり使用ではなく、後の歴史からもしっかりと知識を蓄えていくところが俺と賢者さん達との圧倒的な違いなんだろうね――。
「なんですそれ? あの――トール?」
コクリコの呼びかけにはたとなり、現実に引っ張り戻されたところで、
「派手にやれって事だ」
と、発する。
「それならば私の独擅場!」
肩口まで伸びたラセットブラウンの髪を揺らし、琥珀の瞳を闇夜に煌めかせ、木々に覆われた空を見上げる笑みは勝ち気なもの。
「頼りにしているぞコクリコ」
気がかりなのは、
「ブラフだったらいいんだけども――」
ここで判断を間違ったらえらいことになるのは必至。
こちらには熟考する猶予もない。
ならば――一つしか解決策はない。
「ベル」
「いいだろう」
嬉しいね。全てを言わなくても心が繋がっているのは。
となるとサルタナ――だと足が遅い。
ルーシャンナルさんが適任かな。
「いや戦力をこれ以上割くのはよくない。私一人で行動する」
俺が二人を見て何を考えていたのかも直ぐに理解してくれたようだ。
「大丈夫か?」
「全くもって問題ない」
俺もベルも主語が抜けまくっているけども、俺の問いかけにベルは森全体を見渡し、
「中央までの道は把握している」
流石は帝国軍最強の人物。
背の高い木々。鬱蒼とした下生えがあろうともお構いなし。
移動時に地系もしっかりと頭の中に記憶したそうだ。
ビジョンが使用できなくても、夜目がそんなに利かずとも最強さんには問題ないようだ。
「じゃあ――頼む!」
「任せておけ」
微笑みと共に返してくるベル。俺の鼓動が早鐘を打つ。
俺が俺の側でベルに頼らず、離れた位置を任せようとした事を成長と判断した中佐殿は、その事がとして嬉しかったご様子。
――――中央へと戻るベルの背中を見送ってから、
「行こうか」
「行きましょう」
早鐘を打っていた鼓動が正常に戻り、声を整えて発せば、真っ先に呼応するコクリコが先頭へと立つ。
「では、相手の迎撃が整わないように移動速度を上げます」
と、ルーシャンナルさんがコクリコの前に立つ。
「サルタナは道が分かっているからな。遅れてもいいから無茶はしないでついてくるんだぞ」
「はい」
とはいえ流石に一人には出来ないので――、
「リン」
「はいはい」
ベル同様に主語抜きでも話が通じ合うのは有り難い。
即座にエルダースケルトンを二体召喚してくれる。
アンデッドであるスケルトンが側に立てばサルタナは顔を引きつらせてしまうが、
「問題ない。お前を守ってくれる頼もしい方々であり、紳士だ」
「そういう事だ。我々がしっかりと守ってやろう」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「流石は勇者の弟子である。礼儀正しい。少しは我らが主も見習ってもらいたいものだ」
「うっさいわね」
相変わらずのやり取りだな。
シャルナに対しては強いリンも、自身が使役するアンデッド達にツッコまれると弱かったりする。
まあ、逆もまた然りだけど。
愛嬌のあるアンデッド達である。
上位アンデッドであるエルダー二体の護衛。サルタナの身辺に心配はない。
「よし! ベルを信じて俺たちは前へと進もう!」
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